だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 最近は新旧歴史時代小説やエンターテイメント、ライトノベルにも手を伸ばして節操のない状態に。趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

マルドゥック・ヴェロシティ 1~3/冲方丁

◆読んだ本◆
・書 名:マルドゥック・ヴェロシティ 1~3
・著 者:冲方丁
・出版社:早川文庫
・定 価:各680円
・発行日:2006/11/15--11/30

◆評価◆
・近未来ハードボイルド小説度:★★★★★
・圧縮された展開とブツ切れの濃密文体度:★★★★
・暴力と信頼/恐怖と快楽/良心と虚無度:★★★★

◆感想◆
重篤な怪我を負った兵士に肉体改造を加える軍研究所。そこに収容されたボイルドは仲間を誤爆するフラッシュバックと麻薬中毒に苛まれていたが…

第24回SF大賞を受賞した「マルドゥック・スクランブル」の前日談。
「マルドゥック・スクランブル」の主役であるボイルドとウフコックがどのように生み出されてきたのかも分かってしまう、近未来ハードボイルド。

スピード感のある展開、ブツ切れで箇条書きのような濃密な文章、改造され戦闘に特化された登場人物達の戦い。いずれもユニークで翻訳ハードボイルド小説を読んでいるような味わいだ。

「マルドゥック市民の人命保護のため、違法な科学力の行使を認める法案=09法案」という名称のせいか、戦闘用として特化された登場人物が
 【ウフコック/どのような兵器にも変化することができる万能道具的存在/人格を得たネズミ】
 【クルツ/盲目の元狙撃兵/血中のワームを散布し数十ケ所の視界を同時に観ることができる】
 【レイニー/元斥候/無数の粒子状に変化する皮膚・筋肉組織/他人そっくりに化けることができる】
などのスーパーぶりのせいか、「サイボーグ009」を思い出す(っていっても知ってるのは中年以上ね)。

戦闘シーンやユニーク過ぎる登場人物にキレがあるうえに、彼等の内面も鋭くそしてウエットに描写。すぐれた冒険小説の感動に似た、篤いハートを感じさせるかたわら、とてつもない虚しさをもかもし出している。

少々中だるみの感はあるが、著者入魂の近未来ハードボイルドSFだ。

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誘拐の誤差/戸梶圭太

◆読んだ本◆
・書 名:誘拐の誤差
・著 者:戸梶圭太
・出版社:双葉社
・定 価:1,800円
・発行日:2006/11/30

◆評価◆
・警察小説度:★★
・激安犯罪者と激安警官度:★★★
・神の視点で語る少年は、著者の分身か?度:★★★

◆感想◆
少年レオは、小学校からの帰宅途中に近所の顔見知りに殺害され、ゴミの山に捨てられるが…

物語の展開だけを見れば、普通の警察小説か。
犯人の傍若無人ぶりや警官の捜査活動が描かれるが、そこにトカジ流激安人間感がかぶせられると、勢いB級エログロ暴力小説に変身。
今回はさらに、殺害された少年の魂が残り、登場人物の心を覗きながらの激安心理描写をするという新手法。なかなか芸が高級になっている。

著者の小説では、新聞沙汰になっている児童虐待やロリコン犯罪者や性的ジャンキーを連想させる登場人物が多いが、小説では強調されているとはいえ「こんな感じなんだろうな」と思わせる説得力が、微妙にある。
怖いのう。

ラストはいささか投げやり。
あるのなら本書の続きを読みたくなるような結末だ。

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