だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 最近は新旧歴史時代小説やエンターテイメント、ライトノベルにも手を伸ばして節操のない状態に。趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

無脊椎水族館/宮田珠己 エッセイの感想

◆読んだ本◆
・書名:無脊椎水族館
・著者:宮田珠己
・初版出版社:本の雑誌社
・初版発行日:2018/6/21

◆おすすめ度◆
・無脊椎動物大好きエッセイ度:★★★★
・変な生き物に魅入られる度:★★★★
・写真もユニーク度:★★★★

◆感想◆
『無脊椎動物という変な生き物を見ていると、前向きに陰気になれる』と提言する著者が、日本全国の水族館を訪れ、クラゲやイカ、イソギンチャクやウミウシなどの無脊椎動物の奇妙さを、思う存分ぶちまけた水族館紀行。

著者の本領発揮な斜め上行くエッセイ。

フグに迷路を見出したり、カニやエビは昆虫だと喝破したり、クラゲの生態に異次元を感じたり。
目の付け所がさすがです。

掲載されている写真もふんだんでユニーク。
目を奪われる奇妙さと美しさが同居している。
最後に登場するボウシュウボラも強烈。ラスボスにふさわしい威容だ。

たぶん実際に自分で水族館に行って無脊椎動物を見るより、本書の写真や著者の文章を読んだほうが、変な生き物を堪能できるのではないかと。
自分だけでは著者のように変な生き物にのめり込めないだろうし、変な部分を堪能できないかと。
本書を読むと、水族館に行く以上に無脊椎動物に触れた気がする。

そういう意味では本書は、水族館以上に水族館している。
全然アカデミックじゃないところも素晴らしい。

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Musio I:電脳メイロ/真山碧 ファンタジー小説の感想

◆読んだ本◆
・書名:Musio I:電脳メイロ
・著者:真山碧
・初版出版社:AKA
・初版発行日:2017/4/14

◆おすすめ度◆
・少女向けファンタジー度:★★
・不遇な女子とロボットの友情度:★★
・コラボ小説度:★★

◆感想◆
実在するロボット(英会話学習用)に別世界から来た騎士の意識が入り込んでしまったという設定の、少女向けファンタジー小説。

不遇な境遇のメイロという女子中学生が、ミュージオというロボットに出会い、そして不思議な電脳空間を冒険するうち、次第に打ち解けるようになって…


アマゾンのレビューの高評価と、SFっぽい雰囲気で買ってしまいましたが、おじさん向けのSFではありませんでした。

そもそも真山碧というプロの大人の作家が、少女目線のファンタジーを書いて、それをおじさんの自分が読むって、どっかが間違えてるのに買う前に気づくべきでした。
英会話学習用のMusioというロボットにも興味はないし。
負けた感があるのはなんででしょう。


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わたしの本の空白は/近藤史恵 サスペンス小説の感想

◆読んだ本◆
・書名:わたしの本の空白は
・著者:近藤史恵
・初版出版社:角川春樹事務所
・初版発行日:2018/5/11

◆おすすめ度◆
・サスペンス小説度:★★★
・怖くてドキドキ、恋しくてドキドキの主人公度:★★★
・デートの前の妄想が楽しいのと同じ、みたいな度:★★★

◆感想◆
殺風景な白い部屋で目覚めた主人公の三笠南は、昨日なにをして、なにを食べたのか、どこで就寝したのかも思い出せない。それどころか名前やや年齢や職業も思いだせなかった…

病院のベッドで目覚めた主人公が、記憶喪失になっていたというサスペンス小説。

いったい彼女は何者なのか、どうして記憶喪失になったのか。
なんでなんで?
どうしてどうして?
どうなるどうなる?
という、何がどうなっていたのかを知りたくなる展開。

宮部みゆきの「レベル7(セブン)」みたいな出だしで、ドキドキのミステリー小説かとおもったら…
ちょっと期待したのとは違う方法に物語は展開。

実際のデートより、デートの前の妄想の方が楽しい、みたいな感じです。

◆関連記事◆
近藤史恵・インタビュー 最新サスペンス小説『わたしの本の空白は』について語る/Book Bang -ブックバン-
記憶を失くしてまでも、誰かに恋い焦がれる想いを抱えることの哀しさ 近藤史恵『わたしの本の空白は』/Book Bang -ブックバン-

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狼は瞑らない/樋口明雄 山岳冒険小説の感想

◆読んだ本◆
・書名:狼は瞑らない
・著者:樋口明雄
・初版出版社:角川春樹事務所
・初版発行日:2000/11

◆おすすめ度◆
・山岳冒険小説の王道度:★★★★
・ハラハラドキドキの手に汗握る展開度:★★★★
・山が生きる意味を教えてくれる度:★★★★

◆感想◆
長野県の山間の寒村で育ったタカシは、早くに両親を亡くし、親戚の家で育てられる。親戚やその子供にいじめられても我慢し刃向かうことのなかったタカシ。内緒でアルバイトをして亡き父の面影を追って山に登るが…

プロローグともいえる40ページそこそこの第一部だけで、もう泣きそうになる。これだけでも感動的な短編として成立する出来。
本編への期待が高まるが、それを裏切らない面白さ。

主人公佐伯の警視庁警備部警備課でSPをしていた過去。
なぜか仲間と同調しようとしない佐伯。
不可思議な事故。
謎の登山者たち。
超大型の大風が接近する山を舞台に、そこで活動する山岳警備隊のむつけき山の男たちの戦う姿が描かれる。
次々に襲い来る困難と、それに立ち向かう彼らのひたむきな姿。

山岳冒険小説の王道な展開です。
登ってもいないのに大風の風と雨でびしょびしょになった気分に、遭遇してもいないのに凍った雪の冷たさに痺れた気分になります。

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エアー2.0/榎本憲男 サスペンス小説の感想

◆読んだ本◆
・書名:エアー2.0
・著者:榎本憲男
・初版出版社:小学館
・初版発行日:2015/9/24

◆おすすめ度◆
・ドキドキサスペンス小説度:★★
・はらはら経済小説度:★★
・続編期待度:★★★★

◆感想◆
新国立競技場の建設現場で働く中谷は、どう見ても場違いな「おっさん」と出会う。肉体労働には全然向いていない「おっさん」をかばうが、「おっさん」は現場をクビになってしまう…

中谷と「おっさん」の2人を主人公にした、サスペンス経済小説。

実はおっさんは「エアー」というあらゆる情報を解析して、市場を予知してしまうというスーパーなマシンを作り上げた天才だった!
そして日本政府をあいてに、交渉を始める…

おっさんはいったい何者なのか?
物語はどう展開するのか?
既存の資本主義に風穴をあけるような斬新な方法が提示されるのか?
なんていうワクワクドキドキ感は、最後までそのままです。

読み始めの期待感がそのままラストまで続く、みたいな。

これではおっさんが何をしたかったのかもわからないし、結局巨大資本という背景がなければ何もできない、みたいな結末に。
経済に明るそうな著者に、資本主義に代わる画期的な経済システムが自律するところを書いて欲しかったですね。

というか著者は続編、あるいはシリーズ化を念頭に書いていたのかもしれません。
ラストを読むと、そうとも見受けられます。
それならば、次作を読んで評価するのが順当かもしれません。

ぜひ次作では、子供向けの漫画に出てくるコンピューターのような「エアー」にも改善の手を入れて欲しいです。
(指示通りにエアーのユニットを組み立てないと、ブルブル振動してコネクターを外してしまうとか、両手で仮想イメージを操るソフトの操作方法とか、エアーのユニットが陸送できて日銀の地下に設置できるのに、原発一基分の電力を必要とするとか。ちょっとリアリティに欠けるような。ついでに言えは、原発一基分の電力が必要だからといって、原発一基がダウンしたら電力不足になることはないと思います)

◆関連記事◆
『エアー2.0』榎本憲男著/Book Bang -ブックバン-

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本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員III」/香月美夜 ライトノベルの感想

◆読んだ本◆
・書名:本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員III」
・著者:香月美夜
・初版出版社:TOブックス
・初版発行日:2018/6/9

◆おすすめ度◆
・面白いライトノベル度:★★★★
・下町のみんなと別れるのが寂しい度:★★★★
・将来はフェルディナンドと結婚すると思ったのに度:★★★

◆感想◆
神殿長としての仕事と、貴族院での学業やお茶会の内容が描かれる本書、だんだん登場人物も増えてきて、人物名なのか土地の名前なのかあやふやに。
それでも読んでいくうちに「本好きの下剋上」の世界に浸っていくから面白い。

マインの本好き振りが発揮されるなか、結婚話しやルッツとの別れ?なんかも飛び出してきて、大変!
どうなる?どうする?で次巻に続く。

この調子で永遠に続いて欲しい気もします。
あと、アンゲリカのファンです。

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果断―隠蔽捜査 2/今野敏 警察小説の感想

◆読んだ本◆
・書名:果断―隠蔽捜査 2
・著者:今野敏
・初版出版社:新潮社
・初版発行日:2007/04

◆おすすめ度◆
・面白い警察小説度:★★★★
・主人公の果断ぶりがいい度:★★★★
・上司達の不断ぶりが引き立て役度:★★★★

◆感想◆
降格人事で大森署署長となった主人公の竜崎。署長の最大の業務が書類のハンコ押しであることに嘆きながらもひたすらハンコを押している毎日だったが…

相変わらず自分の信念を曲げない竜崎は、相手が上司だろうとマスコミだろうとPTAの役員だろうとお構いなしに持論をぶちまける。
空気が読めないのも甚だしい竜崎だが、それが本書の最大の読みどころ。

前作ではこの竜崎の性格が分裂しているように感じたけれど、本書ではうまくまとまっている。
まあ、『子供達の安全を守るためには、家庭というコミュニティーや子供達との会話が大事だ』なんていう趣旨の説教をPTAや教師との懇親会でぶちまけておきながら、自分は妻が入院しそうなほど顔色が悪いのにも気づかないという体たらく。
ま、そんな瑣末なことはいいとして、大森署に着任早々立てこもり事件が起き、竜崎の対応が注目される。

慌ただしく動く展開や、署内の人間関係の変化などいろいろあって、けっこう胸のすく展開でスカッと爽やか。
頑固者の竜崎がいい味出している。

っていうか、周りの警察官僚が変な奴らばっかり。
責任をなすりつけあってばかりいるキャリアたちのほうが変で、結果、一般の企業だったら普通の判断と行動をしている竜崎が、思い切った判断をしているようにみえるという。

竜崎が果断なのではなく、キャリア達が不断なのだと思う。
(決まった!)

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バイロケーション/法条遥 ホラー小説の感想

◆読んだ本◆
・書名:バイロケーション
・著者:法条遥
・初版出版社:角川書店
・初版発行日:2010/10/23

◆おすすめ度◆
・新感覚ホラー小説度:★★
・何が何だかサスペンス小説度:★★
・誰が誰やらミステリー小説度:★★

◆感想◆
画家を志す忍は、スーパーで偽札の使用を疑われ警察官に連行される。しかし忍が連れて行かれたのは「もう一人の自分であるバイロケーションをなんとかする会」という、自分と全く同じ人間が現れるという現象に悩まされている人たちの集まりだった…

ドッペルゲンガーと似ているけど、本人と偽物が全く同じという点が異なるバイロケーション。
そんなバイロケーションに悩まされる人たちが集まる、「もう一人の自分であるバイロケーションをなんとかする会」で、次々と事件が。

ストーリーはどう展開するのか?
謎まみれの男は、何を目的にしているのか?
いったいどっちが本人でどっちがバイロケーションなのか?

という、ホラー1割、サスペンス1割、ミステリー7割、それは言えない1割の第17回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作。

日本ホラー小説大賞よりメフィスト賞の方が似合っていそう。
読んでるとだんだん面倒臭くなってくるけど、新本格ファンの読者なら飽きなく読めそうです。

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