だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 最近は新旧歴史時代小説やエンターテイメント、ライトノベルにも手を伸ばして節操のない状態に。趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

南極(人)/京極夏彦

◆読んだ本◆
・書 名:南極(人)
・著 者:京極夏彦
・出版社:集英社
・定 価:1,900円
・発行日:2008/12/20

◆評価◆
・ギャグミステリー度:
・作り込まれた内容と装丁度:★★
・「ビデヨ」に大笑い度:★★★★★

◆感想◆
新宿鮫」「デスノート」「探偵ガリレオ」などのベストセラー小説をもじった?痛快ギャグ小説。
「どすこい(仮)」にも感じたけど、著者のギャグ小説はあんまり面白くないなあ。
普通にB級小説であればいいんだけど、A級の完成度や自虐的ギャグやメタ小説的諧謔を入れ込んでるせいか、B級なのに完成度が高くて笑えないんである。

著者は笑かそうとかあんまり思っていないのかも。
笑わすより「本を造る」事に夢中のようにみえる。
だって、ページの紙質や書体を変えたり、段組みを変えたりしているし。
スピンだって4本も付いているという凝りよう。
ページ数の文字だって作っちゃうこだわり。

そんな本に対する「愛」を感じながらもギャグには笑えなかったんだが、唯一大笑いしたのが「ビデヨ」という言葉。

半分寝ながら読んでる時、この言葉に行き当たり、爆笑してしまった!
そのまま5分くらいはクスクス笑いが止まらなかったぞ。

「ビデヨ」「ビデヨ」「ビデヨ」

まだ頭の中を「ビデヨ」がぐるぐる回って、クスクス笑ってしまう。
笑いのツボにはまった!



本の名称    本の名称
大阪府立中之島図書館


「本」と一口にいうけど、各部の名称がちゃんとあるんだよね、当たり前だけど。
「ノド」とか「そで」とか「チリ」とか。

一番気に入ってる呼び名は「腰巻」。

本を読み終わると、書店てつけてくれたカバーと腰巻を外して書棚に整理するんだけど、この腰巻を外す瞬間が「読み終わった!」という達成感を集約した感じで、なんか嬉し清々しいんだよな。



南極(人)/京極夏彦の表紙
 

◆他サイトの感想◆
uruya の日記
読めば京


テーマ:読書感想文,おすすめミステリー小説,本 - ジャンル:小説・文学,本,感想,ミステリー

判決の誤差/戸梶圭太

◆読んだ本◆
・書 名:判決の誤差
・著 者:戸梶圭太
・出版社:双葉社
・定 価:1,600円
・発行日:2008/12/21

◆評価◆
・B級法廷サスペンス度:★★
・B級人間ドラマ度:★★
・B級裁判員制度の問題点度:★★

◆感想◆
新たにはじまる裁判員制度をテーマにした、トカジ流法廷サスペンス。
「12人の怒れる男」をメチャクチャに安く、低レベルにした感じだ。

でもなんか違う。
中盤、もっともらしい社会批判めいた文があったり、以前のようなぶっ飛んだ激安ぶりが見られなかったり、中途半端にシリアスだったり。
最盛期の激安小説に比べれば、30%くらいの激安度だ。

なんかあったのかな。
くたびれてきた?
いくらB級激安小説っていったって、パワーがなければ書ききれないもんな。



裁判員


冒頭で裁判員として適格かどうか、主人公が裁判長と面接するシーンがある。
いくつもの質問をされるんだが、これって本当の事なのかなあ。
主人公が裁判長に訊かれるのは、

 ブログはやってますか
 不倫してますか
 すぐにカッとなるほうですか
 ホラー映画は観ますか
 未成年の女子は好きですか
 ドン・キホーテにいきますか

などなど。

適格かどうかの面接はあるだろうけど、まさかドン・キホーテに行くか行かないかで決めはしないだろう。

しかしどうやって適格者かどうか見極めるんだ?
裁かれる方だって、この小説に登場するような裁判員じゃあ不安だし、犯罪者がどんどん無罪になったり、逆に冤罪が増えたりしないのか?



判決の誤差/戸梶圭太の表紙
 

テーマ:読書感想文,おすすめミステリー小説,本 - ジャンル:小説・文学,本,感想,ミステリー

約束の地/樋口明雄

◆読んだ本◆
・書 名:約束の地
・著 者:樋口明雄
・出版社:光文社
・定 価:2,300円
・発行日:2008/11/25

◆評価◆
・山岳冒険動物小説度:★★★★★
・巨大クマ「稲妻」とカガミジシ「三本足」との死闘度:★★★★★
・自然と生きる猟師度:★★★★★
・環境問題とか殺人事件とかベアドックとか度:★★★★

◆感想◆
キャリア官僚として各地に出向してきた七倉が、新しく赴任を命じられたのは八ヶ岳市の野生鳥獣保全管理センターだった。個性的な管理センターの面々にとまどう七倉だったが、さらに伝説的な巨大クマ「稲妻」が人を襲うという事件が・・・

これは面白い!
今年一番面白い本だ! って、ついこないだも「オリンピックの身代金」の感想でも書いたような記憶が・・・
年末だから、各出版社が「これだ」という小説を発行してるんだろうな。

物語は、害獣被害から人々を守り、かつ野生動物との共生を図ろうとする環境省の出先機関「野生鳥獣保全管理センター」に、新たに赴任してきた七倉がメイン。
キャリア官僚が、昔ながらの慣習を固持する猟師たちや、住民を脅かす獣たちと悪戦苦闘するうち・・・という展開だ。

さらに、昔気質なクマ猟師たちとの軋轢。
環境問題で対立する市長と住民、研究者。
野生獣を守ろうとする動物愛護団体。
七倉の娘、羽純のいじめと大人社会。
などなどが絡み合って、奥行きのある物語になっている。

が、キモとなる登場人物(登場動物?)は、「稲妻」とよばれる巨大クマと「三本足」とよばれるイノシシ。

食料の少ない山から、里に下りてきた巨大獣。
なんたってちょっとやそっとじゃあ死なないんだからスゴイ。
「三本足」とよばれるイノシシは、カガミジシとも呼ばれ、松ヤニと泥を躰じゅうに塗りたくってテカテカになってる。そのため弾丸すらはじいてしまうというのだ。
おまけに巨大獣は、生き抜くための知恵と知性まで感じさせるというから、もう半分神格化された存在という設定だ。

またそれを追う猟師も深い。
特に戸部徹太郎という寡黙な老猟師。
かつて襲われたこともある「稲妻」をしとめる事が、自分の人生のような猟師。
巨大獣とシンクロする戸部徹太郎の生き様が見事だ。

この「稲妻」「三本足」と猟師たちとの死闘が圧巻。

山岳冒険小説や動物モノの小説が好きな方には絶対オススメだ。
(西村寿行「風は悽愴」に感動した方は特に!)



081210.jpg
NPOピッキオ/野生鳥獣保全管理センターのモデル:見ると小説の理解がより深まる



赴任当初は浮いていたキャリアの七倉も、時間とともに山間の管理センターが似合う男に変貌する。
特に犬が苦手だった七倉が、クマ対策犬のダンと心を通い合わせるようになって行くところがステキだ。
自然が豊かな山村で犬とともに暮らす生活。
いいなあ、やってみたいなあ、と想像するくらいでいいんだろうな。
実際にやったらとんでもなく大変だろう。


約束の地/樋口明雄の表紙
 

◆他サイトの感想◆
森乃屋龍之介の日常



テーマ:読書感想文,おすすめミステリー小説,本 - ジャンル:小説・文学,本,感想,ミステリー

オリンピックの身代金/奥田英朗

◆読んだ本◆
・書 名:オリンピックの身代金
・著 者:奥田英朗
・出版社:角川書店
・定 価:1,800円
・発行日:2008/11/30

◆評価◆
・「天国と地獄」のような社会派ミステリー度:★★★★★
・「ジャッカルの日」のようなスリルとサスペンス度:★★★★★
・「蟹工船」のようなプロレタリア文学度:★★★★

◆感想◆
昭和39年、オリンピックを目前に控えた慌ただしい東京で爆破事件が起きる。犯人は「草加次郎」を名乗り、東京オリンピックを妨害するという犯行声明文が警察に送りつけられた・・・

これは面白い!!
昭和39年という、日本が戦後を脱却し高度成長期にあった東京を舞台背景にして、オリンピクという大イベントを妨害しようとする犯人と、その犯人を追う刑事たちのスリルとサスペンスのミステリー小説だ。

前半は犯人の東大生島崎が、工事現場で亡くなった兄の生活を弔うように追体験するシーンがメイン。 オリンピック開催にむけて突貫で行われる土木工事。そこで過酷な労働に従事させられる出稼ぎ労働者。
東大でマルクス主義を学んでいる島崎は、そんな資本家に搾取されてる労働者の中に身を置き、しだいに資本主義の象徴としてのオリンピックを妨害しようと考えるようになる。

蟹工船のようなプロレタリア文学か?」と思わせる前半だが、それがまたけっこう興味深い。
ちょい前の中国のオリンピックを想像させたり、現在の不景気な日本を連想させたりするし、そこに爆破事件をカットバックさせることで、島崎の思考がリアリティのあるものになっている。

後半は黒澤明「天国と地獄」のような構図と展開、フォーサイス「ジャッカルの日」のようなスリルとサスペンス。
犯人の東大生島崎と、刑事の落合の視点で交互に描かれる展開は、手に汗握るぞ!

あんまり書いちゃうと興をそぐだろうから、書かないけど・・・

 犯人島崎のストイックな性格と思想。
 当時の日本社会を見事に切り取った背景描写。
 犯人と警察の駆け引き。
 大捜査網の中の刑事と公安の確執。
 そしてオリンピック開催という時限付。

もう嫌でも盛り上がる仕組みだ。

なにはともあれ、今年一番面白い小説だ!
「このミス」1位の「ゴールデンスランバー」より俄然面白いっ!



ホンダ・S600
ホンダ・S600


本書の中には「ホンダS600」「シャボン玉ホリデー」「反代々木派」などの当時の文化、サブカルチャー用語が沢山出てくる。
これがまた、物語に奥行きを持たせているし、その頃に青春をすごした世代の方には大きな魅力となるだろう。

(ひょっとするとこの小説は、著者の自己批判なのか? 島崎のストイッックさと過酷な労働の従事。デモは都会の若者の盆踊り、とあっさり切り捨てたりするし)

そんな当時の言葉の中で「C調」というフレーズだけが意味不明だった。
調べると「調子いい」という事なのね。

当時も今も、暗号めいたフレーズをいっぱい作っていたという事だ。
フムフム。



オリンピックの身代金/奥田英朗の表紙
 

◆他サイトの感想◆
最後の本たちの国で
MOONGLOW
棒日記V -I will carry on-


テーマ:読書感想文,おすすめミステリー小説,本 - ジャンル:小説・文学,本,感想,ミステリー

追憶のカレン/茅田砂胡

◆読んだ本◆
・書 名:追憶のカレン
・著 者:茅田砂胡
・出版社:中央公論新社 C☆NOVELS
・定 価:900円
・発行日:2008/11/25

◆評価◆
・アクション少女SF度:★★★
・シェラの想い度:★★
・分かりやすい構図度:★★★

◆感想◆
手芸部の女子たちとセントラルの展示会に行ったシェラ。そこで他校の生徒にある依頼をされ、彼女に同行するが・・・

クラッシュ・ブレイズ12巻の本書では、シェラが行方不明に!!
シェラの行方を捜査するリィとルウは、辺境の大金持ちにたどり着く。
いったいシェラはどこに?
といった内容のアクション少女SF小説だ。

ややご都合主義だが、面白いから許せる。
手芸とか女子のファッションとか、さっぱりだけど、読み飛ばせば問題ない。
いつも通りの勧善懲悪ぶりも、水戸黄門的安心感がある。

だけど、シェラの気持ちだけは、おじさんには100%理解できない。
美しい少年同士じゃなくて、美しい少年と少女じゃだめなのか?

うーむ、困った困った。



少女小説
さっか道 第五回 少女小説に対する苦悩と妥協



本屋に行くと「追憶のカレン」が平台に山積みになっている。
書店の売上げランクも1位だ。
自分のようなオヤジも、けっこう買ってたりするのかなあ。

前は少女小説を書店で買うのは、変なオヤジと思われそうで抵抗があったけど、最近は平気だ。
これは慣れなのか。
それとも変なオヤジになってしまったからなのか。



追憶のカレン/茅田砂胡の表紙
 

◆他サイトの感想◆
booklines.net
Atelier.Panie~プチッコ放置常習犯~


テーマ:読書感想文,おすすめミステリー小説,本 - ジャンル:小説・文学,本,感想,ミステリー

あねのねちゃん/梶尾真治

◆読んだ本◆
・書 名:あねのねちゃん
・著 者:梶尾真治
・出版社:新潮社
・定 価:1,500円
・発行日:2007/12/24

◆評価◆
・ダークファンタジー度:★★
・毒のある児童書度:★★★★
・離人陰陽丸度:★★

◆感想◆
幼稚園児の頃、人見知りだった中原玲香。彼女のそばにはあねのねちゃんがいた。玲香を励まし遊んでくれた、玲香だけのあねのねちゃん。いつしか居なくなったあねのねちゃんが、失恋した大人の玲香の前に現れる・・・

孤独な子供が作り上げる想像上の友達:イマジナリー・コンパニオン。
それをモチーフにしたファンタジー小説。

題材や雰囲気から、少女向けのファンタジーかな?とか思いながら読み進めると、意外に毒のあるダークな展開に。
控えめな主人公の恋愛観や親との葛藤に、ダークファンタジックバトルも盛り込まれ、けっこう刺激的な内容だ。

それでも全体的には若年層向きに書かれている。
若い女性にオススメかな。



イマジナリー コンパニオン
こんなイマジナリー コンパニオンが理想だ!



前に心理学者のゆうきゆう「癒しのスーパー心理術:EB」とう、悩んでる人向けの心理学書を読んだ。
この中に 【自分の中の「理想の存在」EBとの会話で、周囲に流されず、強く、魅力的になるという 心理学のテクニック】 が紹介されていて、興味深かった記憶が。

「あねのねちゃん」を読んでいて思ったんだが、このEBというのは理想的なイマジナリー・コンパニオンをアクティブに作り出すっていうことだな。

前向きで理想的な人格のイマジナリー・コンパニオンを作りあげれば、理論武装とは別のタイプの心理的武装が可能という事だ。

それが良い方に機能するか悪い方に機能するかは「あねのねちゃん」と同じように、イマジナリー・コンパニオンを作った自分次第ということになるのか?



あねのねちゃん/梶尾真治の表紙
 

◆他サイトの感想◆
さすが人気作家のカジシン、グーグルで検索すると新刊なのに取り上げているサイトがいっぱいあるっ、と思ったら、本書は去年出版されてたんだ。
今年の12月と勘違いした。
12月24日発行って、随分とサバをよんだ日にちだと思ったんだよなあ。

コリちょこ
夜思比売の栞
幻想の殿堂
ぞうの耳 -本に埋もれて暮らしたい-

テーマ:感想,おすすめミステリー小説,本 - ジャンル:小説・文学,本,感想,ミステリー

FC2Ad