白銀の墟 玄の月 ファンタジー小説の感想
◆読んだ本◆
・書名:白銀の墟 玄の月
・著者:小野不由美
・初版出版社:新潮社
・初版発行日:第一巻,第二巻2019/10/12 第三巻,第四巻2019/11/9
◆おすすめ度◆
・緻密で奥深い異世界ファンタジー度:★★★★★
・苦難に次ぐ苦難と泰麒の覚悟度:★★★★★
・三國志風の戦闘と熱い男気度:★★★★★
・読後はしばらく魂魄を抜かれた状態に度:★★★★★
◆感想◆
【ネタバレの感想です】
生きているうちには読めないんじゃないかと思っていた『十二国記』の続編。
もう読めただけで★★★★★です。
おまけに全4巻という長編、嬉しいです。
物語は、これでもかというくらいに登場人物たちに苦難と絶望を味合わせる展開。
いったい驍宗はどうなってしまったのか?
阿選は何を考えているのか?
宮中に渦巻く策略の行方は?
鳩の鳴き声な何を意味するのか?
園糸と栗は項梁に再会できるのか?
等など、多くの謎をはらんだまま、驍宗を探す旅が描かれる。
それにしても辛いシーンが続く。
『月の影 影の海』も辛い展開が続いたが、それでも後半には次第に景色が変わってきた。
ところが本書はなかなか明るい兆しが見えない。
なぜか?
『白銀の墟 玄の月』ひいては『魔性の子』や『風の海 迷宮の岸』は、泰麒が黒麒として再生する物語だったのだ。
胎果として生まれ蓬山で育てられるが、「麒麟の出来そこない」になっていたのも、
角を斬られ、麒麟としての能力が失われたのも、
阿選が謀反を起こし、結果多くの人たちが戦闘で命を落としたのも、
西王母が蓬莱に流された泰麒の穢れを清めただけなのも、
全てはラストの泰麒の行動に集約されている。
それは泰麒の再生。
天真爛漫な幼かった過去が嘘のような、まるで麒麟とは思えない行動をする現在の泰麒。
それは多くの犠牲の上に今の自分はいるんだという、泰麒の覚悟が行動に出たもの。
そして黒麒ゆえに、その再生には途方も無い負荷を必要とする。
泰麒はのしかかる苦難を乗り越え、本来の黒麒に再生する。
そこに、最後の最後まで登場人物たちに苦難と絶望を与え続け、溜め込んだストレスをラストに発散させて大きなカタルシスを感じさせるという、小説の面白さを盛り込んだ。
『白銀の墟 玄の月』はそういう物語だったんだと思う。
そんなことを考えながら、驍宗が泰麒にかけた言葉「よくやった。──もう良い」を読むと、万感の思いが。
泰麒はこの言葉で、自分が黒麒に再生したことを、そして王のためにある自分を再認識したんだなあ。
2020年に刊行される「オリジナル短編集」も楽しみだが、長編も読んでみたいと思うのは欲張りすぎ?
「オリジナル短編集」が最後になるにしても、そうは言わないでいてほしい。
「どうぞ御自ら雲を呼び寄せないでくださいまし──」って感じです。
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小野不由美「十二国記」新潮社公式サイト
