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2019/09/14

楽園の真下/荻原浩 パニック小説の感想

◆読んだ本◆
・書名:楽園の真下
・著者:荻原浩
・初版出版社:文藝春秋
・初版発行日:2019/9/11


◆おすすめ度◆
・カマキリパニック小説度:★★★★★
・近未来孤島サバイバル小説度:★★★★★
・スリルとサスペンスとグロ小説度:★★★★★


◆感想◆
日本でいちばん天国に近い島といわれる「志手島」。そこで17センチという大きなカマキリが発見される。フリーライターの藤間は、取材のため志手島を訪れるが…

島についた藤間は、巨大カマキリについて調べるとともに、最近自殺者が急増している理由も調べ始める。いったいこの島で何が起きようとしているのか!

「オイアウエ漂流記」みたいな、のほほんとした”ちょっとびっくり昆虫騒動記”のようなユーモア小説を予想していたが、とんでもなく予想ハズレ。
ユーモア小説じゃなかったという意外性と、いったいどうなるんだ?、という予断を許さない展開で、物語にぐいぐい引き込まれる。

これは近年まれに見るパニックものの傑作では!
人食いバクテリアとか猛獣とか未知の生物とかならよくあるパターンだけど、カマキリというのが度肝を抜いていて逆に怖い。
虫嫌いな人には鳥肌モノの描写が随所に。
サバイバルなアクションシーンもあれば、昆虫に関するアカデミックな薀蓄もあり、さらには男女のほのかな恋心までも盛り込んじゃうというエンタメぶりも。
映像化しても面白そう。(少し間違えば陳腐になりそうだけど)


でも主役のカマキリが強烈すぎる。
ちょっとカマキリが嫌いになった。
ハリガネムシはもっと嫌いになった。
夢に出てきそう。


2019/09/03

欺す衆生/月村了衛 犯罪小説の感想

◆読んだ本◆
・書名:欺す衆生
・著者:月村了衛
・初版出版社:新潮社
・初版発行日:2019/8/27


◆おすすめ度◆
・詐欺師が主役の犯罪小説度:★★★★
・巨大詐欺グループの残党たちのその後度:★★★★
・コン・ゲーム小説というよりシリアスなクライムノベル度:★★★★

◆感想◆
戦後最大の詐欺事件といわれた横田商事事件。横田商事の営業マンだった隠岐は、横田商事の社員だったことを隠しながら、小さな会社で営業の仕事をしていた。そこにかつての同僚が現れて…

巨大詐欺集団の残党たちのその後を描いた犯罪小説。
「豊田商事事件」の豊田商事会長が殺害されるショッキングなシーンをなぞるような出だしで、つかみはOK。
「主人公の隠岐は、いずれこうなっちゃうんだろうなぁ」なんていうこっちの予想とは裏腹に、話はどんどん大きくなって、詐欺の手口も多彩に。
シリアスな展開もいいし、隠岐の生き様も描ききっている感じ。
コン・ゲーム小説というよりシリアスなクライムノベル。
戦後のどさくさと実在の人物や事件をモデルにすれば「フィクサーはこうやってできるんだ」という物語にもなったかも。


2019/08/26

罪の轍/奥田英朗 ミステリー小説の感想

◆読んだ本◆
・書名:罪の轍
・著者:奥田英朗
・初版出版社:新潮社
・初版発行日:2019/8/20


◆おすすめ度◆
・社会派ミステリー小説度:★★★★
・犯人と刑事たちのドラマ度:★★★★
・不幸な生い立ちから生まれる歪んだ心度:★★★


◆感想◆
吉展ちゃん誘拐事件を題材にした犯罪小説。

淡々とした展開の中に、犯人や刑事たちの人物像を浮き上がらせた描写が特徴的。
謎解きや犯人当てといった面白さよりも、犯人や刑事たちに焦点を当てた社会派ミステリー。

東京オリンピックを目前にした1963年という時代背景の描写もいい。
著者は1959年生まれのようなので、当時をリアルに覚えているとは思えないものの、そこは小説家のテクニック。
この時代を生きてきた読者には、心に響くシーンが随所に。

結末はわかっているものの、読み進むうちに次第に盛り上がり、ラストはドキドキハラハラ。
吉展ちゃん誘拐事件を知らない方は、ウィキペディアなどで調べたりしないで読むのが吉。
事件を知っていても、物語に引き込まれるのは間違いなし。
リアルな事件を題材にしているだけに、フィクションと割り切って(エンターテイメントとして)楽しめないところが悲しい。


2019/08/05

営繕かるかや怪異譚 その弐/小野不由美 ホラー小説の感想

◆読んだ本◆
・書名:営繕かるかや怪異譚 その弐
・著者:小野不由美
・初版出版社:KADOKAWA
・初版発行日:2019/7/31


◆おすすめ度◆
・現代和風怪談話度:★★★★★
・正統派ホラー度:★★★★★
・体感温度が3度下がる度:★★★★★


◆感想◆
内容はほんのりしたりホッとしたり、ちょっと心が温まるオチなのに、読んでいるうちは背筋がゾクゾクしっぱなしの現代和風正統派ホラー。

暑い夏にはうってつけ。
恐怖で体感温度が3度下がります。

壁と柱の間にできた隙間が怖くて覗けません、
洗面所の鏡が怖くて見れません、
押し入れが怖くてあけられません、
夜、ベッドから降りられなくなります。

怖いのに切ない、恐ろしいのに優しい。
相反する気持ちを同時に味わえる、稀有な怪談話。
小野不由美の神業です。


◆関連記事◆
古い日本家屋にさまよい出る死者たち 小野不由美の怪談小説集「営繕かるかや怪異譚 その弐」/好書好日

2019/08/03

三体/劉慈欣 SF小説の感想

◆読んだ本◆
・書名:三体
・著者:劉慈欣
・初版出版社:早川書房
・初版発行日:2019/7/4


◆おすすめ度◆
・壮大なスケールのSF小説度:★★★★
・映画向きのエンターテイメント小説度:★★★★★
・「計算陣形」の発想に中国を感じる度:★★★★★
・続編「黒暗森林」が待ち遠しい度:★★★★


◆感想◆
数奇な運命に翻弄される中国人エリート科学者・葉文潔、謎の科学団体に巻き込まれていくナノテク素材の研究者・汪森。二人の間にはどんなつながりが? そしてVRゲーム「三体」のには何が隠されているのか!

中国で「三体」「黒暗森林」「死神永生」の三部作合わせて2100万部以上を売り上げ、ヒューゴー賞長篇部門に輝き、バラク・オバマ前大統領も読んだという、前評判が超盛り上がっているSF小説。

難解なハードSFだったり、妙に思索的だったりしたら面倒だな、
翻訳文は読みにくくないのかな、
登場人物が難しい漢字の名前ばかりで、訳わかんなくならないのかな、
そんなのは全部杞憂に終わりました。
物語は読みやすくエンターテイメント性の高い展開に。
もう少しハードSFしててもいいくらい。

期待が大きすぎたせいか、前評判ほどドキドキワクワクはしなかったけど(読む前に余計な情報は目にしないほうがいいね)、「計算陣形」とか「飛刃」は、中国らしさを感じるユニークさで、イメージすると思わず「おおおおっ」と声が出るほどの壮大さ。

三体人がとても人間的で笑っちゃうし、三体というVRゲームでのシーンがファンタジックなアンソロジーみたいで楽しいし、読みやすい翻訳も素晴らしい。

ジェームズ・キャメロンが大変興味があるといったのもうなずける、スケールの大きなエンタメ小説。
映画向きかも。



◆関連記事◆
【#三体ニュース】監修・立原透耶氏による解説を公開!/早川書房
【今週はこれを読め! SF編】何度も滅びて再興する三体世界の文明、それが地球にもたらすもの - 牧眞司/WEB本の雑誌
異例のヒット、中国SF「三体」 科学の未来信じる作者/朝日新聞デジタル

2019/07/22

HELLO WORLD/野崎まど ライトノベルの感想

◆読んだ本◆
・書名:HELLO WORLD
・著者:野崎まど
・初版出版社:集英社
・初版発行日:2019/6/21


◆おすすめ度◆
・ファンタジックなライトノベル度:★★★
・内気な少年の恋物語度:★★★
・アニメ映画のノベライゼーション風度:★★


◆感想◆
内気な男子高校生の堅書直美♂。図書館の帰りに三本足のカラスに誘われるようにして「未来の自分」と邂逅するが…

ファンタジックな恋愛小説。
リアルとサイバースペースの混交という、SF成分多めのライトノベルでもあります。
鬼才・野崎まどにしては、ちょっと落ち着いたお話し。

前半のは、清々しく高校生らしい青春小説な展開。
主人公の堅書直美♂と、ヒロインの一行瑠璃♀の恋模様が、微笑ましい感じ。
後半になると「未来の自分」が画策する想いが予期せぬ展開を招き、アクション多めの展開に。
堅書直美と一行瑠璃と「未来の自分」の行く末は!?

ラストはバッチリ基本通りに着地したかと思わせて、ひねりをくわえた「前方抱え込み宙返り 1/2ひねり」みたいな着地に。
「アニメ映画原作」と本の帯にあるけれど、アニメ映画のノベライゼーションといった趣もあり。
八咫烏、狐面、といった特徴的な登場人物が、いかにもアニメの登場人物らしくて、画像が目に浮かぶやら、ライトノベルすぎてちょっと困るやら。おじさんには手に余るところです。


2019/07/20

さよならの儀式/宮部みゆき SF小説の感想

◆読んだ本◆
・書名:さよならの儀式
・著者:宮部みゆき
・初版出版社:河出書房新社
・初版発行日:2019/7/10


◆おすすめ度◆
・SF? ホラー? ファンタジー?度:★★★
・不条理な運命や社会度:★★★
・「聖痕」が出色度:★★★★★


◆感想◆
SFのような、ホラーのような、ファンタジーのような短編小説。
今までの宮部みゆきとはちょっと違う雰囲気。
「世にも奇妙な物語」の原作にもなりようなテイストです。
その文章から、なんだか筒井康隆の小説を読んでいるような気分にもなります。

筒井康隆の著者にも同じ題名の小説がある「聖痕」という短編が出色の出来。
「神」はこうやって生まれるんだ、と感心。
(むかし同じような感想をもった小説があったような気がするが、どれだったか覚えていないのが残念)


2019/07/11

希望の糸/東野圭吾 ミステリー小説の感想

◆読んだ本◆
・書名:希望の糸
・著者:東野圭吾
・初版出版社:講談社
・初版発行日:2019/7/5


◆おすすめ度◆
・家族の絆ミステリー度:★★★★
・ちょっと感動的度:★★★★
・LGBTはトレンド?度:★★★


◆感想◆
住宅街にある喫茶店で、店主の女性が殺害されているのが発見される。聞き取り捜査をすすめても犯人に繋がりそうな情報はなかったのだが…

加賀恭一郎の従弟で、警視庁捜査一課・松宮脩平が主人公のミステリー小説。
喫茶店の女店主が殺害された事件と、災害で二人の子供を失った男性の関係、さらに刑事の松宮脩平にかかわる出来事などが並行して展開する。

曰くありげな人間関係と事件の真相は?
いったい誰が誰と、どんな関係なんだ!
というミステリー小説。

中盤でなんとなく展開が見えてきても、最後まで飽きさせず読ませる著者のテクニック。
どう書けば読者が喜んで、悲しんで、心に響くがが丸分かりのようで。
著者の手のひらの上で転がされているようです。
それがまた気持ちよく転がされるからたまりません。

父親でも母親でも娘でもなく、ましてや刑事でもない自分には、感情移入できる登場人物がいなくてちょっと残念。
先日読んだ「今昔百鬼拾遺 天狗」は「LGBT」がちょっとしたキーポイントになっていて、本書にもLGBTがキーとなる人間関係があったりして、これは最近の流行りなのか?