だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 最近は新旧歴史時代小説やエンターテイメント、ライトノベルにも手を伸ばして節操のない状態に。趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

サクリファイス/近藤史恵

◆読んだ本◆
・書 名:サクリファイス
・著 者:近藤史恵
・出版社:新潮社
・定 価:1,500円
・発行日:2007/8/30

◆評価◆
・自転車ロードレースミステリー度:★★★
・二転三転する結末度:★★★★
・迫真のロードレース競技度:★★★★

◆感想◆
自転車のロードレースチームに所属する白石。かつては陸上の選手だったが、ただ記録を目指すようなやり方に苦痛を感じていた。そこに巡り会ったのが自転車ロードレース。白石は「アシスト」とう走り方に強い魅力を感じる…

自転車競技のひとつであるロードレースを舞台にしたミステリー。
主人公の白石は自分がトップでゴールすることより、ひたすら走り、与えられた役目を果すことに喜びを感じる。
ロードレースのアシスト役にぴったりのモチベーションの持ち主だ。

誰もが総理大臣にないたいわけではない、ってことね。

この、仲間の為にただひたすら走るという気持ち、多くの読者に共感を得られそうだし、そこがこの小説のポイント。

チームのエースだろうと、それをサポートするアシストだろうと、チーム全体のために走る。そこには、互いの信頼関係が絶対条件だ。

後半の二転三転するミステリー仕掛けの展開は、スポーツマンの矜持を浮びあがらせるような、なかなか感動的な展開。

誰もが誰かのために走っているのだ。かっこいいぞ!

それに比べ、袴田は…
香乃の気持ちも、てんで分からん。
そんなすぐに、好きになるかっちゅうねん。

サクリファイス/近藤史恵の表紙
 

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転生/篠田節子

◆読んだ本◆
・書 名:転生
・著 者:篠田節子
・出版社:講談社ノベルス
・定 価:880円
・発行日:2007/10/4

◆評価◆
・甦った高僧:パンチェンラマ、ロードノベル度:★★
・甦った高僧:ハチャメチャSF度:★★
・甦った高僧:食い気と色気/高尚な思想度:★★★

◆感想◆
チベットのタシルンボ寺院に鎮座するパンチェンラマ十世のミイラ。人々が崇めるそのミイラが、突如甦る…

この著者は、時々訳の分からない小説を発表する。「ゴサインタン」とか「コンタクト・ゾーン」とか。
本書は「斉藤家の核弾頭」系の小説かと思うが、ちょっと飛び抜けてる。

なんたってミイラが甦る、それも防腐処理などされた上に金箔は貼られ、顔が描かれた姿そのままで。おまけに、バター茶をすすり、糞をすると言うのだからたまげる。
そんじょそこらのSFを超えた設定だ!
もとは高僧だというのに、モモという餃子に目がなく、すきあれば女の乳を揉み尻に触るという生臭ぶり。
イカシてるぜ。

そんな黄金のミイラことパンチェンラマ十世と、彼を助けよう?とする人たちの壮大??な旅が始まる。
いったい彼等は何を成し遂げようとするのか。
まったく予断を許さない展開だが、あんまりそれも気にならないという、駄作なんだか傑作なんだか、良く分からない小説だ。

自分は、33ページの「やだ」という台詞に大笑いし、本書をお笑い小説として楽しんだげど。

転生/篠田節子の表紙
 

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追伸/真保裕一

◆読んだ本◆
・書 名:追伸
・著 者:真保裕一
・出版社:文芸春秋
・定 価:1,429円
・発行日:2007/9/15

◆評価◆
・世代を超える女性の因果度:★★★
・恋文度:★★★★★
・良い人度:★★★

◆感想◆
ギリシャに単身赴任中の夫に、妻から手紙がくる。そこには悩んだ末、離婚の決意をした妻の心情が吐露されていた…

妻と夫の間で交わされた、手紙の文面だけで物語が展開するという構成。始めは「こんなに筆まめな夫婦なんて、明治時代じゃあるまいし、いないよなぁ」と感じながら読み進む。なんだか手紙の内容も陳腐だし。
でも中盤の、妻の祖父母の物語り(これも手紙文で構成)に繋げるには、これしかないのかと、やや納得。

メインは、この妻の祖父母の物語り。
殺人の容疑で逮捕されながら、頑に口を噤んでいる祖母春子と、彼女の無実を信じ懸命に真相を探ろうとする祖父誠治の姿が、互いの手紙文で語られる。

しだいに明らかになる事実と、それに伴って現われる二人の思い。
この辺が本書のキモとなる所だ。

春子の、美しく夫や子供のことを想う気持ちと、それに相反する刹那的行動。
不幸な過去がその背景とはなっているが、手紙の文面から伺える春子の性格とは相容れないものが。

でもしかし、春子と誠治の、互いに思いやる気持ちはヒシヒシと伝わり、気持ちを揺さぶられるシーンも。
こんだけのハートを持っていてなお、ささいな悪戯心が最悪の事態を招くようなことになるのは、とても悲劇的だ。

なんか納得できない。
誰かをもっと悪いやつにしてくれ。

追伸/真保裕一の表紙
 

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約束の地で/馳星周

◆読んだ本◆
・書 名:約束の地で
・著 者:馳星周
・出版社:集英社
・定 価:1,400円
・発行日:2007/9/30

◆評価◆
・ダークパワー爆縮度:★★
・悲しく寂しい主人公達度:★★
・わやだ度:★★★

◆感想◆
北海道を舞台にした、悲しく寂しい登場人物たちの物語。
それぞれに鬱屈や悲しみを抱えながらも辛抱して生きていくが、どこかでその箍が外れてしまい…

今までの著者の小説であれば、ここからダークパワーが炸裂しまくっていたのに、この小説は暗さがドヨ~ンとよどんでいる。

暗いぞ馳星周! 読んでるこっちも凹んでくるぜ!!

生きる希望とか夢とか、大金持ちになるとか、美女をはべらして焼肉を食べるとか(ちょっと違うか)、そういった前向きモリモリ人生とは真反対の内容で、寒い冬に独り四畳半のアパートで読み始めたら、田舎に帰りたくなること請け合いだ。
(暗~く沈み込みたい気分の時に読むのにも請け合いだ。)

読み時を間違えないようにしないといけない。

約束の地で/馳星周の表紙
 

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交渉人 遠野麻衣子・最後の事件/五十嵐貴久

◆読んだ本◆
・書 名:交渉人 遠野麻衣子・最後の事件
・著 者:五十嵐貴久
・出版社:幻冬舎
・定 価:1,700円
・発行日:2007/9/10

◆評価◆
・スリルとサスペンスとパニック(やや大袈裟)度:★★★★★
・アルカイダとオーム真理教とテロを連想度:★★★
・安心して読める度:★★★★

◆感想◆
警視庁広報課の遠野麻衣子に、シヴァと名乗る人物から携帯電話がかかる。シヴァは、地下鉄爆破テロの首謀者として逮捕された、宇宙真理の会の大善師御厨徹を解放するよう要求。解放されない場合、仕掛けた爆弾を爆破すると…

シヴァと名乗る人物からの無謀な要求、これに対応するため組織された警視庁巨大捜査本部。
”犯人は誰なのか!” ”爆弾はいったいどこにあるんだぁ!”の、スリルとサスペンスの大都会爆弾テロパニック小説。

登場する人物や組織、爆弾テロなどは、どこかで見聞きした事件を連想させ、驚きや新鮮さはないけど、それをうまく構成し描写するのが著者のテクニック。
飛び抜けて奇抜だったり、ユニークな描写だったりする訳ではないが、読者を飽きさせずに読ませるのは上手だ。
癖のない文章も読みやすいし。

いささか御都合主義な部分はあるにせよ、「ダイハード」ばりのハラハラと、「スピード」ばりのドキドキと、リアル事件のパニックを想起させるノンストップサスペンス。

食事と寝る時間を忘れて、読みふけること間違いなし。

トイレだけはちゃんと行ってね。

交渉人 遠野麻衣子・最後の事件/五十嵐貴久の表紙
 

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下流少年サクタロウ/戸梶圭太

◆読んだ本◆
・書 名:下流少年サクタロウ
・著 者:戸梶圭太
・出版社:文芸春秋
・定 価:1,200円
・発行日:2007/9/15

◆評価◆
・下流小学生の日常度:★★
・転がるように下流度:★★
・下流青年のできるまで度:★★

◆感想◆
トカジ流爆裂の下流社会風刺小説。
主人公が小学校5年生というところが、パンチが効いている。
でも読んでいて小学生のようには見えない。せめて中学生ぐらいの下流さ具合。

気になったのは、真直ぐ走れなかったり、ボタンをとめられない子供の描写。
本当ぽくて、怖いぞ!!
とりあえず自分はちゃんとボタンをとめられるけど、たまに掛け違ったりする。
最近走ることは少なくなったが、真直ぐ歩くのも大丈夫だ。
たまに平らな所でけつまずくが。

何はともあれ、常識的なことがちゃんとできないというのは、下流の始まりなのか。
ちょっと自分が心配だ。

下流少年サクタロウ/戸梶圭太の表紙
 

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