だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 最近は新旧歴史時代小説やエンターテイメント、ライトノベルにも手を伸ばして節操のない状態に。趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

犯人に告ぐ/雫井脩介

◆読んだ本◆
・書名:犯人に告ぐ
・著者:雫井脩介
・出版社:双葉社
・定価:1,600円
・発行日:2004/7/30

◆評価◆
・警察ものミステリー度:★★★
・劇場型凶悪犯罪に対する劇場型捜査度:★★★★
・犯人とかとの駆け引き度:★★★

◆ひとこと◆
児童誘拐事件の捜査にあたっていた巻島。いっこうに見えてこない犯人の指示により、大掛かりな捜査体制の変更を余儀なくされながらも、犯人の周到さに舌を巻いていた…
結局、巻島は犯人の姿を認めながら、取り逃がしてしまう。さらに誘拐されていた児童は殺害され、その責任をとるかたちで巻島は左遷させられる。

と、ここまでがプロローグ。
その後、新たな児童連続殺害事件が発生。巻島は、TVニュース番組を利用した捜査に抜擢される。
 巻島の過去の汚点と犯罪捜査に対する姿勢
 巻島を利用しようとする警察幹部の思惑
 劇場型犯罪に対抗する劇場型捜査という手法

この、TVニュースを捜査に利用するという劇場型捜査が、目新しく新鮮。
TVを使った捜査での、犯人との駆け引き。TV局の犯罪報道に対する姿勢。
視聴率を取ろうとする番組作り。
そんなこんながうまく書き込まれている。
綿密な展開(逆にいえばスローな展開だが)も、読者を飽きさせない。

ただ、巻島の上司である植草刑事のキャラクター設定に難あり。
この登場人物がいなければ、物語に幅は出なかったろうが、それにしてもなんだかねぇ。マンガの登場人物並みの安易な設定。
もうちょっとましな性格は考え付かなかったのだろうか。
「好きな女の気を惹くため」に、キャリアの植草がここまでするかな?

ちゃらちゃらしすぎの植草に「喝!」だな。



犯人に告ぐ/雫井脩介の表紙とAmazonでのレビュー
犯人に告ぐ
犯人に告ぐ雫井 脩介

おすすめ平均
starsドラマなら……
starsごめんなさい
stars「逮捕はもう時間の問題だ。逃げようと思うな。今夜は震えて眠れ」
stars犯人よ、今夜は震えて眠れ
stars劇場型捜査という新しい形

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秋の花火/篠田節子

◆読んだ本◆
・書名:秋の花火
・著者:篠田節子
・出版社:文芸春秋
・定価:1,619円
・発行日:2004/7/10

◆評価◆
・非純愛小説度:★★
・生と性度:★★
・中年主婦向け度:★★★

◆ひとこと◆
閉塞した日常に疲れ、ふとしたきっかけで起き上がる性的な情念。人間の持っている根源的な思いを綴った短編集。

この人の小説って、やっぱり切り口が微妙にずれてる。そのずれ加減が危うい感じで良い。
一人で遊園地にいる、見合い相手に振られたさえない男性。彼に声をかける奇妙な少女。二人は観覧車に乗り込むが、操作員のミスで途中停止してしまう。
「観覧車」の展開は、陰靡で性的なのに、物悲しく悲愴。

他の短編も、「生」「性」「死」といった題材を扱いながら、人間の持つ性を描き出している。
最近流行りの「純愛」の向こうをはるような内容。
ただ登場人物はいずれも高齢なので、若い読者には敬遠されそう。
中年以降の女性には、共感必至か。



秋の花火/篠田節子の表紙とAmazonでのレビュー
秋の花火
秋の花火篠田 節子

おすすめ平均
starsずっしり重い読み応えある短編集
stars結局,「観覧車」
stars読み応えのある「観覧車」
stars揺れる心
stars人生の足跡。それが、どんなに愚かであろうとも……。

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夜のピクニック/恩田陸

◆読んだ本◆
・書名:夜のピクニック
・著者:恩田陸
・出版社:新潮社
・定価:1,600円
・発行日:2004/7/30

◆評価◆
・学園ドラマ度:★★★
・友情と恋と人間関係と将来と度:★★★★
・大イベントの高揚感度:★★

◆ひとこと◆
高校生活最後の大イベント「歩行祭」。生徒達全員が、夜を徹して80キロを歩き通す。西脇融は、高校生活最後のこのイベントを、親友の戸田忍と一緒にゴールすることで締めくくりたかった…

文化祭や体育祭、修学旅行と、学生生活にはイベントが付き物。そして普段の生活では話し合えない、恋愛や将来の話題になりがち。
本書はそんなイベントの雰囲気をうまく描写した学園ドラマ。といっても舞台はみんなが歩いている道路だが。

ホラーやミステリーっぽい展開を期待していたが、純然とした青春モノ。青春どころか黄昏れぎみのおじさんには、なんだか取り返しのつかない大切なものを、見せられただけって感じ。
若い人は、いくらでも取り返せるからいいよね。

それはそうと、登場人物がかわす文章で、相手の問いかけに肯定する意味で「だな」と答えるところが。 おお!
この「だな」って、「だな通信」の「だな」と同じ意味の言葉。
恩田陸先生の文章に「だな」というお言葉があるということは、全国的に認知された日本語ってことね! 感激!!


夜のピクニック
夜のピクニック恩田 陸

おすすめ平均
stars感じた郷愁も本の一部
stars毒にも薬にもならない夢小説
stars私も3年間で100kmの学校行事経験者
starsなつかしの青春☆
stars食わず嫌いしないで、早く読めばよかった

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「夜のピクニック」では、みんなが歩きながら色んなことを考えている。
人間、体を動かしている時のほうが、思考がまとまるように思う。
よく学者が部屋の中を歩き回りながら物思いに耽っている、お決まりのシーンもあるし。
体を動かしている時以外には、寝付く寸前。
最近寝付く前に、「これはなかなかいい考え!」と思うことがあるのだが、夢と一緒で、起きるとちっとも思い出せない。
残念!



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僕たちの戦争/荻原浩

◆読んだ本◆
・書名:僕たちの戦争
・著者:荻原浩
・出版社:双葉社
・定価:1,900円
・発行日:2004/8/15

◆評価◆
・タイムスリップ体験&交錯する青春記度:★★★★
・ファッショ的日本/軽薄短小の日本度:★★★★
・やっぱり愛だよね愛度:★★★★★

◆ひとこと◆
上司とケンカし、居酒屋のアルバイトも止めてしまった健太。その短慮さを彼女のミナミからも、子供のケンカとなじられるしまつ。むしゃくしゃする気持ちをサーフィンで紛らそうと沖に向かってパドリングしていたが、突如コンクリートの壁に激突したような衝撃がかかり、健太は気絶してしまう…
一方1944年、吾一は93式陸上中間練習機の操縦席での単独飛行訓練を行っている最中に、機体が激しく振動。機は落下しはじめ、大きなGに襲われた吾一は気絶してしまう…

はじめはよくあるタイムスリップものの青春小説か、と思っていたが、これが面白い。
物語は、1944年にスリップした健太と、現在にスリップした吾一のことが交互に書かれる。
健太と吾一はそっくり。それぞれタイムスリップした先では、周囲の人に頭がおかしくなったんじゃないかと思われたりするほど、似ている。
本人達は、自分とそっくりな他人になりすまし、なんとかそれぞれの世界で生き抜き、自分達のいた元の世界に戻る方法を考える。

読みどころは、自分が生活していた環境とタイムスリップした先の違いに戸惑い、考え、行動する様。
今の若者が終戦まぎわの軍隊でする体験と思い。そして、戦中の若者が、現在の日本を見て感ずること。

軍隊でのシゴキや、同年代の若者が国のために文字どおり命がけである姿が、下手な戦記物を読むよりリアルに迫ってくる。不条理な軍隊の世界が、健太の今風の眼を通して語られると、より鮮明に見えてくる。明るい健太の性格もあって、悲惨で深刻な描写にならず、陽気に見せるところも、若い読者にうける。
一方吾一は、アメリカの植民地となったかのような日本に、びっくり。
戦死した若者達が命を賭けて守ろうとした日本が、自堕落で無秩序な能天気日本となってしまったことに、疑問も湧いてくる。また、古風な若者の姿が滑稽だったり感心したり。
深刻なテーマをも笑いのオブラートにくるんで見せるところに、作者の余裕を感じる。

また、タイムスリップしてとまどう主人公達を助けてくれる、近しい人達の描写もうまい。
手が触れあうだけで頬を赤く染めてしまう文子さんの姿もいいし、吾一とミナミ(眞鍋かをりを連想させる描写)の関係も、新鮮でいい。
記憶が飛んだと思っている吾一を、心配したり気づかったり励ましたりする姿が、鮮やかでかわいい。
コミカルでユーモラスな語り口に、思わず笑いながらも、戦争や平和ぼけした現在を考えさせたり、愛する人を気づかうシーンににほろりとさせられたり。
ありふれた手法でありながら、新しい切り口で物語を完成させるという作者の得意技が、本書では一段と冴えている。

やっぱりすべての基本は愛なのね。



僕たちの戦争/荻原浩の表紙とAmazonでのレビュー
僕たちの戦争
僕たちの戦争荻原 浩

おすすめ平均
stars戦時の日本へ。
stars君がため
stars戦争について考えさせられる作品
stars健太と吾一、どちらが本当に幸せなんだろう
stars一気に読みました!ちょっとネタばれかもなので読む方は気をつけてください。

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僕たちの戦争 完全版 [DVD]
僕たちの戦争 完全版 [DVD]荻原浩

おすすめ平均
stars二人の浦島太郎の物語
stars上野樹里が超エロいです。必見!
stars未見だが期待をこめて→観てから
stars最初から最後までおもしろい。
starsシリアスな不思議系ドラマ×2

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空の境界/奈須きのこ

◆読んだ本◆
・書名:空の境界
・著者:奈須きのこ
・出版社:講談社NOVELS
・定価:上1,100円 下1,200円
・発行日:2004/6/5

◆評価◆
・ファンタジック少女小説度:★★
・オカルト/魔術/アクション/殺人度:
・体感的文章度:★★★

◆ひとこと◆
二年間の昏睡後に目覚めた両儀式。彼女は記憶の一部を失う代わりに、あらゆるモノの死を視ることができる魔眼を手に入れた。
式の同級生にして平々凡々たる黒桐幹也、人形作り師の蒼崎橙子、魔術師の荒耶宗蓮らが織り成す、異世界ファンタジー。

裏表紙や笠井潔の解説(これが長文で文化批評とも言える内容)には、新しい伝奇小説の金字塔的なことが書いてる。
うーむ。伝奇小説ねぇ。
おじさんの読み方では、ファンタジーとしか捉えられないし、その物語の舞台自体が中途半端に思えてしかたがない。

中性的な主人公や、一見ロジカルに見えて実はとても感覚的な文章等、少女小説の延長線上にある物語としてみれば受け入れられる。
自分を見つけだしたい、輝いていたい、誰かにとって特別な人でありたいという登場人物達の思いも伝わる。
が、ディテールに齟齬があるように感じるし、物語の世界はチグハグで未完成としか思えない。

そのへんのことは、解説でも触れられている。
この小説世界を「リアル」と感じるか否か。
『80年代までの世界感覚をもってすれば、それは不自然でリアリティが希薄ということになるが、無差異性の凡庸な地獄に適応をとげた読者にはリアルとなる。』

「無差異性の凡庸な地獄に適応をとげた読者」がリアルと感じるかどうかには疑問もあるが、少なくとも自分のような古い形式?に慣れた読者には、受け入れにくいものたなった。(自分だけか?)
今のサブカルチャーに疎くなっているということね。
理解できない自分が、ちょっと悲しい。
まあ、別に理解できなくてもかまわないが。


空の境界 上 (講談社ノベルス)
空の境界 上  (講談社ノベルス)奈須 きのこ

おすすめ平均
stars“空”を掴んだ手の中は空っぽ。
stars必要なのは妄想力
starsこれぞ奈須きのこ!
stars自己に向かう世界
starsそれほどでもなくて残念

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空の境界 下 (講談社ノベルス)
空の境界 下 (講談社ノベルス)奈須 きのこ

おすすめ平均
starsぜひ読んでみて!
stars中二病には2つあると思う。
stars修復できない世界
starsその言葉を言って欲しかった少女と温かかったクラスメイト。
stars究極の恋愛譚

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