だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 最近は新旧歴史時代小説やエンターテイメント、ライトノベルにも手を伸ばして節操のない状態に。趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

ビザール・ラヴ・トライアングル/浅倉卓弥

◆読んだ本◆
・書 名:ビザール・ラヴ・トライアングル
・著 者:浅倉卓弥
・出版社:文芸春秋
・定 価:1,429円
・発行日:2007/6/15

◆評価◆
・ほのかな慕情&恋&想い度:★★★
・透明感溢れる文章度:★★
・現実とは繋がっていないどこか/繋がっているどこか度:★★

◆感想◆
ほのかな慕情をテーマにした、透明感とトワイライトな雰囲気の短編集。

子供や恋人や親を想う気持ちが、現実とは繋がっていない場所へと誘う。
ファンタジックで非現実的だけど、どこかで人はそんな情景を求めている、夢のような状態。
主人公達は、胸の内に抱える想いを実現させるように、そんな不思議な世界を垣間見、体験する。

著者と波長の合う、ロマンチックでセンチメンタル好きな方にお薦め。
個人的には最後の標題作が好きだ。
血の繋がっていない娘と、彼女が父親を想うという構図が、ありえないほど理想的だ。

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夜明けの街で/東野圭吾

◆読んだ本◆
・書 名:夜明けの街で
・著 者:東野圭吾
・出版社:角川書店
・定 価:1,600円
・発行日:2007/6/30

◆評価◆
・アッと驚くミステリー度:★★★
・アッと驚く不倫話し度:★★★★
・アッと驚く裏話度:★★★★

◆感想◆
「不倫する奴なんて馬鹿だ」と思っていた主人公の渡部だが、派遣社員として来た仲西秋葉と不倫関係に。思いつめた悩みがありそうな秋葉と、しだいに深い繋がりができ…

どうということのない、ありふれた不倫話しの導入部。いささか含蓄のある台詞まわしに感心したりもしたが、普通なら面白みをあまり感じないような展開なのに、ミステリアスなヒロインとこの先どうなるの?感により、くいくい読み進む。
さすがに読者の興味を引くのがうまい。

物語は後半からミステリー色を濃くしていくが、本格的なミステリーには程遠い。それよりも主人公達の不倫関係がどうなるかの方が興味のあるところ。
「赤い糸なんてものはないんだ… 赤い糸なんてのは、二人で紡いでいくものなんだ。別れずにどちらかの死を看取った場合のみ、それは完成する」
「結婚式は一日で終わる。失敗したって笑い話で済む。でも結婚生活はずっと続く。結婚を失敗するわけにはいかない」
何やら意味深な台詞が随所にあるところが、リアルで切実感100%。
ひょっとして著者にも?と思わせるほどの説得力。
この辺のディテールが、ラストのどんでん返しの効果にも。

ミステリーファンにはやや物足りないが、不倫中の男性には怖かったりほっとしたりおののいたりの336ページだっ。

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生還者/保科昌彦

◆読んだ本◆
・書 名:生還者
・著 者:保科昌彦
・出版社:新潮社
・定 価:1,600円
・発行日:2007/4/20

◆評価◆
・ホラー+ミステリー+サスペンス度:★★★★
・生還者たちに起きる戦慄の異変度:★★
・しだいに狂って行く恐怖度:★★★★

◆感想◆
奥秩父の山中にある温泉旅館に宿泊していた人々が、台風による山崩れで生き埋めとなる。4日後に救出された人たちは「奇跡的の生還者」と呼ばれたが、半年後、彼等に不審な事が起きて…

生き埋めになりながらも一命を取り留めた登場人物たちの、真っ暗やみの中での出来事と、半年後に起き始めた生還者の不審死が、交互に語られる展開。

生き埋めになった人たちの間で、いったい何があったのか!
葛藤の中で明らかになってゆく、生還者たちの過去の所業。
閉鎖された空間での、息詰まるサイコサスペンス、って感じの展開だ。

人物描写も平板ではないし、怒ったり詰ったり諌めたりと人間性がむき出しになって行く姿が、ドラマチック。

一方半年後のパートは、生還者の一人である図書館司書「沢井」の視点で語られる。
事故死した恋人を思う沢井は、彼女の死の責任を感じて内向的に。
さらに生還者が次々と不振な死を遂げていることを知り、言い様のない恐怖にかられ、死んだ原因を調べはじめる。

生き埋めになっている時「生還者」たちに何が起きたのかが明らかになって行くにつれ、今起きようとしていることがホラー&ミステリアスに展開!

自分ではさほどおかしいと思っていない司書「沢井」が、しだいにおかしくなって行き、果ては傍から見ると子供が泣き出すような面相にまでなってしまうという「狂気」の描写もいい。

沢井の事を心配する広中小絵(同僚の新人司書・童顔)は、彼のミスをかばったり食事を誘ったりとけなげに接近するのだが、沢井は取りつく島もない。
なんか彼女が可哀相に見えてくるが、アブナイ状態の沢井に好意を寄せる広中小絵も、ちょっとアブナイかもしれない。

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Self-Reference-ENGINE/円城塔

◆読んだ本◆
・書 名:Self-Reference-ENGINE
・著 者:円城塔
・出版社:早川書房
・定 価:1,600円
・発行日:2007/5/25

◆評価◆
・SF的不思議小話度:★★★
・エキサイティングな始まりと、観念的な結末度:★★★
・【アルファ・ケンタウリ星人】対【人にやさしい巨大知性体】度:★★★
・よく分かんない度:★★★

◆感想◆
ハードSFのようでファンタジー。妙に具体的なシーンがユニークかと思えば、とてつもなく観念的で抽象的な展開。不思議テイストのSF短編集。

生まれた時から頭の中に銃弾が入っていたリタ。彼女は未来から来る狙撃手に向かって、めったやたらと拳銃を撃ちまくる…

祖母の家を解体すると、床下から大量のフロイトが出てくるが…

八丁堀の巨大知性体の旦那の所に駆け込んだサブ知性体ハチは、染物屋のかかあのサブ知性体キヨが殺されたことを報告するが…


これからいったどうなるんだ!と、期待しながら読み進めると、だんだんトーンは抽象的/暗示的/観念的になってきて、「なんだかよく分からん!」状態に。
別役実の「虫づくし」(これは面白かったなぁ)みたいな、有りそうで無さそうな事柄を超絶テクニックで納得させてしまうという展開に似ているが、もうちょっと結末に工夫が欲しい。

遠い彼方の、はるか上の方に拡散していくようにも見えるが、なんかそんな気がするだけみたいな。
とてつもなくこんがらがった時空間と知性というものを背景/主題にしていれば、本書を受け入れるかどうかは、プロローグの冒頭のまま、ということ?
著者の波長と合うか合わないか?

やっぱり自分のイメージ力/想像力/理解力が足らんのだろうな。

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ドリームバスター4/宮部みゆき

◆読んだ本◆
・書 名:ドリームバスター4
・著 者:宮部みゆき
・出版社:徳間書店
・定 価:1,600円
・発行日:2007/5/31

◆評価◆
・ファンタジックアドベンチャー度:★★
・次々と襲いかかる試練度:★★
・青少年は困難を乗り越え大人になる!度:★★

◆感想◆
時間鉱山に残ったシェン。彼はキエとユキオのカップルと、ヒロム少年を助けることができるのか…

ドリームバスター3の続編。
時間鉱山に迷いこんだキエ、ユキオ、ヒロムと行動を共にし、そこから脱出しようというのが物語の骨子。
なんか今までのシリーズより、緊張感とリアリティに欠ける。
それなりのメリハリはあるんだが、展開が雑だなあぁ。

これはきっと著者自身に何かあるよな。
著者の身近なところで、ショッキングな事件でもあったんじゃないかと心配してしまう。

頑張れ「宮部みゆき」。 人生調子悪い時もあるさ。

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純愛小説/篠田節子

◆読んだ本◆
・書 名:純愛小説
・著 者:篠田節子
・出版社:角川書店
・定 価:1,400円
・発行日:2007/5/31

◆評価◆
・中高年の愛度:★★
・有り難迷惑/おせっかい/自己中心度:★★★
・愛と憎悪度:★★★

◆感想◆
中高年を主人公にした、愛とそこから派生する重たい感情を描いた短編集。

恋愛を第三者的に描いているところが、この短編集のユニークなところ。
二人だけの世界にのめり込んでいるカップルも、傍から見ればへんてこで愚かしいだけだったり。
しかし、当人に言わせれば、他人の忠告などよけいなお世話といった感じで。

「愛は盲目」ということで、取りあえず納得しそうな短編集。


印象的だったのは「鞍馬」という短編。

独身のまま実家に留まり、母親の介護をしてきた65才の女性。自分の人生を妹達と母親のために捧げたような彼女が、人生を賭けたような恋をする。

彼女の気持ちの動きと、彼女を心配する妹の感情が、微妙にねじれてズレている。
人の事を心配しているようで、実は自分の事しか考えられないのが、人というものなのか。

顛末も寂し気でありながら、それでも自分の気持ちを具体的に発露したいという主人公の執念みたいなものが伺えて、ちょっとびびる。

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