だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 最近は新旧歴史時代小説やエンターテイメント、ライトノベルにも手を伸ばして節操のない状態に。趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

日本沈没 第二部/小松左京,谷甲州

◆読んだ本◆
・書 名:日本沈没 第二部
・著 者:小松左京,谷甲州
・出版社:小学館
・定 価:1,800円
・発行日:2006/8/1
     
◆評価◆
・パニック小説度:
・国土をなくした日本の行方度:
・ナショナリズムからコスモポリタニズムへ度:★★

◆感想◆
「異変」から25年、世界各地に移住した日本人は帰るべき国を持たない難民となっていた。帰属意識が希薄になる国民に危機感を持った首相の中田は…

小松左京の名に期待して読みはじめたのだが、どうも勝手が違うし、だいたいSFの雰囲気がしない。
異常気象や「異変」(日本沈没のことね)のシミュレーションと、それっぽい描写はあるのだが、政治や経済、移住先での苦難などにも描写はおよび、いまいちまとまりが無い。

あとがきに、小松左京が考えたテーマと構想を、著者をはじめとするプロジェクトチームで完成させたような記述が。
このへんがつまらない理由か。
みんなでやるのはいいけど、その分特徴のない小説になってしまうのかもね。

読んでいて興奮したのは、地球シミュレーターのリアルな描写と、首相と外相の論戦。
でも首相と外相の憂国の論戦も、「君が代」が落ちとは!
気持ちは分かるが、これを読者に納得させるには描写が足りなすぎるよ~。

日本沈没 第二部 小松左京,谷甲州の表紙
 

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イリアム/ダン・シモンズ

◆読んだ本◆
・書 名:イリアム
・著 者:ダン・シモンズ
・出版社:早川書房
・定 価:3,000円
・発行日:2006/7/31
     
◆評価◆
・怒濤のエンターテイメントSF度:★★★★★
・神話の神々→現実の存在→××存在度:★★★★
・どんどん広がる大風呂敷/なんでもありの大法螺度:★★★★★
・愛と勇気と正義の冒険度:★★★★
・第2部の「オリュンポス」はいったいいつ刊行されるんだ!度:★★★★★

◆感想◆
ホメロスによって描かれた「イーリアス」。この神々と人間達の壮大な叙事詩を観察するホッケンベリーは…

ハイペリオンシリーズで読者のハートをがっしり捕らえたシモンズの超大作。
これは読まなきゃ損!

物語は、人間と神々の織り成すトロイア戦争を俯瞰するような戦記物的展開と、木星の惑星に住むバイオメカニクス生物が、火星の異常量子撹乱を調査するという冒険談と、地球でほほんと暮らす旧人類の、地球世界探究の冒険談という3つのパートが交互に語られる展開。

なんだかさっぱり分からないだろうが、これが読みはじめたら止められない。
トロイア戦争のパートは、少々登場人物の多さにうんざりするものの、深まる謎、素早い展開、いきいきとした登場人物と、エンターテイメントSFとはこれだ! って感じ。

シェイクスピアを研究するバイオメカニクス生物(人間よりこの生物の方が人間ぽい)とか、ナノテクで武装された神々(なんだってできるぜ!)とか、無為徒食に過ごす旧人類を無気味に隷属するロボット(いったい彼等の意図は!)とか、それはもう呆れるほどファンタスティックな登場人物がいっぱい。

おまけに量子テレポテーション、地球を取り巻くリング都市、人体を再生する蘇生院と、SF的小道具も満載。
「あれっ」と思うこともなきにしもあらずだが、小さいことにはこだわらずに怒濤の物語世界にドバーっと流されながら読みふけるのが正解。

すべてのSFファンはお見逃しなく。
それにしても第2部はいつ刊行されることやら…。

イリアム/ダン・シモンズの表紙
 

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赤い指/東野圭吾

◆読んだ本◆
・書 名:赤い指
・著 者:東野圭吾
・出版社:講談社
・定 価:1,500円
・発行日:2006/7/25
     
◆評価◆
・感動のミステリー度:★★★★
・有能な刑事とおばかな刑事度:★★★
・少年犯罪と老人問題/悪魔の所業度:★★★

◆感想◆
前原昭夫は、嫁と姑の確執で家に帰るのが気重になっていた。急ぎの仕事でも無いのに残業をしていた前原は、「早く帰ってきてほしい」という妻からの電話に憂鬱になるが…

家族の確執、老人介護、青少年の犯罪と、今風のテーマを盛り込んだミステリー小説。
ひねりも落ちもきっちり決めているし、職人技!と感心至極。

でもちょっと引っ掛かる。
どこに引っ掛かるかというと、幼気な少女や母親をネタに泣かせるシーンを演出するあたりに、浅田次郎風のあざとさを感じてしまう。
可愛い自分の子供や、年老いた母親のことを考えてしまうような場面に、心を動かされないはずは無いし。
そこらがいまいち著者らしくないとこ。
もうひとつ。松宮という刑事が登場するが、この人物があまりにも素直で実直なバカすぎる点。
加賀刑事の有能さや落ちの印象を際立たせてはいるが、もう少し思慮深い設定でもいいんじゃないの。

そうはいっても、加賀刑事と父親の関係や政恵の行動は、人を思い遣る心に裏打ちされた、芯のしっかりした考えで、感涙にたえない。
たとえそれが他人からは変に思われようと、人を労る/労る気持ちを理解するための行為は、大切にしなければならないということだなぁ。

赤い指/東野圭吾の表紙
 

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