だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 最近は新旧歴史時代小説やエンターテイメント、ライトノベルにも手を伸ばして節操のない状態に。趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

真夜中の神話/真保裕一

◆読んだ本◆
・書 名:真夜中の神話
・著 者:真保裕一
・出版社:文芸春秋
・定 価:1,619円
・発行日:2004/9/15

◆評価◆
・スリルとサスペンスとヒーリング度:★★★★
・神話/神/異端/科学度:★★★
・少女に宿る神聖度:★★★★

◆感想◆
不慮の事故で夫と娘を失った栂原晃子。彼女は、なんとか自分を取り戻そうとアニマル・セラピーの研究に取り組む。研究者と会うためインドネシアに向かう飛行機に搭乗するが、突然機体に衝撃が走り、墜落… 飛行機は、カリマンタン島のジャングルに墜落。唯一の生存者だった栂原晃子は、ジャングルの村で奇蹟の治療を受ける。

ファンタジックでありながら、アカデミックな内容の小説。
奇蹟の治療、ジャングル行、追跡劇と、展開は目まぐるしく飽きさせないが、主題は冒頭のプロローグに描かれる、少女の歌声とそこに宿る「神」。

神の奇蹟や吸血鬼伝説を題材にし、一見ホラータッチのファンタジーかと思いきや、奇蹟の治療をアカデミックに分析したりと、なかなかの苦心作でもある。
「神の奇蹟」というのは、こういうものなのかも! と思わせる説得力あり。
結局「神」はファンタジーなのか、それとも科学的に解析可能なものなのか?

ま、そんな作者が苦心しただろうポイントはおいといても、少女の歌声に宿る神聖というのが、やっぱりいい。
これがオヤジだったりしたら、面白さ全滅。
無垢な少女だから神聖が宿るのであって、酒臭いオヤジや三段腹のオバサンに神聖があったとしても、信用できない。

真夜中の神話/真保裕一の表紙
 

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グリズリー/笹本稜平

◆読んだ本◆
・書 名:グリズリー
・著 者:笹本稜平
・出版社:徳間書店
・定 価:1,900円
・発行日:2004/8/31

◆評価◆
・戦う警察と狂ったテロリスト度:★★
・大国に刃向かう男度:★★
・フィービ大好き度:

◆感想◆
元北海道警狙撃手の城戸口は、登山中に一人の男と合う。その男は、かつて城戸口が直接かかわった事件の犯人だった。男は「真に理性に拠って立って殺人を犯せるのは国家だけだ」という言葉を残し立ち去るが…

過去に狙撃手という任務とはいえ、人を殺したことのある、城戸口。
元自衛隊のエリートで独特の政治観を持つ男、折本。そして彼の目標とするテロを実現させる過程が描かれる。

登場人物や北海道という極北の舞台など磐石の構えなのに、粗筋を追うような展開と描写。もったいない。
雪山を舞台に、もっとスリリングな冒険小説にして欲しかった。
銃器や爆薬に詳しいテロリストの姿も、はじめは非情で酷薄なのに、フィービ大好き男に変貌してしまうのも納得いかない。
城戸口の苦悩も苦悩のままのようだし、折本の仕掛けもなんだか尻すぼまり。

このての謀略小説、スパイ小説(今どきスパイ小説だって)は、読めない体になってしまった。
やはり共感やカタルシスを感じるには、魂や思いが描けていないとね。

グリズリー/笹本稜平の表紙
 

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自殺自由法/戸梶圭太

◆読んだ本◆
・書 名:自殺自由法
・著 者:戸梶圭太
・出版社:中央公論新社
・定 価:1,800円
・発行日:2004/8/25

◆評価◆
・反モラルシリアス小説度:★★
・シュールで暗くてちょっと暴力的度:★★★
・「自殺がいけないなんて言ったの誰!」度:★★★

◆ひとこと◆
自殺を国が幇助するという時代。痛くもなければ無理をすることもなく死ねる自逝センターがあちこちにでき、多くの人が押し掛ける…

インパクトのあるテーマに、さすがトカジと思ったが、なんだか読んでいるうちに、小説世界が普通の世界に思えてくるから不思議。
次々と登場する主人公たちは、それぞれに悩みやらやる気の無さを抱えていたり、人間としてどうしようもなかったりしている。
そして彼等は、映画「ブレードランナー」の兵士募集の広告みたいにくり返される自逝センターへの誘いに、なかば自分を忘れて死を選ぶ。

シュールな世界。
トカジ流のハチャメチャなシーンもあるが、おとなしめ。
というか、シュールな世界がインパクトありすぎか。
いままでの小説では、登場する人物が飛んでいたが、本書は世界が飛んでいる。
自分の感情を移入できるような主人公がいると、大変なことに。
強い気持ちを持っていないと、からめ取られてしまうかもね。

負の感情ばかりの描写で、いささか辟易する中、花屋の亜希子さんに憧れる元反戦運動家の話なんかが、逆に光って見える。

自殺自由法/戸梶圭太の表紙
 

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