だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 最近は新旧歴史時代小説やエンターテイメント、ライトノベルにも手を伸ばして節操のない状態に。趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

新世界より/貴志祐介

◆読んだ本◆
・書 名:新世界より
・著 者:貴志祐介
・出版社:講談社
・定 価:上1,900円 下1,900円
・発行日:2008/1/23

◆評価◆
・ダークファンタジー(B級エンターテイメント)度:★★
・血塗られた未来史(異種格闘技+魔女狩り風)度:★★
・怒濤のストーリー(勢いはある)度:★★★★★

◆感想◆
1000年後の日本。子供達は呪力を強化し自分のものとすることが教育の一環となっていた。早季と仲間達は、ゲームや野外活動を体験しながら呪力の訓練をしていたが…

1000年後の日本は、呪力といわれる超能力をもつサイキックが、後退した文明の中で平和に暮らそうとしている。しかしその平和の陰には、恐ろしいからくりがあった。
早季達は学校での出来事や好奇心から、知ってはいけない呪力社会の裏側を知る。そしてさらに!

大変力の入った怒濤のエンターテイメント、と言いたいところだが、いまいち展開がギクシャクし物語の整合性もとれてなく、新人の小説みたいな感じだ。
物語世界を構築するために、様々な小道具を配置したり、登場人物や文化的な側面に工夫をこらしているが、あちこちにほころびが。

物語自体は愛と勇気の冒険小説風で、一気に読ませる力は十分なんだけど、「この設定って矛盾してない?」「それはいくらなんでもダメだろう」と突っ込みを入れたくなる所が多くて、その度に物語の勢いが削がれてしまう。
気にしなければいいんだけど、ちょっと見過ごせないよなぁ。

著者の頭の中ではきちんと整合性のとれた物語となっていても、読者がそれに納得するかどうかは読者の感性。
ファンタジーって、むづかしいね。

でも「そんな細かいところは気にしないぜ、ドバーッと行こうぜドバーッと」という豪放磊落なタイプの読者には超おすすめだ。

新世界より/貴志祐介の表紙
  

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ダンシング・ヴァニティ/筒井康隆

◆読んだ本◆
・書 名:ダンシング・ヴァニティ
・著 者:筒井康隆
・出版社:新潮社
・定 価:1,400円
・発行日:2008/1/30

◆評価◆
・実験的後半生回顧録度:★★★
・繰り返される夢の中の夢の中度:★★
・人生は走馬灯のように度:★★★

◆感想◆
いきなりの反復文章に読む方もそれなりの覚悟を決めて、久しぶりの著者の実験的小説を堪能。
なんだか最近の著者の小説は、老いや死といったものがテーマになっていて、読む方も昔みたいに若くないもんだから、それなりにリアルに感じる部分もあった りして、やや寂しくなる。
なんだか私小説を読んでいるような感じだし。
おまけに著者のあったかもしれない半生を追体験している風にも読める。

なんか暗い感じの言い回しになったが、小説自体は相変わらず(?)のブラックでスプラッターなシーンや、反復されるシーンの微妙な違いと映像的な文章の編 集があったりして、とても前衛的だ。
実験的なのにいぶし銀の味わい。すごいぞ。

毎日どうやって楽しようかと考えている自分とは、大違いだ。
自分と著者と比較しようとすることじたい、無謀かもしれないが。
(ステッキで殴られそうだ)

ダンシング・ヴァニティ/筒井康隆の表紙
 

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黄金の王 白銀の王/沢村凜

◆読んだ本◆
・書 名:黄金の王 白銀の王
・著 者:沢村凜
・出版社:幻冬舍
・定 価:1,600円
・発行日:2007/10/25

◆評価◆
・異世界ファンタジー(武器は刀と槍ぐらいの世界)度:★★★★★
・「この血に恥じぬよう生きる」二人の王度:★★★★★
・平和は絶え間ない苦渋の上に度:★★★★

◆感想◆
一つの王座を巡り、二つの一族による長い戦いが続いている翠国。しかしこのままではこの国が滅んでしまうと危惧した敵対する二人の王は、国に平和をもたらそうと密約を交わす…

これは面白い。
十二国記みたいな異世界ファンタジーで、描かれるのは若い二人の王が国を平和に導こうと苦悩する姿。
しかし平和を取り戻すには、予想以上の苦難が!

肉親を殺された恨み。覇権を握ろうとする欲。他者を信じることの難しさ。
さらに一方は現王だが、もう一人は囚われの身の偽王。
自分たちの行っていることに、未来はあるのか?
相手を殺してしまった方が、近道ではないのか?
様々な苦難と危機を乗り越えながら、国の平和を築こうとする姿が描かれる。

やや青臭く青春小説風なところもあるが、人のことを思いやり強く生きようとする二人がまぶしいぜ!
薄汚れちまったオヤジのハートに、久々のクリーンパンチだ。

しかし深く共鳴するのは、平和は自らを殺すような覚悟がなければ成り立たないのかもしれないという著者のスタンス。
やっぱり誰かを悪者にしないと、世間/国民は納得しないのか?
国はもっと教育や情報公開に力を入れるべきで、安易な方法に逃げちゃいけないんじゃないのか?
とか、いろいろ考えちゃう余韻も含めて、ほろ苦さと青臭さとほろっとくる温かさのある物語だ。

黄金の王 白銀の王/沢村凜の表紙
 

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ゴールデンスランバー/伊坂幸太郎

◆読んだ本◆
・書 名:ゴールデンスランバー
・著 者:伊坂幸太郎
・出版社:新潮社
・定 価:1,600円
・発行日:2007/11/30

◆評価◆
・スリルとサスペンスの逃亡劇(映画「逃亡者」みたい)度:★★★★
・モチーフはケネディ暗殺事件(ちょっと喜劇的)度:★★★
・めまぐるしい展開とユニークな登場人物(やや安易な感じ)度:★★★

◆感想◆
野党から初めての首相となった金田。地元仙台でパレードを行っている時、ビルの屋上から降下してきたラジコンヘリが首相の乗るオープンカーに近づき爆発する!

巨大な組織により金田首相暗殺の犯人に仕立て上げられた主人公青柳の、スリルとサスペンスの逃亡劇がはじまるっ!!
身に覚えのない証拠、過去の不可解な出来事、友人達のおかしな言動。
オズワルドがケネディ暗殺の犯人に仕立て上げられたように、青柳は首相暗殺の犯人にされそうになる。
ぎりぎりで官憲の手を逃れながら、どうやってぬれぎぬを晴らそうかと思案する青柳は、まるでドラマ「逃亡者」のようだ。

めまぐるしい展開とアクション、巧みな時間構成、ユニークで男気のある登場人物たちとエンターテイメントしているが、ややつらいシーンも随所にあったり(伏線の数々はあざといし、もうとっくに捕まってもおかしくないのに捕まらないのが変だし)。
そんなつらいシーンもあるが、読み始めたらやめられない勢いはジェットコースター並みだ。

ゴールデンスランバー/伊坂幸太郎の表紙
 

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