だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 最近は新旧歴史時代小説やエンターテイメント、ライトノベルにも手を伸ばして節操のない状態に。趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

2005年のロケットボーイズ/五十嵐貴久

◆読んだ本◆
・書 名:2005年のロケットボーイズ
・著 者:五十嵐貴久
・出版社:双葉社
・定 価:1,600円
・発行日:2005/8/5

◆評価◆
・爽やかで笑える青春小説度:★★★★★
・泣いたり笑ったり怒ったりの熱い17才の夏度:★★★★
・キューブサットに賭ける情熱度:★★★★

◆感想◆
自分の希望とは裏腹に、やむなき理由で入学した工業高校。主人公は悪友たちと合コンしていたことが学校にバレて、退学処分になりそうに。生活指導の教師から呼び出された主人公は、「キューブサット設計コンテスト」へ参加するよういわれるが…

負け犬のように高校生活を送っていた主人公。毎日ため息ばかりをつくような生活だったが、「キューブサット設計コンテスト」という衛星の設計技術を競うコンクールに参加することをきっかけに、青春まっただ中! の生活が始まる。

ファッションとパチスロを本分とするドラゴン。
今世紀最大の負け犬ながらお気楽なゴタンダ。
秀才ながらまるで協調性がなく皆に嫌われている大先生。
ステロタイプながら魅力的な仲間たちが愉快愉快。
こんなマンガチックな登場人物はないだろうと、ツッコミを入れたくなるが、軽妙洒脱で思わず笑ってしまう著者の文章に、いつのまにか小説世界に引き込まれてしまう。

優等生でもなければ大きな夢を抱いて努力しているわけでもない、いわば落ちこぼれたちが、「キューブサットを作り上げる」というだれの利益にもならないことに情熱を傾ける。
やっぱり何かに熱くなるっていうのは、いいなぁ。青春だよな。

使い古されたテーマで手法も新しいわけではないが、登場人物たちと一緒に笑ったり悔しがたりしてしまった。

読後も爽やか!

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ハイドゥナン/藤崎慎吾

◆読んだ本◆
・書 名:ハイドゥナン
・著 者:藤崎慎吾
・出版社:早川書房
・定 価:上 1,700円 下 1,700円
・発行日:2005/7/31

◆評価◆
・ハード&オカルティックSF度:★★★★★
・南西諸島を襲う地殻変動は序章にすぎない?!度:★★★★
・与那国島の巫女と共感覚を持つ青年の絆度:★★★★★
◆感想◆
共感覚の持ち主である伊波岳志は、伊豆の海でダイビングをしている時に「こっちへ来て」という声を聞く。ここ数年、共感覚が強くなっているように感じ、不安を抱いていた伊波岳志は、自分が狂っていくのではないかという恐怖を抱くが…

共感覚という、音が見えたり色が聞こえたりする感覚を持つ伊波岳志。
与那国のムヌチ(一種の巫女)である後間柚。
南西諸島の地殻変動を調査する、自らをマッドサイエンシストと標榜する科学者たち。
エウロパ生命探査計画に関わる宇宙生物学者。

序章のシーンはショッキングで、読者を目を惹き付ける。冒頭で展開する複数の物語もいいし、SFなのに巫女とかシャーマンとかが題材となっているところや、反体制的な科学者達(量子コンピュータを趣味でつくるようなロックシンガー風脳学者とか、石にざまれた記憶を読もうとする地質学者とかね)が少々書き込みが足りないものの、ユニークでなかなか魅力的。

与那国近海の地質調査の風景とか、圏間基層情報雲理論の展開とか、ハードSFしているところもいいが、本書の特徴は巫女の後間柚と共感覚を持つ伊波岳志という、一種オカルティックな設定の二人。
二人の関係が微笑ましかったり悲しかったりロマンチックだったりと読者のハートをうまく掴んで放さないし、また著者の「超常的な現象をSFとしてどう扱うか」というテーマともうまく融合し、物語を面白しているカギとなっている。

神憑かり的な力をロジックで説明はするものの(SFだもんな)、あえて深入りしようとしない著者のスタンス。へたすると中途半端で消化不良のSFになってしまうところを、絶妙のバランスでこらえている。

SFファンならずとも、夏の暑さを忘れて物語世界に没入できる小説だ!

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さよならバースディ/荻原浩

◆読んだ本◆
・書 名:さよならバースディ
・著 者:荻原浩
・出版社:集英社
・定 価:1,600円
・発行日:2005/7/30

◆評価◆
・悲しくせつないミステリー度:★★
・天才ピグミーチンパンジーに託す想い度:★★★
・研究センターで起きるミステリアスな事件度:

◆感想◆
霊長類研究センターの類人猿言語習得実験。バースディと名付けられたサルは、専用キーボードとディスプレイを使って人間と会話するという実験を行おうとしていた…

著者の小説の持ち味は、そこはかとないユーモアと心にしみ入るペーソスかなと。
本書も全体的に悲し気なトーンが。
(ホリー・コール「コーリング・ユー」を車内で聞くシーンがあるけど、全体的にそんな感じかな。「コーリング・ユー」は好きだけど)
読んでいてウキウキするような気分になる小説ではない。ユーモアの味付けもおさえ目だし。
いささか展開も遅く、短気な読者はイライラしそう。
決着も無理っぽいし。
題材は素晴しいけど、料理のしかたがいまいちか。外見に注意が行き過ぎて、内容が伴っていない人みたいな。(それって自分のことか)

しかし、主人公のバースディ(ピグミーチンパンジー/ボノボ 人間でいうと小学生くらいの年令)が素晴しい。
学習する過程でみせる賢さや研究者と戯れる姿が、人間の子供を見ているようで微笑ましいし、自分を人間だと思っている様が、面白くもあり悲しくもある。
著者は全精力をバースディの描写に傾けたよう。
動物好きにはうってつけの小説。

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波に座る男たち/梶尾真治

◆読んだ本◆
・書 名:波に座る男たち
・著 者:梶尾真治
・出版社:講談社
・定 価:1,700円
・発行日:2005/7/25

◆評価◆
・劇画風面白人情活劇話度:★★★
・ロマンチックコメディ度:
・クジラを食べたくなる度:★★

◆感想◆
「世のため人のためになれ」という仁侠道をモットーにする弱小の大場会。売春やシャブには手を出さない潔さだが、資金繰りはひっ迫。そんな大場会が訳あってクジラ捕りに?!

コメディータッチの小説に、笑えてちょっと侠気を感じるヤクザはうってつけだが、本書もその例にならった劇画風面白人情活劇話し。
ヤクザがなんで捕鯨を? と思うのは序の口で、大場組会長が昔たすけた男が伝説のスナイパーだったり、若頭の彼女が波座師(クジラ捕り 書名はここからとったんだね)の孫娘だったりと、少々お約束が多すぎる感はあるが梶尾真治だから許せる。

環境保護団体クリーンアースとの抗争シーンや、良く分かる落ちもなども描かれていて、青少年にはうってつけのエンターテイメント。
みんながクジラを食べたいと思えば、可能になる日もくるか。

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福音の少年/あさのあつこ

◆読んだ本◆
・書 名:福音の少年
・著 者:あさのあつこ
・出版社:角川書店
・定 価:1,400円
・発行日:2005/7/25

◆評価◆
・若者(永見明帆)の心に棲む闇度:★★★★
・その闇に恋する少女(北畠藍子)度:★★★★
・彼等をシニカルに見つめる若者(柏木陽)度:★★★★

◆感想◆
ジャーナリストの秋庭は、地方都市で起きたアパート全焼現場に向かう。夕刻、現場に到着した秋庭は、2人の若者に遭遇するが…

高校生三人を主人公とする、光と影というか、人の心の明と暗を描き出した小説。
少年達がキレる様子を題材にした小説は数あるが、そのキレる姿をあるがままに見せ読者に理解させながら、物語を展開する構成。著者の鋭い観察眼なしにはできない小説。

「おれたちを繋ぎ止めるものは、もう何もなくなったんだ。自由になりたいって、……やっとそれが叶ったわけだ。」
「本気で人を好きにならなくちゃ… 大切なんだよ」
「たった一つのボールが人の生き方を変化させる。そんなことが、あるのだろうか。」
「纏わりつくものも、繋ぎ止めようとするものもない。完璧な自由だと思わないか。」

自分の有り様に戸惑い、友人や異性との考え方の違いに齟齬を感じる主人公たち。彼等が発する言葉は、同世代の読者に強いインパクトを与えるだろう。
もう一度高校生に戻った気分で読むと、にわかに息苦しさと胸が締め付けられるような感覚が。

ところが後半から大人達が登場してくると、それまでの清冽な印象からリアルで醜い印象に急転換。 若者達の世界はよくも悪くもピュアーだけど、大人達の世界は醜く嫌らしく、それは誰が見ても一目瞭然の単純極悪の世界なのね。
いやだいやだ。

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