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2021/05/04

白鳥とコウモリ/東野圭吾 ミステリー小説の感想

◆読んだ本◆
・書名:白鳥とコウモリ
・著者:東野圭吾
・初版出版社:幻冬舎
・初版発行日:2021/4/7


◆おすすめ度◆
・一気読みのミステリー小説度:★★★★
・ベテランのテクニック度:★★★★
・謎は最大の味付け度:★★★★


◆感想◆
弁護士が殺害され、一人の男が犯行を自供する。さらに過去の事件まで自供し、事件は解決したかに思えたが…

書けば売れる著者のミステリー小説。
その読者を飽きさせない文章テクニックはさすがです。

被害者家族と加害者家族の苦悩、登場人物の隠された想い、切ない男女の関係なんかも盛り込んで、二転三転する展開に。
最後にはひねりも加えて着地。

新人作家の小説だったら中編でも飽きそうな内容を、様々な味付けで長編小説に仕上げてなお面白い。
すごいですね。
特に「謎」というのは、読者を物語の世界に引き込む最大の味付けだと、改めて思いました。


2021/04/26

神様の御用人9,10/浅葉なつ ライトノベルの感想

◆読んだ本◆
・書名:神様の御用人9,10
・著者:浅葉なつ
・初版出版社:KADOKAWA
・初版発行日:9巻 2020/12/25 10巻 2021/3/25


◆おすすめ度◆
・ユニークなライトノベル度:★★★★★
・人間臭い神様たち度:★★★★★
・区切りにふさわしいオール神様な展開度:★★★★
・始まりも終わりも「抹茶パフェ」度:★★★★


◆感想◆
日本各地で頻発する地震。「気になることがある」と言い残して黄金は行方不明になってしまうが…

『神様の御用人』シリーズに区切りをつけるのにふさわしい、オールスターというかオール神様な展開。
なかなか感動的で大胆な物語に。

一番の読みどころは、田村麻呂と阿弖流為が登場するシーンでした。
田村麻呂の忸怩たる思いがひしひしと伝わってきて、高橋克彦の『火怨』を読んだときの感動が再び!
というか『火怨』の外伝みたいな読み応えも。
『火怨』を再読したくなりました。

「あとがき」のあとの「後々」を読み逃さないよう注意!




2021/04/14

魂手形 三島屋変調百物語七之続/宮部みゆき 怪談小説の感想

◆読んだ本◆
・書名:魂手形 三島屋変調百物語七之続
・著者:宮部みゆき
・初版出版社:KADOKAWA
・初版発行日:2021/3/26


◆おすすめ度◆
・江戸時代怪談話度:★★★★
・飽きさせない百物語度:★★★★
・シリーズに不穏な気配も度:★★★★


◆感想◆
「三島屋」シリーズの第7巻。
衝撃的な『火焔太鼓』、母の想いが重い『一途の念』、なさぬ仲ほど愛が深い『魂手形』の中編3編。

いまさら面白さを言う必要もない三島屋変調百物語。
自分の気持が沈んでいようがアゲアゲだろうが、読み始めればすぐさま物語の世界に没入する小説。
宮部みゆきってすごいですね。

ラストに登場してきた「商人」が、シリーズを貫くラスボス的な恐怖のキャラクターだったりして、シリーズとしての展開も見逃せない感じです。


◆関連記事◆
三島屋変調百物語/ウィキペディア
稀代のストーリーテラー、宮部みゆきの真骨頂! 『魂手形 三島屋変調百物語七之続』刊行記念インタビュー/Book Bang -ブックバン-

2021/04/01

灰の劇場/恩田陸 ミステリー小説の感想

◆読んだ本◆
・書名:灰の劇場
・著者:恩田陸
・初版出版社:河出書房新社
・初版発行日:2021/2/16


◆おすすめ度◆
・過去と現在と未来、現実と虚構が混在度:★★★
・著者の小説作法が垣間見える度:★★★
・人生に絶望を感じる瞬間度:★★★★


◆感想◆
小説家になりたての若い著者が目にした、二人の女性が飛び降り自殺したという新聞記事。いったい彼女たちに何があったのか…

二人の女性が自殺したことに関するエッセイ風な過去と、それをふまえた小説を書いている現在と、さらに小説が舞台化される様子を描く未来。
過去と現在と未来、そして現実と虚構が混在するという摩訶不思議な小説。

日常生活のなにげない出来事に、ふと絶望を感じるような年齢。著者が彼女たちの死を理解するには、それなりの経験と年齢が必要だった。
その時間的な垣根を超えるために、過去と現在と未来、虚構と現実が混在するような構成が必要だった。
ということなのかなあ。

著者と同年齢の読者向けの、人生の儚さを感じさせる物語。
天ぷら油の凝固剤「固めるテンプル」がなかったことに、人生の絶望を感じるという表現が秀逸。


◆関連記事◆
恩田陸さん「灰の劇場」インタビュー 虚と実の間、揺らぎながら、事実もとにフィクションを自問自答/好書好日
事実とウソが響き合う著者初の“モデル小説“/Book Bang -ブックバン-

2021/01/23

ボニン浄土/宇佐美まこと 漂流記+αの感想

◆読んだ本◆
・書名:ボニン浄土
・著者:宇佐美まこと
・初版出版社:小学館
・初版発行日:2020/6/16


◆おすすめ度◆
・江戸時代漂流記度:★★★★
・過去から受け継がれる念い度:★★★★
・全て決着させる几帳面な著者度:★★★


◆感想◆
1840年、気仙沼から出航した観音丸は大嵐に遭遇し漂流してしまう。五十日以上漂流し、水主たちは瀕死の状態になるが…

前半は、漂流の末にボニン・アイランド(現在の小笠原諸島)にたどり着いた水主たちの物語。
後半は、それから180年後の現在、ボニン・アイランドでの出来事が原因で起きる物語が、ミステリータッチでドラマチックに描かれます。

なんと言っても、前半の漂流記が面白い。
漂着した日本人は、ボニン・アイランドでどう過ごすのか。また、ボニン・アイランドに住んでいた人々は、どのような出自や文化をもっているのか。
これだけで一つの物語にしてもいい感じの漂流記です。

ところが著者は、それだけじゃ満足しないよう。
音楽一家に生まれた、チェロの演奏に苦悩する中学生や、自分のルーツを探そうとする根無し草の中年男性などを登場させ、さらにドラマチックな物語に。
おまけに江戸時代から戦中、戦後の小笠原諸島の歴史までわかっちゃうというおまけ付き。
小笠原の歴史が脈々と現在まで続いているように、ボニン・アイランドで生活していた人たちの「念い」が、今生きている人にもつながっているという。

小笠原に行きたくなること請け合いです。


2021/01/05

コロナと潜水服/奥田英朗 ファンタジー小説の感想

◆読んだ本◆
・書名:コロナと潜水服
・著者:奥田英朗
・初版出版社:光文社
・初版発行日:2020/12/30


◆おすすめ度◆
・心温まるファンタジー短編集度:★★★★
・人生は悲喜こもごも度:★★★★


◆感想◆
ファンタジックな設定の心温まる短編集。

平易なのに、心に染み入る文章。
くすっと笑わせて。ほろっと泣かせたり。
もうベテランのテクニックに弄ばれるまま、されるがまま、読者のハートは著者の思いのままです。

こういう小説を書かせたら、著者はピカイチですね。
人生苦しいこともあるけれど、楽しいこともあるんだって。本人次第なんですね。
現在進行中のコロナ禍を、こんなふうに料理してみせる手腕も素晴らしい。


2020/12/20

南アルプス山岳救助隊K-9 風の渓/樋口明雄 山岳小説の感想

◆読んだ本◆
・書名:南アルプス山岳救助隊K-9 風の渓
・著者:樋口明雄
・初版出版社:徳間書店
・初版発行日:2020/11/6


◆おすすめ度◆
・ハラハラ・ドキドキ山岳小説度:★★★★
・心を閉ざした少年の再生度:★★★★★
・ちょっと出来すぎだけど山が舞台だと許せます度:★★★★


◆感想◆
山崎美和子(42)と中江悠人(13)の救助要請が南アルプス山岳救助隊に入る。二人は救助されるが、軽症だった悠人は隊員の呼びかけにも答えず、ふて腐れたような顔でそっぽを向いているのだった…

家庭の事情で引きこもり、心を閉ざしてしまった中江悠人が、北岳で自分を取り戻していくという『初秋』をオマージュしたストーリーに、サイバー犯罪者などがからむアクションを加えた山岳小説。

久々に北岳が舞台です。やっぱり山が舞台だといいですね。
星野夏美とメイ、神埼静奈とバロンの活躍も読めます。神埼静奈、相変わらずかっこいいですね。
重要な舞台となる両俣小屋の管理人も、実在の人物を彷彿とさせる感じです(会ったことないですし、北岳に行ったこともないんですけどけど、多分ステキな方なんだろうと思わせる描写です)

心を閉ざした少年・悠人が次第に表情を取り戻していく姿と、サーバー犯罪者で引き込もりの和馬が次第に狂気へと向かう様子が好対照に描写されてます。
でも悠人が自分を取り戻していくのも、和馬がその落とし前をつけさせられるのも、いわば北岳の自然や動物たちの力。
なんか、南アルプスの麓に暮らすという著者が、北岳の自然を愛し畏怖する様子が伺えます。

ラストはちょっと出来すぎ(やりすぎ?)のようにも思えますが、山が舞台だと許せるから不思議です。



◆関連記事◆
『41人の嵐』(著:桂木優)を読む/マーちゃんの数独日記

2020/12/14

ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人/東野圭吾 ミステリー小説の感想

◆読んだ本◆
・書名:ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人
・著者:東野圭吾
・初版出版社:光文社
・初版発行日:2020/11/30


◆おすすめ度◆
・ユーモアミステリー度:★★★
・ユニークな探偵役度:★★★
・『幻脳ラビリンス』を読んでみたい度:★★★★


◆感想◆
警察からの電話で、一人暮らしの父の死を知らされた神尾真世。慌てて故郷の町に帰り、警察署へ行くが…

田舎町で起きた殺人事件。
なくなった父の弟・神尾武史と、娘の神尾真世が、事件の真相を探ろうというミステリー小説。
いったい誰が犯人なのか。
真世の同級生たちの中に真犯人がいるのか。
元マジシャンの神尾武史の推理と破天荒な行動が真相を暴く?!
という感じです。

父親がなくなった割には悲壮感のない娘の神尾真世と、悲壮感などどこ吹く風の神尾武史。
これはシリアスなミステリーというより、ユーモアミステリーといったほうがいいかもしれません。ささっと読めるミステリー小説です。
もうちょっと笑いを誘うようなシーンがあれば、東川篤哉の小説と勘違いしそう。

ユニークなのは、探偵役の元マジシャン・神尾武史。
様々な奇策を弄して、警察に先んじて犯人を探し出そうとする。
新しいシリーズものにしようとしているのかもしれません。
その時はもっとユーモアを加えてほしい感じです。

作中で語れる『幻脳ラビリンス』という漫画。これ読んでみたいですね。


◆関連記事◆
東野圭吾『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』特設サイト | 光文社