だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 最近は新旧歴史時代小説やエンターテイメント、ライトノベルにも手を伸ばして節操のない状態に。趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

空飛ぶタイヤ/池井戸潤 経済小説の感想

◆読んだ本◆
・書名:空飛ぶタイヤ
・著者:池井戸潤
・定価:上745円 下745円
・出版社:講談社文庫
・発行日:2009/9/15

◆おすすめ度◆
・一気読み経済小説度:★★★★★
・予定調和と勧善懲悪の快感度:★★★★
・三菱自動車から訴えられない?度:★★★★

◆感想◆
三菱自動車のタイヤ脱落事故をモデルにした経済小説。
事故を起こした運送会社の社長が、その原因が自動車自体の欠陥であることを突き止めようと、巨大企業に刃向かう姿を描く。

これぞサザエさん的予定調和の安心感と、水戸黄門的勧善懲悪の爽快感の見本のような小説。
内容も展開も登場人物もありきたりなのにこれだけ読ませる筆力。
悪役、いいもん役、それぞれの役割が見えていて展開も読めているのにこの面白さ。
不思議だ。
これにミステリーな要素やマニアックな要素が加わったら鬼に金棒状態。

でもこんな「三菱リコール隠し事件」そのまんまな小説を書いて、三菱自動車から訴えられたりしないんだろうか?
「本書はフィクションであり、実在の場所・団体・個人等とは一切関係ありません」と断られると、三菱自動車もどうしようもないんだろうか。
事実そのまんまだから、どうしようもないんだろうか。

◆関連記事◆
空飛ぶタイヤ/ウィキペディア
書評・最新書評 : 空飛ぶタイヤ [著]池井戸潤/BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト

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機龍警察 狼眼殺手/月村了衛 ミステリー小説の感想

◆読んだ本◆
・書名:機龍警察 狼眼殺手
・著者:月村了衛
・定価:2,052円
・出版社:早川書房
・発行日:2017/9/7

◆おすすめ度◆
・内部抗争の警察小説度:★★★★
・ドキドキアクションの冒険小説度:★★★★★
・謎が謎をよぶミステリー小説度:★★★★
・悲哀に溢れる2人度:★★★★★

◆感想◆
「クイアコン」に絡む疑獄と、その関係者が次々殺害されていく事件が起きるが…

派手なアクションシーンに頼らず、濃密な構成、綿密な舞台、緻密な展開で読ませる。
内部抗争を描く警察小説や、殺人事件がらみのミステリー小説としての面白さもさることながら、2人のヒロインが悲しすぎ。ライザ・ラードナーと鈴石緑が、悲哀に溢れている。
他の著者の小説はエンターテイメントよりになった気がしたが、機龍警察は従前通り冒険小説の魂を宿している。

◆関連記事◆
『機龍警察 狼眼殺手』(月村了衛)/馬場秀和ブログ

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この世の春/宮部みゆき 時代小説の感想

◆読んだ本◆
・書名:この世の春
・著者:宮部みゆき
・定価:上1,728円 下1,728円
・出版社:新潮社
・発行日:2017/8/31

◆おすすめ度◆
・独自の時代小説度:★★★★
・純和風サイコホラー度:★★★★★
・心の闇を一つ一つ丁寧に解きほぐすと度:★★★★★

◆感想◆
子供の描き方がうまい!
淡い恋心がにくい!
優しい思いやりが泣ける!
これはもうS・キングへのオマージュではなく、宮部みゆき独自の時代小説に舞台をおいた純和風サイコホラー。

◆関連記事◆
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暗雲と春風 千街晶之/『この世の春(上・下)』宮部みゆき/Book Bang -ブックバン-
時代小説によくぞこのテーマを 乾緑郎/『この世の春(上・下)』宮部みゆき/Book Bang -ブックバン-

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高熱隧道/吉村昭 記録文学の感想

◆読んだ本◆
・書名:高熱隧道
・著者:吉村昭
・定価:562円
・出版社:新潮文庫
・発行日:1975/7/29

◆おすすめ度◆
・記録文学の傑作度:★★★★★
・過酷なトンネル工事度:★★★★★
・隧道の中は死者の国度:★★★★★

◆感想◆
死者300人以上、岩盤温度max166度、泡雪崩による未曾有の事故。
黒部第三発電所の水路トンネル工事、軌道トンネル工事の過酷さを描いた小説。

吉村昭の記録文学の真骨頂とも言える本書。
同様の物語では、「黒四」を舞台にした『黒部の太陽』が有名だが、その過酷さは『黒部の太陽』を超えるとまで言われている。

工事現場にたどり着くまでに転落死するものが続出!
岩盤温度が160度を超えるところ掘削するって?
泡雪崩で宿舎がぶっ飛ぶ?
ダイナマイトが自然発火!
もう人間が働く場所じゃない。極限を超えている。
それでも人はトンネルを掘り続ける。

監督者と労働者の関係にも共感できるし、掘削の技術的な描写にも納得のリアリティ。
技術者としての魂を描きながらも、工事現場は死者の国と化している様相も。
だからラストは逃げ出すしかなかったのかも。

◆関連記事◆
高熱隧道/ウィキペディア
黒部への道 5 水平歩道ができる/もるとゆらじお(転落死するのも納得する写真が!)
黒部 関電ツアー ~高熱隧道を往く~/記憶の残滓 by arkibito

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なれる!SE/夏海公司 ライトノベルの感想

◆読んだ本◆
・書名:なれる!SE
・著者:夏海公司
・定価:1〜16巻計9,611円
・出版社:電撃文庫
・発行日:2010/6/10〜2017/8/10

◆おすすめ度◆
・大人が読んでも面白いライトノベル度:★★★★★
・SEの過酷な世界度:★★★★
・仕事の苦労と達成感度:★★★★★

◆感想◆
ブラックなシステム開発会社に就職した主人公が、ユニークな上司や厳しい顧客、ライバル会社などに囲まれ、過酷な業務に追われながらも、その仕事の楽しさややりがいに目覚めていくライトノベル。

このシリーズを読んでSEになろうと思った人もいれば、SEだけにはなるまいと思った人もいるというお仕事小説。
下手な経済小説より経済小説してるし、SEやシステム開発の現場の様子がわかって面白い。
学生より、実際に働いている読者の方が共感する部分は多いと思し、仕事がうまくいった時の達成感を描き出すのがうまい!
(一方で、そんな風にうまくいったら世話ないよ、というため息も)
エンジニアのこだわりを見せた展開で完結です。残念。

◆関連記事◆
『なれる!SE』公式サイト/電撃ドットコム
なれる!SE/ウィキペディア
SEの達成感を伝えたくて「なれる!SE」を書いています、キャラには原型の人がいますよ---ライトノベル作家 夏海 公司氏/日経コンピュータDigital

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火怨/高橋克彦 歴史小説の感想

◆読んだ本◆
・書名:火怨
・著者:高橋克彦
・定価:上907円 下885円
・出版社:講談社文庫
・発行日:2002/10/16

◆おすすめ度◆
・冒険小説の熱さを感じる歴史小説度:★★★★★
・虐げられる陸奥の人々の知恵と力度:★★★★
・アテルイも漢だが、坂上田村麻呂も漢だ度:★★★★★

◆感想◆
平安時代の初期、黄金を産出する陸奥を支配しようとする朝廷と、これを阻止しようとする陸奥の人々との戦いを描いた歴史小説。

これは面白い。
古くはアリステア・マクリーンやギャビン・ライアル、新しくは月村了衛の描く冒険小説のように、登場する漢たちが熱い!
ひたむきな男たちの想いが伝わって来る。
展開もいいし、合戦の描写や策略もうまい。
そして陸奥の若きリーダー・アテルイの活躍が英雄すぎる!
ラストの決断は涙なくては読めない。

久しぶりにいい冒険小説を読んだ気分。
「陸奥三部作」(「火怨」「炎立つ」「天を衝く」)を全部読みたくなる。

◆関連記事◆
高橋克彦「火怨 北の耀星アテルイ(上)」を読んだ感想とあらすじ(最高に面白い!)/時代小説県歴史小説村
坂上田村麻呂とアテルイを超わかりやすく説明【アテルイ無双】2/2/大人になってから学びたい日本の歴史
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天冥の標VIII ジャイアント・アーク PART1,PART2/小川一水

◆読んだ本◆
・書名:天冥の標VIII ジャイアント・アーク PART1,PART2
・著者:小川一水
・定価:PART1 720円 PART2 740円
・出版社:ハヤカワ文庫
・発行日:PART1 2014/5/25 PART2 2014/12/25

◆おすすめ度◆
・第1巻がよくわかるPART1度:★★★★★
・冒険小説のようなドキドキのPART2度:★★★★★
・これからの予想外の展開を期待しちゃう度:★★★★

◆感想◆
第1巻「メニー・メニー・シープ」で描かれた物語を別角度から再描画するPART1。そしてさらに物語の先を描き始めるPART2。天冥の標もいよいよクライマックス。

アマゾンのレビューに第1巻を再読しておいた方がいいという旨のコメントがあって、それに従い「メニー・メニー・シープ」を読みなおすと超ビックリ。
何がなんだかさっぱりだった第1巻が、それはもう物語のエッセンスの詰まった物語に変貌。
第1巻の内容をよく覚えていない自分にもびっくりだけど、「天冥の標VIII ジャイアント・アーク」を読み終わってみれば、冥王斑パンデミックで始まった物語がとてつもない紆余曲折を経て「救世群」対「未染者」の物語に集約しつつあるようにも見える。

第1巻で描かれた物語に、第2巻から第7巻までの物語を収束させつつ、さらにその先の展開を伺わせる本書。
「なるほどそうか!」と感嘆しつつ「わくわくドキドキ!」しながら読み進めるのも魅力だが、指をふやかして次巻を待つのが「天冥の標」シリーズの最大の楽しみだったりもする。

◆関連記事◆
よくわかる!?「天冥の標VII」の世界。(ネタバレ注意です)
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