だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 最近は新旧歴史時代小説やエンターテイメント、ライトノベルにも手を伸ばして節操のない状態に。趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

精霊探偵/梶尾真治

◆読んだ本◆
・書 名:精霊探偵
・著 者:梶尾真治
・出版社:新潮社
・定 価:1,600円
・発行日:2005/9/30

◆評価◆
・ファンタジー/SF度:★★★
・ジュブナイル度:★★★★
・銀色のカードの謎とは!?度:★★★

◆感想◆
交通事故で妻を亡くした新海。精神的ショックの影響か、人の背後霊を見ることができ、背後霊の思いが分かるように! そんな特技を活かして失踪人探しをするようになるが…

妻を失ったショックで、自堕落で引きこもりがちの主人公。背後霊が見えたり数週間前の記憶が曖昧だったりと、思わせぶりな設定に、どんなストーリーになるかとワクワク。

大筋は古典的SFを踏襲するもので新鮮味はない。展開や会話も著者らしいが、やや少年少女向きに書かれているよう。
それでも、おませな小夢ちゃんの活躍ぶりや、ホームレスの荒戸があれよあれよとばかりに成功して行くさまは、なんかマンガチックで笑える。

各シーンの描写もリアルで、そのまますぐにでも映像化できそうな感じ。
旬な作家?だけに、本書に目を付ける業界関係者も多そう。

精霊探偵/梶尾真治の表紙
 

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この胸いっぱいの愛を/梶尾真治

◆読んだ本◆
・書 名:この胸いっぱいの愛を
・著 者:梶尾真治
・出版社:小学館文庫
・定 価:571円
・発行日:2005/10/1

◆評価◆
・純愛ドラマ度:★★★
・ファンタジー度:★★★
・映画の原作者によるノベライズ化という不思議度:★★★

◆感想◆
全国駅弁ツアーの調査に向おうとしている鈴谷比呂志。鉄砲玉の仕事をしくじり、逃亡しようとしているチンピラの布川輝良。亡き息子の墓参りに向う老夫婦。彼等を乗せた飛行機は、門司に向うが…

現在ロードショー中の映画「この胸いっぱいの愛を」のノベライズ本。
普段ノベライズ本などあまり読まないのだが、原作者が梶尾真治で、ノベライズ化したのも梶尾真治ときては、読まないわけにはいかない。
なんたって、傑作「クロノス・ジョウンターの伝説」が原作だし。

テンポが早く読みやすいのはいいが、逆にとってつけたような展開に。少々ストーリーに難あり。
映画は見てないのでわかんないけど、映画を忠実にノベライズ化しているためか?

それでも登場人物や風景描写が生き生きしているし、ほろっとする場面も。
著者の描写力による賜物だな。
原作とは全く違った内容だけど、それでも気持ちを込めてノベライズした著者の思いを感じる。

映画や本書を読んだ方には、是非とも傑作「クロノス・ジョウンターの伝説」を読んで頂きたい。
自分も久しぶりに再読して、前と同じように感動してしまった!

この胸いっぱいの愛を/梶尾真治の表紙
 

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ララピポ/奥田英朗

◆読んだ本◆
・書 名:ララピポ
・著 者:奥田英朗
・出版社:幻冬舎
・定 価:1,500円
・発行日:2005/9/30

◆評価◆
・エロエロ爆笑度:★★★★
・ブラックな味わい度:★★★★
・人間はエロの衝動に逆らえない!度:★★★★

◆感想◆
フリーライターで対人恐怖症の杉山。深夜パソコンに向かい、雑誌の原稿を書いていると、アパートの上階からかすかな物音が。耳をすますと女性の「あ」という声が…

デブでおたくのフリーライター、キャバクラ嬢のスカウトマン、ゴミ屋敷に住まう中年女性等々、冴えない&貧乏&頭の中はエロエロな登場人物による連作短編集。

これでもかと言うくらい、エロエロモード全開の登場人物。それでいてどこか物悲しく情けない。
人生落ちても、エロパワーはむくむくと無限に沸き上るようで、人間の悲哀を感じさせる。

帯には「爆笑小説」とあるけど、落ちはシュールだし、全体の構成も「みんなで輪になって」って感じで、著者の「最悪」に似たテイストのエロチックコメディ小説といった方が正解か。

表紙もエロさ爆発!!


ララピポ/奥田英朗の表紙
 

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血液魚雷/町井登志夫

◆読んだ本◆
・書 名:血液魚雷
・著 者:町井登志夫
・出版社:早川書房
・定 価:1,500円
・発行日:2005/9/30

◆評価◆
・SF「ミクロの決死圏」インスパイアー度:★★★★
・人間の血管の中で動き回るモノの正体は?度:★★★
・先端医療技術とモノとの戦い度:★★★★

◆感想◆
県内でも大病院の部類に入る市立洞西病院。放射線科医として勤務する石原祥子は、救急車で運ばれて来た若い女性の出手術に立会うことになるが…

「ミクロの決死圏」を彷佛とさせる人間の血管内の描写。
血管の中で動き回るモノの正体は?
アシモフと名付けられた、最新式の血管撮影および治療システムの機能。

人物描写が平板だったり物語の展開に難はあるものの、エンターテイメント小説としては充分。
最新の医療技術とともに描かれる医師達と「モノ」の闘いも、スリルとサスペンスに富んでいるし、読者を飽きさせない。

モノの正体は、いささか安易というか期待外れというか。でもリアルを追求すると、こうなるのかもね。
ひょっとしたら自分の体内にもいるかもしれないと、そう思わせるところまでリアルに演出してくれたら、言うことなしだった。

小説の内容には関係ないけど、帯に「このミステリーがすごい!大賞落選作品」のコピーが。
「大賞受賞」なら当たりまえだけど、「大賞落選」というアピールのしかたもあるのかと、妙に感心。


血液魚雷/町井登志夫の表紙
 

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東京奇譚集/村上春樹

◆読んだ本◆
・書 名:東京奇譚集
・著 者:村上春樹
・出版社:新潮社
・定 価:1,400円
・発行日:2005/9/18

◆評価◆
・不思議な掌編集度:★★
・ちょっと驚いてちょっと笑えてちょっと泣いて、みたいな度:★★★
・ファンタジー/おしゃれ度:★★

◆感想◆
どこかで実際に起きているかもしれない不思議な出来事。都市伝説やホラーでもなければ怪談でもない、ありそうでなさそうなファンタジー集。

強烈な印象はないものの、そこはかとなく心にしみ入るのは、著者の文章巧者なところのせいか。 もっと派手にしようとすればできるところを、さらりと流してしまう。

思えば、人が無闇に殺されたり殴られたり、あるいは現実には到底あり得ない物語りばかりを読んでいるが、たまにはあえて抑え気味のこんな小説もいいかも。

昼下がりのカフェでひとり読むには、最高の小説。
不思議なことが起きるかもしれないと思いながら、読んでいるシチュエーションと小説の両方楽しめるし。

東京奇譚集/村上春樹の表紙
 

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楽園の眠り/馳星周

◆読んだ本◆
・書 名:楽園の眠り
・著 者:馳星周
・出版社:徳間書店
・定 価:1,600円
・発行日:2005/9/30

◆評価◆
・ノワール度:★★★
・虐待する側の論理度:★★★★
・それに起因する心の葛藤度:★★★

◆感想◆
刑事の友定は妻と別れてから、息子の雄介を虐待するようになる。可愛い息子でありながら、雄介の柔らかな皮膚に暴力をふるうことを止められない。いつか自分の仕業がばれてしまうのではないかと思っている時、雄介を預けている託児所から電話が…

どうにも自分の衝動を止められない友定。彼の息子で、半ば自閉症に落ちいている雄介。恋人に裏切られ、幼い頃から父親に暴力を振るわれていた高校生の妙子。

雄介と妙子がふとしたきっかけで出会うことから、二人の逃避行が始まる。
妙子は、雄介に自分と同じ虐待の痕跡を発見し、雄介を自分の子供のように守ろうとするが、親であり刑事の友定は、執拗に息子を探し出そうとする。

逃げる妙子と雄介、追う友定。

登場人物も少なく、展開もストレートで分かりやすい。
最盛期?の馳星周的暴力シーンもなく、込み入ったヤクザや中国系マフィアの人間関係もなく、きわめてシンプル。
児童虐待される側とする側が、援交や出会い系サイトなどをからめて描写されているところに著者の持ち味を感じさせる。が、なんか作風がかわったなぁ。

でも結末は馳星周ノワール。
なにもそこまでしなくたって、と思うのはノワールを語る資格無しか?

楽園の眠り/馳星周の表紙
 

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