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2022/07/21

爆弾/呉勝浩 サスペンス小説の感想

◆読んだ本◆
・書名:爆弾
・著者:呉勝浩
・初版出版社:講談社
・初版発行日:2022/4/20


◆おすすめ度◆
・ハラハラサスペンス小説&びっくりミステリー小説度:★★
・取調室を舞台にした法廷劇みたいな度:★★
・ねちっこい会話と描写度:★★★★★


◆感想◆
些細な事件で連行された、とぼけた中年男・スズキタゴサク。刑事の追求をのらりくらりとはぐらかすなか、「十時に秋葉原で爆発がある」と予言するが…

はじめは
ちょっと展開が遅いよなぁと思っていたが
中盤で
スズキと刑事のうんざりするほどのねちっこいやりとりは特筆モノかもしれないと思い直し
終盤では
サスペンス小説だと思っていたら、ちゃんとしたミステリー小説でもあったと思い知らされ
ラストでは
スズキをはじめ、登場人物のキャラクターが反転するという技が爆発!


◆関連記事◆
【書評】『爆弾』呉勝浩著 テロ予言する男の心理戦 - 産経ニュース

2022/06/27

任侠楽団/今野敏 ユーモア任侠小説の感想

◆読んだ本◆
・書名:任侠楽団
・著者:今野敏
・初版出版社:中央公論新社
・初版発行日:2022/6/21


◆おすすめ度◆
・ユーモア任侠小説度:★★★★
・ベテラン作家の安定感度:★★★
・個性的なキャラクター度:★★★


◆感想◆
任侠シリーズの最新作は、交響楽団が舞台。楽団での内紛解決に、阿岐本親分が乗り出すが…

新作が出版されるのを楽しみにしている任侠シリーズ。安定の面白さです。
わかっちゃいるけど面白いのは、多彩なベテラン作家ならではのテクニックですね。

阿岐本組の若いメンバーの登場は少なめですが、相変わらず心配性の代貸・日村や、貫禄の阿岐本親分が、ギャップ萌のいい味出してます。
ミステリー仕立ての展開で、警視庁捜査一課の碓氷弘一が登場するという、今野敏ファンには嬉しいサービス付きです。

ユニークな任侠物では、今野敏の任侠シリーズは外せませんが、福澤徹三の侠飯シリーズも外せません。もうすぐ『侠飯8』が出版されるようで、こちらも楽しみです。


2022/06/21

競争の番人/新川帆立 お仕事小説の感想

◆読んだ本◆
・書名:競争の番人
・著者:新川帆立
・初版出版社:講談社
・初版発行日:2022/5/11


◆おすすめ度◆
・女性の女性による女性のためのお仕事小説度:★★★
・コメディだと思ったらやっぱりコメデでした度:★★★
・新人離れのリーダビリティ度:★★★


◆感想◆
公正取引委員会の審査官・白熊楓が、仕事や恋に悩み立ち向かうお仕事小説。

これは女性向けのお仕事小説ですね。
公正取引委員会という職場で、仕事や恋に悩む白熊楓が主人公。
自分が男のせいかうまく感情移入できませんでした。うーん、残念。

はじめは、中心となる登場人物が『白熊』に『小勝負』と、かなり奇抜な名前だったので「シリアスなお仕事小説ではなく、コメディなのかな」と。
公正取引委員会というお仕事も、さほどユニークな仕事には描写されていないし、シリアスな描写も控えめだし。
読み進むうち「川があれば溺れ、崖があれば落ちる」ヒロイン、でもちゃっかり何事もなかったように復活するスーパーぶりに、やっぱりコメディ小説なんだと思った次第です。

続編を期待させるラストまで、スラスラと一気に読ませるリーダビリティは新人離れしてます。


2022/06/19

のぞく図鑑 穴: 気になるコレクション/宮田珠己 図鑑の感想

◆読んだ本◆
・書名:のぞく図鑑 穴: 気になるコレクション
・著者:宮田珠己
・初版出版社:小学館
・初版発行日:2022/6/15


◆おすすめ度◆
・小学生向け図鑑度:★★★★
・とにかく『穴』度:★★★★
・巻末の問題は4問正解でした度:★★★


◆感想◆
世界中の『穴』を集めた図鑑。
洞窟や火山の穴や鉱山の穴、5円玉の穴やブラックホールや地下トンネルと、あらゆる穴の集大成。
著者らしいヘンテコな図鑑ですね。
漢字にはすべてルビがふってあって、小学生も楽しく読めそうです。

巻末には掲載されていた穴に関する『穴うめ問題』20問が。
どれだけちゃんと読んだか確かめられる仕組みになってます。
自分は正解が4問。
真面目な読者じゃなかったようで反省中です。

印象的だったのは、『穴が怖い! 穴が嫌い!』というコラム。
穴恐怖症や集合体恐怖症とならび「ダム穴恐怖症」の記述が。
はじめて「ダム穴」の写真を見たとき、得も言われぬ衝撃をうけて、なぜか写真や動画を見まくったことがあったのですが、自分は「ダム穴恐怖症」だったのですね。
怖いもの見たさで見まくっていたのだとガッテンしました。


◆関連記事◆
世界一有名なダム穴。米カリフォルニア州ベリエッサ湖のモンティセロダムの洪水吐。

2022/05/01

脱北航路/月村了衛 海洋冒険小説の感想

◆読んだ本◆
・書名:脱北航路
・著者:月村了衛
・初版出版社:幻冬舎
・初版発行日:2022/4/13


◆おすすめ度◆
・ハラハラドキドキ海洋冒険小説度:★★★★
・はじめから終わりまでクライマックス度:★★★★
・ジャック・ヒギンズの訃報が…度:★★★★


◆感想◆
北朝鮮で大規模な軍事演習が行なわれようとしているさなか、政治局の上佐が、一人の女性を秘密裏に施設から連れ出そうとしていた…

北朝鮮による拉致被害をモチーフに、潜水艦による「脱北」を描く海洋冒険小説。
のっけからハラハラドキドキの展開です。

潜水艦とその乗組員をメインにして、海洋での激しい戦闘シーンや乗組員たちが困難に立ち向かう姿。
拉致問題に対する乗組員や日本人関係者の忸怩たる想い。
友でありながら戦わなければならない男たちの葛藤。

そんな冒険小説の王道をいく著者らしい小説。

「脱出航路」へのオマージュともとれる本書を読んでいる時に、ジャック・ヒギンズの訃報が。
いろんな思いががどこかでつながっているんでしょうか。


◆関連記事◆
拉致への悲しみと怒り 作家・月村了衛さん著『脱北航路』/産経新聞

2022/04/18

ビブリア古書堂の事件手帖III ~扉子と虚ろな夢~/三上延 ミステリー小説の感想

◆読んだ本◆
・書名:ビブリア古書堂の事件手帖III ~扉子と虚ろな夢~
・著者:三上延
・初版出版社:KADOKAWA
・初版発行日:2022/3/25


◆おすすめ度◆
・古書にまつわるミステリー小説度:★★★
・謎にグイグイ迫る扉子度:★★★
・篠川智恵子、怖いですねえ度:★★★★


◆感想◆
古書店の跡取り息子の死により遺された約千冊の蔵書。その古書に隠された謎をめぐって、篠川扉子がいよいよ本領発揮か!?

ビブリア古書堂の事件手帖の新シリーズ、本格稼働って感じです。扉子も謎にグイグイ迫ってます。

取り上げられているおもな古書は
映画パンフレット『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』
樋口一葉『通俗書簡文』
夢野久作『ドグラ・マグラ』

雑誌の書評を読むより、本書で紹介されている本を読みたくなるという、このシリーズのユニークなところも健在。
山田風太郎『人間臨終図巻』がめちゃくちゃ読みたくなりました。

前シリーズの最後の方では篠川智恵子の印象も良さげだったのに、本書ではやっぱり腹黒い「本の魔女」みたいな雰囲気に。
不気味な存在感を放ってます。
怖いですねえ、恐ろしいですねえ。
いったい何を企んでいるのか、今後明らかになってきそうです。


2022/04/10

香君/上橋菜穂子 ファンタジー小説の感想

◆読んだ本◆
・書名:香君 上 西から来た少女
   :香君 下 遥かな道
・著者:上橋菜穂子
・初版出版社:文藝春秋
・初版発行日:上 2022/3/24 下 2022/3/24


◆おすすめ度◆
・一気読みのファンタジー小説度:★★★★★
・現代に通じる社会の仕組み度:★★★★
・特異な能力を持つ少女の苦悩と決断度:★★★★
・学校で教わるより解る生物多様性の重要さ度:★★★★★


◆感想◆
類まれな嗅覚を持つ少女・アイシャ。植物や動物がどんな〈香りの声〉を発しているのか、声を聴くように香りを聴くことができた。その特異な能力で、奇跡の穀物〈オアレ稲〉の危うさに気づくのだが…

上橋菜穂子のファンタジー小説、面白いですね。
ハズレ無しです。
読み始めたらやめられないです。

『香君』の基本設定は、
遥か昔、〈神郷〉から降臨した初代〈香君〉が携えてきたとされる奇跡の稲〈オアレ稲〉。痩せた土地でも育ち病害虫に強いことから、人々を飢餓から救い、富をもたらした。さらに〈オアレ稲〉は、巨大なウマール帝国を統治する手段にもなっていた。

〈香君〉という神格化された存在や、〈オアレ稲〉という手段によって近隣の国々を配下に従え、巨大な帝国にのし上がったウマール帝国。
この〈香君〉と〈オアレ稲〉が物語のキモですね。〈香君〉と〈オアレ稲〉をめぐって、物語が進みます。
ファンタジーらしい設定でありながら、現代社会に通じるところがあるのが、著者ならではです。

また、登場人物たちもファンタジーでありながら現実味のある存在に。
主人公のアイシャこそ特異な能力の保持者ですが、他の登場人物はいわば普通の人間。魔法とかは使いません。

それにしてもアイシャがしっかり者です。
次々と直面する危機や出自に迫る謎。
特異な能力による苦悩や孤独感。
様々な出来事に翻弄されますが、彼女はめげません。
やがて〈香君〉と密接に関わる存在になるのですが、その時のアイシャの決断が光ってます。

また、視点を代えれば主役になれるだろう脇役たちも素晴らしい。
登場人物たちが活きてますね。

神格化された〈香君〉の運命は?
〈オアレ稲〉の危機はどうなる?
ウマール帝国は存続するのか?滅亡するのか!現状維持か!?
カシュガとアイシャの関係は?
行方不明のお父さんは?
ユギルはなんだかいいヤツみたいだし…

あっという間に読み終わって、気づいてみればいろんなことがまあるく収まって。
リアルなファンタジー世界を堪能できる小説です。
さらに、学校で教わるより生物多様性の重要さが解ります。



◆関連記事◆
上橋菜穂子さんインタビュー #1/文春オンライン

2022/03/12

寝る脳は風邪をひかない/池谷裕二 科学読み物の感想

◆読んだ本◆
・書名:寝る脳は風邪をひかない
・著者:池谷裕二
・初版出版社:扶桑社
・初版発行日:2022/1/30


◆おすすめ度◆
・目からウロコの科学読み物度:★★★
・おもしろ科学エッセイ度:★★★


◆感想◆
『週刊エコノミスト』に14年間連載していたエッセイから、「脳」「遺伝子」「AI」などのテーマごとに抜粋した科学エッセイ集。

仕事に役立つ「ツァイガルニク効果」とか、
DNA合成装置を用いて情報を記録できそうだとか、
グーグルの量子コンピュータを遥かに超える新型量子コンピュータを中国が開発したとか、
バイオプリンティングへの用法が期待される3Dプリンター技術とか、
認知症治療薬を使ったアカデミックドーピングとか。

各テーマは見開き2ページでおさまるように書かれているため、やや消化不良なところも。
興味のあるテーマはスマホでググりながら読むと、より深く知ることができますね。

本書のような最先端科学に関する本を読む動機は、SF小説の理解を深めるため(より面白く読むため)だと最近気がつきました。
人間も犬のようにスーツケースに鼻を近づけてクンクン嗅げば違法ドラッグを嗅ぎ出すことができる、なんていう目鱗知識は、ミステリー小説のネタにもなりそうです。