だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 最近は新旧歴史時代小説やエンターテイメント、ライトノベルにも手を伸ばして節操のない状態に。趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

孤宿の人/宮部みゆき

◆読んだ本◆
・書 名:孤宿の人
・著 者:宮部みゆき
・出版社:新人物往来社
・定 価:上1,800円 下1,800円
・発行日:2005/6/21

◆評価◆
・四国の小藩を揺るがす事件度:★★★★
・悪霊に祟られる人々/悪霊を利用する人々度:★★★★
・薄汚れたハートを癒す(アルジャーノンに花束を)度:★★★★★

◆感想◆
女中の子として生まれた「ほう」は、仕える家の祟りを祓うため金比羅様へ代参させられる。途中、四国讃岐国で同伴者に逃げられたほうは、丸海藩の藩医の家に引き取られるが…

四国の地で起きる祟りめいた災厄。
不幸な生れで知恵の遅れている少女ほう。
丸海藩で過去に起きた疫病と、その屋敷。
江戸で妻子と部下を手にかけ、罪人として丸海藩に流された元高官の加賀。
女ながら引手見習いとして気丈にふるまう少女宇佐。

物語の構成も申し分なければ、時代背景や登場人物の描写も過不足ない。
起きる事故や病気を「祟り」と考え怯える人々の心の動きも、自然に描かれる。

ところがどうも、面白くない。
何でだろう?

舞台の設定に気を配るばかりに、人部の描写にいまいち気配りが足りないような。(すべてをさらけ出しているところは違うものの、京極夏彦の影響を色濃く感じるのは、自分だけ?)
登場人物も、どこか生きていない。

さすがの宮部みゆきも不振なこともあるだろうし、読む方も期待するし、と思いながらも下巻を手に取り読み進むと、今までの印象を覆すような筆致の冴え。
うーむ、うまい。
特にほうとほうに関わる人々の心根が素晴しい。
上巻のつまらなさが嘘のよう。(勘違いかと思うほど)

ほうを心配する宇佐の思い。
藩医舷州と息子啓一郎の苦悩。
悪霊か死霊のように設定されていた加賀の、真実の姿。

国や家を第一に思うがゆえ、策に走りまた己の真意を抑えなければならない人々。
それに対し、知恵が回らぬゆえに純真なほう。
ほうの無垢でひたむきな思いに触れると、なぜかみんな優しくなる。

様々な軋轢や苦悩を胸に抱えながら苦しむ人に、ほうという無垢な少女の姿が眩しく映るり、一種の救済者として描かれる。
純真なほう、そしてほうを大切にしようとする人々の気持ちに、涙せずにいられない。

上巻のつまんない感がなければ、言うことなし。
久しぶりの号泣もの小説。

孤宿の人/宮部みゆきの表紙
   

テーマ:感想,おすすめミステリー小説,本 - ジャンル:本・雑誌,本,感想,ミステリー

嘘は止まらない/戸梶圭太

◆読んだ本◆
・書 名:嘘は止まらない
・著 者:戸梶圭太
・出版社:双葉社
・定 価:1,600円
・発行日:2005/6/15

◆評価◆
・男の嫌らしい妄想度:★★★
・それを利用する詐欺師たち度:★★
・詐欺師たちの思わぬ誤算度:★★

◆感想◆
落ちぶれかけた詐欺師の須波は、パチスロ屋で奇妙な歌を歌っているアフリカ人を目撃。どうにも気になってしかたがなく、彼の後を尾行するが…

詐欺師たちが結託し、アフリカ人を利用した大掛かりな詐欺を企む。

登場人物はトカジらしい激安男とちょっと賢かったり美人だったりする面々。

アホ面スケベ面のでこっぱちアフリカ人。日本の女とワグチャしたくてドチンを熱くたぎらせているへっぽこ男。
女をたらし込み金を巻き上げることを生業とする、イケメン男。
自慢の美貌と才覚で投資話をでっちあげ、投資家から金をかすめ取ろうとする美女。

それぞれユニークな味を出しているが、激安なのはアホ面スケベ面のでこっぱちアフリカ人や、ロリコン元役人くらいで、他の主要な登場人物はなんだかマトモに見える。

なんかトカジらしくない!

いつものチープでくだらない奴等はどこにいったんだ。
日本の漬け物工場ではたらいている大使館員が、同僚の心配事に悩む姿とか、日本の役人のごう慢さと俗物さを目の当たりにしてあきれる詐欺師とか、ストレートじゃん!

「激安」を量産し過ぎで、著者も飽きが来ているのか。

嘘は止まらない/戸梶圭太の表紙
 

テーマ:感想,おすすめミステリー小説,本 - ジャンル:本・雑誌,本,感想,ミステリー

東京ライオット/戸梶圭太

◆読んだ本◆
・書 名:東京ライオット
・著 者:戸梶圭太
・出版社:徳間書店
・定 価:1,700円
・発行日:2005/7/31

◆評価◆
・セレブ対激安住民の戦い度:★★★
・爆発する怒り度:
・イッテる登場人物達度:★★

◆感想◆
金持ちと貧乏人の二極分化の進んだ近未来の東京。高度のセキュリティを誇る高級マンションが綾瀬に建設される。周辺住民は、入居者に怒りの鉾先を向けるが…

カメラ小僧のピザ配達員。ヤクザに取り入ろうとする不良中学生。頭のおかしいホームレス。
どこにでもいそうだが、一線を踏み越えた感のある登場人物たちがめじろ押し。
彼等の負のエネルギーが、しだいに高級マンションに住むセレブへと向いて行く。

しかし、その高級マンションに住む住人も、一癖も二癖もあるセレブ。
体のあちこちに改造を加え、30才の美貌を保っているグラマー女性。彼女が狙うのは、同じマンションに住むモデルのような美少女の体。
女性をとっかえひっかえしては、窓の近くでことに及ぶ医師。

激安の登場人物オンパレードだが、いまいちディープなところがない。
登場人物に、作者の思い入れ(愛)を感じない。
ラストに向け収束する展開はいいが、未消化のキャラクターが多すぎて少々残念だなぁ。

東京ライオット/戸梶圭太の表紙
 

テーマ:感想,おすすめミステリー小説,本 - ジャンル:本・雑誌,本,感想,ミステリー

ロズウェルなんか知らない/篠田節子

◆読んだ本◆
・書 名:ロズウェルなんか知らない
・著 者:篠田節子
・出版社:講談社
・定 価:1,700円
・発行日:2005/7/10

◆評価◆
・青年団の村起こし奮闘記度:★★★★
・掟やぶりの秘策度:★★★
・めでたしめでたし度:★★★

◆感想◆
温泉も産業も歴史もない町。スキー場に逃げられゴルフ場計画も頓挫。そんな田舎町になんとか観光客を呼び込もうと、青年団が計画したのは…

「大カラオケ大会」だの「流星群を見る会」だのしか企画できず、行き詰まった感のある村起こし。
そこに東京から流れ着いた自称文筆業の鏑木が、軽薄で思慮のないアイデアと行動を持ち込み、青年団はおおわらわ。
青年団のまとめ役靖夫は良識の有る小市民といった性格で、少々物足りなさを感じさせる設定だが、彼の対極に位置する鏑木がうまく生きている。
鏑木の提案で、とんでもない村起こしが進んでいく。

テーマも構成も新鮮味はないが、それなりに読ませるのは著者のテクニック。
役場との確執や、村の老人達との意見の食い違いなど、ありふれている展開だけども、飽きさせることはない。

村起こしに必死になっている方には、切実感をもって読めるかも。
変に社会問題や文化論に偏向せず、エンターテイメントに徹しているところもいい。

ロズウェルなんか知らない/篠田節子の表紙
 

テーマ:感想,おすすめミステリー小説,本 - ジャンル:本・雑誌,本,感想,ミステリー

サウスバウンド/奥田英朗

◆読んだ本◆
・書 名:サウスバウンド
・著 者:奥田英朗
・出版社:角川書店
・定 価:1,700円
・発行日:2005/6/30

◆評価◆
・二郎(12才)の苦悩度:★★★★★
・小学生から見た大人の不可解な世界度:★★★★
・父一郎の破天荒&ヒーローぶり度:★★★★★

◆感想◆
元過激派の父を持つ上原一郎。型破りでめちゃくちゃな父親を疎ましく思いながらも、それなりに小学校生活を楽しんでいた。しかし、不良中学生から因縁をつけられ窮地に…

何が面白いって、元過激派でがたいのデカい豪放磊落な父一郎が最高!
年金不払の督促にくる市職員に対し、「国民年金など払わん」「論拠を示せ」と啖呵をきるし、かつての革命同志を持ち上げてぶん投げる様は等身大のヒーロー像そのまま。
いかしてる。

物語は息子二郎の視点から語られ、前半は二郎の小学校での友人関係や姉の意味ありげな所作、父母の語られぬ過去、などなど思春期らしいいろんな悩みごとが描かれる。
大人もいろいろ大変だけど、子供には子供なりの社会や人間関係があって神経使っちゃうのねー。
自分の記憶はあやふやだけど、むかしはこんな風な大人びた悩みは無かったような…
二郎の姉も母親も、上原一家全員がなんか重い石の下で苦しんでいるような、少々凹みぎみの展開。

ところがこれが大きな伏線のように働き、後半の開放的で笑えてスカットして心暖まる物語に繋がる。

うまい!
一郎かっこいいぜ!
妻さくらも姉洋子もステキ!

子供にとってこうあるべきだという新たな父親像を描き出した著者に拍手。
ま、自分の父親がこうだったらはなはだ迷惑ではあるが。
団塊の世代には、読んで忸怩たる思いを感じるむきもあるかと。

サウスバウンド/奥田英朗の表紙
 

テーマ:感想,おすすめミステリー小説,本 - ジャンル:本・雑誌,本,感想,ミステリー

海の底/有川浩

◆読んだ本◆
・書 名:海の底
・著 者:有川浩
・出版社:メディアワークス
・定 価:1,600円
・発行日:2005/6/30

◆評価◆
・巨大ザリガニパニックSF度:★★★
・閉じ込められた子供達の行方は!度:★★★★★
・機動隊必死の救出度:★★★

◆感想◆
市民に解放され、様々なイベントが開催されていた米軍横須賀基地。そこに突如人間大のザリガニの大群が襲来する。基地に投錨していた潜水艦の乗組員は、イベントを見学に来ていた子供達を救おうとするが…

人間と同じくらいの大きさに進化?したザリガニ様の生物が、住民達に襲いかかる。逃げまどう人達と救助に向かう機動隊。巨大化した理由は? 機動隊による救助は可能なのか? 自衛隊の出動は? というパニックSF。
一応ザリガニの巨大化した理由も語られるし、警察機構内部の軋轢や葛藤、縄張り争いなんかも描かれたりして、きちんとした小説になっている。
ただ、SFとしてもパニックものとしても、新鮮味はない。
状況や風景の描写も不足しており、リアリティを損ねている。

しかし!
巨大ザリガニに囲まれた潜水艦。
そこに逃げ込んだ少年達13人と若い2名の自衛官。
彼等の人間模様が面白い。

潜水艦乗組員である実習幹部2人の、硬軟両極端な性格。
最年長の女子高生望の、何かにいつも耐えているような風情。彼女の弟で、精神的なショックにより言葉が話せなくなっている翔。
やたらと反抗的なワルガキの圭介と、彼を取り巻く仲間。

潜水艦という狭い空間の中で救助を待ちながらも、反目しあったり離反したり、自分の考え方に迷ったり相手を思いやる気持ちに気付いたりと、少年少女向け小説の王道的テーマが描かれる。
キャラクターも非常に分かりやすく、ストレート。
やぱりこのストレートなところが少年少女向け小説の良いところだし、本書の魅力となっているところでもある。

なかなか感動的なシーンもあったりして、大人が読むにも耐える。

海の底/有川浩の表紙
 

テーマ:感想,おすすめミステリー小説,本 - ジャンル:本・雑誌,本,感想,ミステリー

FC2Ad