だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 最近は新旧歴史時代小説やエンターテイメント、ライトノベルにも手を伸ばして節操のない状態に。趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

悪童日記/アゴタ・クリストフ 寓話の感想

◆読んだ本◆
・書名:悪童日記
・著者:アゴタ・クリストフ
・初版出版社:早川書房
・初版発行日:1991/01

◆おすすめ度◆
・子供の日記形式の寓話度:★★★
・過酷な状況で悪賢く生き残る子供達度:★★★★
・シリアスなテーマをエンタメに度:★★★

◆感想◆
戦争から逃れるため、おばあちゃんの家に疎開した双子の兄弟。「魔女」と呼ばれるおばあちゃんのいじめや、戦争による荒んだ生活環境に対応するため、持ち前の悪賢さと勤勉さでたくましく生き抜こうとするが…

双子の日記の体裁で語られる一風変わった物語。
戦争を背景に語られる物語りが、とっても野蛮だ。
双子が痛みや寒さに耐える訓練をしたり、物乞いをしている近所の娘が司祭と通じていたり、またそれをネタに双子が司祭をゆすったり。
居酒屋をめぐり、練習した手品や軽業の芸を披露して稼いだり、青年将校と淫らな関係を持ったり。
子供なのにその悪賢さは天下一。
神をも恐れぬ双子は、次第にすることが大胆に。

子供が書いたという体裁で、さらに淡々とした文章で書かれているせいか、読んだ印象はあっけらかんとしている。
けど双子のしている内容はとても酷い。双子は文字どおり「悪童」な展開。
だからといってそれを批評していない著者のスタンスが、ちょっとよくわからないところでもある。
娯楽性重視? 批評は読者におまかせ?
訳者の解説には「サルトル流の実存主義的人間観に対応しているように見える」とあるけど。(文系の人って深堀りが好きね)

いったいこれから二人はどうなるのか!というところで唐突におしまい。
続編が早く読みたくなる終わり方です。

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よもつひらさか/今邑彩 ホラー小説の感想

◆読んだ本◆
・書名:よもつひらさか
・著者:今邑彩
・初版出版社:集英社
・初版発行日:1999/05

◆おすすめ度◆
・正統派ホラー短編集度:★★★★
・握り寿司だと思ったら寿司スーツだった度:★★★
・美味しそうな中トロが予想通り美味しかった度:★★★
・寿司12貫、軽く平らげちゃった度:★★★★

◆感想◆
こすっからいホラー小説ファンには物足りないかもしれないが、純朴な心を持つ読者にはギョッとしてヒヤッとする正統派ホラー短編集。

少ない登場人物の短編小説で、意外性を持たせるという見事さ。
(握り寿司だと思って食べたら寿司スーツだった、みたいな)

逆に「まさかこんな結末では!?」という読者の読みを上書きするようなオチのカタルシス。
(この中トロは美味しそうだと思って食べたら予想通り美味しかった、みたいな)

色んなパターンのホラー小説で、最後まで飽きさせません。
(寿司12貫なんて食べられないと思ったけど軽く平らげちゃった、みたいな)

ホラーにミステリーやファンタジーの要素もまぜて、お腹いっぱい満足できる短編集。

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南極点のピアピア動画/野尻抱介 SF小説の感想

◆読んだ本◆
・書名:南極点のピアピア動画
・著者:野尻抱介
・初版出版社:早川書房
・初版発行日:2012/2/23

◆おすすめ度◆
・ユニークなSF小説度:★★★★
・胸熱なファンタジー度:★★★★
・ボーカロイドが宇宙を繋ぐ度:★★★★★

◆感想◆
はじめはニコニコ動画(ピアピア動画)や初音ミク(小隅レイ)といった流行りのアイテムをうまく利用したオタクむけのファンタジーかと思ったら!

「南極点のピアピア動画」を読んで、これはなかなかの胸熱な恋愛小説でもあるなあ、なんて思ったら!

「コンビニエンスなピアピア動画」では、ちょっとびっくりなスケールのSFに話は膨らんできて!

「歌う潜水艦とピアピア動画」ではファーストコンタクトもののSF小説に発展!

さらに「星間文明とピアピア動画」に至っては、地球文明が小隅レイによって宇宙に開かれていくという…

各短編が微妙に繋がっている連作形式もうまいし、コンビニに毎日通ってニコニコ動画や初音ミクに親しみのあるひとなら間違いなく胸熱なSF。
そうじゃない自分でも楽しめる異色でありながら真っ当なSF小説です。
面白いです。
書名で読むのを敬遠してました。
食わず嫌いですいません。

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神様の裏の顔/藤崎翔 ミステリー小説の感想

◆読んだ本◆
・書名:神様の裏の顔
・著者:藤崎翔
・初版出版社:KADOKAWA/角川書店
・初版発行日:2014/9/26

◆おすすめ度◆
・軽妙なミステリー小説度:★★★
・色んな人の裏の裏の顔度:★★★

◆感想◆
無私の精神で理想の教育を追い求めた、神様のような男・坪井誠造。彼の通夜には多くの参列者が訪れ涙を流したが…

神様のような先生・坪井誠造の通夜で語られる坪井の過去。
一見聖人君子に思えたのに、些細なことをきっかけに、その聖人君子ぶりに疑いが…
というミステリー小説。
一人で悶々と考え込んじゃうと、白いものも黒く見えるようになっちゃうんだなぁ。みんなで話し合うと真実が見えてくるんだ、なんて思っていると「うっちゃり」をかまされる。

元お笑い芸人という珍しい経歴を生かした軽妙な語り口が印象的。
サラサラーっと読める割には本格の要素も含まれているし、登場人物の描き分けも上手。
ガチガチの本格を読むのが面倒な気分の時に、ちょうどいい軽さのミステリーです。

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ヘブンメイカー/恒川光太郎 ファンタジーの感想

◆読んだ本◆
・書名:ヘブンメイカー
・著者:恒川光太郎
・初版出版社:KADOKAWA/角川書店
・初版発行日:2015/12/2

◆おすすめ度◆
・大人の異世界ファンタジー度:★★★★
・夢の叶う/夢を叶える街創り度:★★★
・天国と地獄/理想と現実/愛と憎しみ度:★★★
・スタープレイヤー3を期待度:★★★★

◆感想◆
スタープレイヤーの続編。

愛する女性を亡くした青年が別天地で彼女を復活させる物語と、別天地に召喚された人々が、あてがわれた町でサバイバル生活を送る物語が交互に展開。

死んだ女性を生き返らせるという青年の思いがひしひしと伝わってくるが、果たしてそのゆくへは!というのが読みどころ。
また、二つの物語がどのように交錯していくのかも興味深い。

街の名前が「ヘブン」であることとか、前作のいきさつとかでおおよその全体像はわかるけど、意外な展開も用意されていて、前作とはちょっと違った雰囲気の異世界ファンタジーに。
結局地に足のついた生き方が一番なのかな、ズルしてもあんまりいいことはないのかな?なんて思いながら、著者の創りあげた異世界にどっぷりはまれる。
スタープレイヤー3を期待しちゃいます。

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人間はどこまで耐えられるのか/フランセス・アッシュクロフト ノンフィクションの感想

◆読んだ本◆
・書名:人間はどこまで耐えられるのか
・著者:フランセス・アッシュクロフト
・初版出版社:河出書房新社
・初版発行日:2002/05

◆おすすめ度◆
・ベーシックな科学読み物度:★★★
・ナショナルジオグラフィックの活字版度:★★
・「へー」な豆知識も随所に度:★★★

◆感想◆
人間の限界はどこら辺なのかを解き明かした科学読み物。
高高度や深海などの過酷な環境に、人間はどのように関わってきたのか。その歴史や背景をふまえてアカデミックに解説したノンフィクション。

突飛で奇をてらったような内容かと思ったら、しごく真っ当な科学読み物。
ナショナルジオグラフィックを活字で表現したような雰囲気です。
科学大好きな少年少女向けか。あるいは本書を子供に読ませて、理系の適性を見るのにも使えそう。
もちろん大人でも楽しめるベーシックな内容。

寒冷地の人々は体の表面積を小さくするため、ずんぐりして手足が短く進化し、逆に赤道直下の高温で乾燥した地域では、背が高くて細く手足が長く進化した、なんていう「へー」な豆知識も随所に。
一番「へー」と思ったのは、気温が低くなると痛みを伝達する機能が鈍くなるのを利用し、ナポレオン軍の兵士たちが馬を生きたまま食糧貯蔵庫にするというもの。
極寒の戦地では、馬の脚から肉を切り取っても痛みを感じないし、血は瞬時に凍りつく。屠殺してしまったら、肉が鉄のように凍ってしまうのだと。
へー!なるほど!

目次
どのくらい高く登れるか
どのくらい深く潜れるか
どのくらいの暑さに耐えられるのか
どのくらいの寒さに耐えられるのか
どのくらい速く走れるのか
宇宙では生きていけるのか
生命はどこまで耐えられるのか

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スタープレイヤー/恒川光太郎 ファンタジーの感想

◆読んだ本◆
・書名:スタープレイヤー
・著者:恒川光太郎
・初版出版社:角川書店
・初版発行日:2014/8/30

◆おすすめ度◆
・大人の異世界ファンタジー度:★★★★
・10の願いを何に使う?度:★★★
・重たいテーマよりエンタメ重視度:★★★

◆感想◆
路上のくじ引きで一等を引き当てた斉藤夕月は、気がつくと見知らぬ草原に立っていた。一等の景品は、このなにもない異世界で、10の願いを叶える力があるスタープレイヤーに選ばれたことだった…

ライトノベルでありがちの異世界ファンタジー。
主人夕月の公不幸な事件を背景にしたダークな展開か、と思ったが、異世界での街づくり、大げさに言えば建国みたいな内容に進展。

スタープレイヤーになるとそれこそなんでもできちゃうわけで、それに伴う倫理的な問題なんかもちょっと触れられるけど、主軸はエンターテイメント。
細かい理屈や重たいテーマより面白さ重視です。
ベテラン作家の異世界ファンタジーはライトノベルの異世界ファンタジーと一味違うし、文章も読みやすいし、無理やりなラブコメシーンとかがなくっていい。

続編も読んでみたくなります。

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午後からはワニ日和/似鳥鶏 ミステリー小説の感想

◆読んだ本◆
・書名:午後からはワニ日和
・著者:似鳥鶏
・初版出版社:文藝春秋
・初版発行日:2012/3/9

◆おすすめ度◆
・ユーモアミステリー小説度:★★
・動物園の舞台裏がよく分かる度:★★★
・丁寧で細かい描写度:★★

◆感想◆
動物園からイリエワニが盗まれる。誰が何のためにワニを盗んだのか調べるうちに新たな事件が!
という動物園を舞台にしたユニークなユーモアミステリー小説。

やたらと動物に舐められるたちの桃本、なぜか手慰みに折り紙を折る動物園のアイドル七森さん、ハイミスであることをかなり根深く気にしているツンデレ獣医の鴇先生と、登場人物がユニークでコミカル。
コメディタッチのテレビドラマにぴったりです。

状況や心理描写が細かくて、もしかしたら著者は女性か?と思ったら、背の高い男性のよう。
本書を気に入った動物好きでミステリー好きの方には、続編もあります。

楓ヶ丘動物園シリーズ
 午後からはワニ日和
 ダチョウは軽車両に該当します
 迷いアルパカ拾いました
 モモンガの件はおまかせを

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【3作品】似鳥鶏さんの動物園ミステリーが超面白い!/300books

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