だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 最近は新旧歴史時代小説やエンターテイメント、ライトノベルにも手を伸ばして節操のない状態に。趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

奇跡の脳/ジル・ボルト・テイラー

◆読んだ本◆
・書名:奇跡の脳
・著者:ジル・ボルト・テイラー
・定価:1,700円
・出版社:新潮社
・発行日:2009/2/25

◆おすすめ度◆
・脳卒中から回復した脳科学者の実体験ルポ度:★★★★
・右脳と左脳の思考度:★★★★★
・「悟り」の脳科学からの理解度:★★★★★

◆感想◆
脳科学者である著者が、脳卒中により左脳の一部機能を麻痺させながら、8年の歳月をかけて回復。その闘病を通して、脳の不思議さと精神作用を綴ったノンフィクション。

先日NHKの衛星放送で、著者のインタビュー番組が放映され、いたく興味をそそられる。
著者は左脳に脳卒中をおこし、感覚や運動機能がジワジワと蝕まれる中、とても幸せで宇宙の中に溶け込んでいる感覚、涅槃の境地にいるようだったと話しているのだ。
本書を読むとそのあたりの経緯や認知が、脳科学的に、また右脳的に説明されている。

著者は脳内出血により、左脳の言語中枢や方向定位連合野などに損傷を受ける。
言葉や文字が認識できなくなり、自分の身体と外界との境界がなくなり、過去の記憶や時間感覚までもが把握できなくなる。
そして健全な右脳だけで世界を認識するようになると、心地よい安らぎの世界が現れてくるという。

これは興味深い。

過去の人間関係や自分の人生、経験、善悪の判断、そういたものから解放されるというのは、まさしく仏教の求めるものでもある。
左脳の思考を左脳で制御し「悟り」を得ようとする仏教と、左脳に起きた脳内出血のため「悟り」を体感した著者。

「悟り」「涅槃」といった感覚を左脳で(アカデミックに)理解しようとする方にはうってつけの面白い内容だ。

さらに、左脳が引き起こす「不安」「怒り」「恐れ」といったマイナスの思考を、どうやって右脳的な安らかな思考に切り替えるかも著者は言及。
脳卒中を克服した体験のなかには、思考がマイナスの感情ばかりの時期もあっただろうと想像するが、それを「涅槃」経験を糧にして思考方法をプラスに切り替えてきたと想像する。
なんだか科学者による宗教書のようだが、実体験に基づいているだけに説得力がある。

しかしあれだなあ、著者は左脳の一部を損傷して「悟り」を経験したが、仏教僧はそれを一種の思考によりなそうとする。
考えようによってはスゴイことだ。


座禅
坐禅。澤木興道/ウィキペディア


楽しい生活をおくるには、心の平安も必要だ、と、ちょっと座禅とかにも興味を持ちはじめた今日この頃。 王貞治だって座禅を組んだりして迷いを吹っ切ったりしてたみたいだし。

ところがこれがムヅカシイ。

無心になるどころか、いらん妄想が爆走しはじめて、座禅する前より煩悩だらけになってしまうのだ。


奇跡の脳
奇跡の脳Jill Bolte Taylor 竹内 薫

おすすめ平均
stars素晴らしさと疑問
stars図書館のすぐれちゃんも推薦!

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◆他サイトの感想◆
今週の本棚/毎日新聞
夢のもののふ


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三匹のおっさん/有川浩

◆読んだ本◆
・書名:三匹のおっさん
・著者:有川浩
・定価:1,524円
・出版社:文芸春秋
・発行日:2009/3/15

◆おすすめ度◆
・3人のおっさんがカッコいい度:★★★★★
・2人の高校生の恋愛がステキ度:★★★★★
・家族みんながあったかい度:★★★★★

◆感想◆
むかしは悪ガキ仲間。今は還暦のおっさんたち3人が、町内の悪者たちを懲らしめるという、ユーモア勧善懲悪小説。

これは面白いっ!

まず主人公の3人のおっさんがカッコいい。
還暦を迎えようとする歳だけど、町内で起きる事件を3人で解決しようと自警団を結成。
それぞれ剣道だったり柔道だったり機械いじりだったり、得意分野を武器にして、町内で悪さをする悪人をバッサバッサと退治する。
コミカルでユーモアがあって人情味のある展開は、水戸黄門を見ているみたいに笑えて泣けて痛快だ。

さらに彼らの孫祐希と娘早苗の高校生コンビも素敵だ。
爽やかな恋愛とほろ苦い青春。
チャラチャラしているけど、洞察力のある祐希。健気でおしとやかな早苗。
高校生の理想的な淡い恋みたいな。
うーむ、早苗ちゃん、嫁に欲しいぞ。

脇役である家族もいい味出してるし、ほろっとくる人情話や憤りを感じる社会問題なんかもテーマにして、ろうにゃくなんにょにオススメの面白小説だ!


三匹のおっさん
三匹のおっさん
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有川 浩
文藝春秋
売り上げランキング: 380,635


以前著者の書いた「海の底」や「図書館戦争」を読んだ時には、ちょっと青臭かったり少女小説しているところになじめなかったが、本書はそれが抑えられていていい。
読者のターゲットを若年層だけにしぼらないようにしたな。

有川浩、なかなかの技量の持ち主だ。


◆他サイトの感想◆
三匹のおっさん 有川浩/文芸春秋
たいむのひとりごと
森の中の10月
オイラ流日々道楽

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毒殺魔の教室/塔山郁

◆読んだ本◆
・書名:毒殺魔の教室
・著者:塔山郁
・定価:1,400円
・出版社:宝島社
・発行日:2009/2/20

◆おすすめ度◆
・ミステリー小説度:★★
・犯人は誰?動機は何?度:★★
・行間まで全部書く丁寧さ度:

◆感想◆
小学校6年の男児が同級生を毒殺し、3日後に犯人も自殺するという事件が起きた。30年が過ぎ、犯行の詳細や動機を調べようと当時の同級生たちに話しを聴くと・・・

人によってちょっとずつ違って見える真実。
人の数だけあるように見える事実。
当時の同級生たちのインタビュー等で構成される、「薮の中」式ミステリー小説。

出だしは緊張感もあり、いい感じで読みすすめるが、だんだん文章のくどさに読書意欲が減退。
文章自体は流れるようにスムーズで引っかかるような事はないし、物語も破綻することなくきちんと展開。
しかし台詞や心理描写を書き過ぎだよね。
この著者、女性だろうなあ。
丁寧すぎるのかな。
なんか、近所の奥さんの井戸端会議みたいな・・・

とか考えて読んでるうち、後半に突入。
すると断然ミステリーっぽくなって、面白い展開に!

でも最後まで冗長さが気になってしまった。
半分くらいの分量になれば、展開も速くて奥行きのあるミステリー小説になったかも。


ヒ素
ヒ素/ウィキペディア


無限回廊」という実際にあった事件をとりあげて、その真相に迫ろうというサイトがある。
これを読むと、小説より奇なりな事件が沢山。

毒殺魔の教室」ではヒ素が登場するけど、実際の事件でもヒ素はいっぱい使われている。
無味無臭無色というのが恐いよね。


毒殺魔の教室/塔山郁の表紙とAmazonでのレビュー
毒殺魔の教室
毒殺魔の教室塔山郁


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◆他サイト感想◆
棒日記V -I will carry on-
読書備忘録

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第2の江原を探せ!/渡邉正裕 山中登志子

◆読んだ本◆
・書名:第2の江原を探せ!
・著者:渡邉正裕 山中登志子
・定価:1,000円
・出版社:扶桑社
・発行日:2008/12/10

◆おすすめ度◆
・スピリチュアルカウンセラールポ度:
・ホンモノはいるのか!?度:
・突っ込み満載度:★★★★

◆感想◆
「スピリチュアルカウンセラーにホンモノはいるのか」をテーマにしたルポ。
5人のジャーナリストがスピリチュアルカウンセラーを名乗る16人のカウンセリングを受け、ホンモノかニセモノかを実証しようとする。
実証の方法は、複数のカウンセラーに自分の守護霊や前世を尋ね、同じ答えが返ってくるか。また、個人的な事柄について、正確な指摘ができるかで、真偽を判断。
ジャーナリストたちは、コールドリーディングやストックスピールに注意しながら取材していくうち、これはホンモノといわざるを得ないカウンセラーに遭遇する。

ウーム。

ジャーナリストによる客観的な検証を標榜するわりに、読者が納得できる検証になっていないような・・・

悩みを抱えている人にしてみれば、スピリチュアルカウンセラーが指摘している内容は誰にだって大同小異当てはまることだし。
だいたい守護霊や前世がカウンセラーによって全然違うという結果が出た時点で、「スピリチュアル」は「ウソ」という結末だろう。
それを「”何かがある”と思わざるをえない」のは、個人的な出来事を言い当てたりしているから。

でもなあ。
「牛乳とトマトジュースがみえる」とスピリチュアルカウンセラーにいわれて、当日の朝トマトジュースとコーヒー牛乳を飲んできたジャーナリストは心底驚く。
けど、毎日牛乳を飲む人は39%、週に5~6日飲む人を合わせると13歳以上の人の5割近くがほぼ毎日飲んでいるという統計もあるし、自分が飲まなくても家族なんかが飲んでいれば、当ったことになっちゃうよ。
「朝、牛乳とトマトジュースを飲みましたね」と明言している訳じゃないし。
それに牛乳じゃなくてコーヒー牛乳じゃない?

また、あるジャーナリストは、好きだった人が描いた絵をみせられたことに驚くが、どうして同じと思えるのか不思議なくらい違う絵だし。



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自宅の油絵を透視! 性格分析、人の透視も恐るべしの霊感心理カウンセラー/MyNewsJapan



この本を読んで分かった事。
 ・人は誰かに自分の事を言い当ててもらいたがっている。
 ・高いカウンセリング料金を払っているんだから、当っていなければ損だと考えがち。
 ・普通のカウンセリングの技量があれば、スピリチュアルカウンセラーになれる。



第2の江原を探せ!/渡邉正裕 山中登志子の表紙とAmazonでのレビュー
第2の江原を探せ!
第2の江原を探せ!渡邉 正裕

おすすめ平均
stars自分で考え、判断したい人に買って欲しい
starsとても冷静な検証、《評価★5の能力者》に会ってみました
stars客観的評価に乏しすぎる本
starsスピリチュアルカウンセラーをうさん臭いと思っていた自分にとって
stars硬派なジャーナリストがつづるスピリチュアル検証本

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◆著者等のサイト◆
MyNewsJapan


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少女/湊かなえ

◆読んだ本◆
・書名:少女
・著者:湊かなえ
・定価:1,400円
・出版社:早川書房
・発行日:2009/1/25

◆おすすめ度◆
・ミステリー小説度:★★★
・多感な女子高生の憂鬱と友情度:★★★★
・繋がり合う人間関係度:★★★

◆感想◆
「人が死ぬところを見たい」
想像ではなく現実の死。それを見れば、友達より自分の方がより死について知っている事になる。敦子は老人ホームの、由紀は病院のボランティアを行い、人が亡くなるところを見ようとするが・・・

多感な女子高生である敦子と由紀が主人公のミステリー小説。
ミステリー小説といってもそれらしいのは最後の方だけで、中盤までは女子高生2人の暗めで内向的な青春グラフィティといった感じ。

被害妄想っぽい登場人物や、鬱屈した内容にヤヤ辟易する。
前作「告白」も暗いテーマだったから、続けて本書を読むと、滅入ってくる。
ただ、最後はミステリー小説的な落ちもあって、さらにハッピーな感じに。

悲惨な事件も人間関係のドロドロも、どんなことが起きようと、彼女たちにとっては青春の断片でしかないという。
若さっていいなぁ、みたいな。


黎明
黎明/Angle Dust


湊かなえの「告白」と「少女」を続けて読んだら、ちょっとブルーになる。
小説に人の心を動かす力があるということだろうけど、次はハッピーになれる小説を読んで気分転換しないと!

ちょいな人々/荻原浩でも再読してみるか。



少女/湊かなえの表紙とAmazonでのレビュー
少女 (ハヤカワ・ミステリワールド)
少女 (ハヤカワ・ミステリワールド)湊 かなえ

おすすめ平均
stars未成年者向けケータイ小説
starsとても読みやすかったです
stars汚い泥試合
stars自己満足の世界
stars定価で買って後悔した

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◆他サイトの感想◆
シンさんの偽哲学の小部屋
映画な日々。読書な日々。
ある休日のティータイム

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告白/湊かなえ

◆読んだ本◆
・書名:告白
・著者:湊かなえ
・定価:1,400円
・出版社:双葉社
・発行日:2008/8/10

◆おすすめ度◆
・恐怖の復讐ミステリー小説度:★★★★★
・たぐいまれな心理描写度:★★★★★
・陰湿で自己中心的で唯我独尊的な主人公度:★★★★

◆感想◆
中学校の終業式、学校を辞める女性教師が自分の担当するクラスで生徒たちに話しはじめたのは、恐ろしい告白だった・・・

これは読んでいて背筋が寒くなるような復讐譚だ。

女性教師の愛娘が生徒により殺される事件を発端に、それに関わる人物を主人公とした連作短編集。
ミステリー小説としての仕掛けやテクニックに新しさはないが、ずば抜けているのは物語の展開・構成と心理描写。

女性教師、女子を殺害した生徒、その母親と、事件にからんだ登場人物に語らせる事件の展開は、「薮の中」式で絶妙。
登場人物によって事件が様々に変化して見える様子は、とても新人作家とは思えない。

またそこで描かれる心理描写も巧緻に長ける。
不満や悩みを抱える少年、生徒と教師の温度差のある関係、親と子供の複雑な間柄。
それらを普遍的な言葉で描写された状景は、とてもリアルで納得できる。
これは、読む人によっては爆弾並みの破壊力を持つかもしれない。

どこをとっても満点に近い本書だが、唯一欠点をあげるとすれば、そのテーマ。
だって恐いんだもん。
ドロドロした人間の裏面がリアルで後味も悪いし。
そこが「売り」でもあるんだろうけど・・・


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【著者に聞きたい】湊かなえさん 『告白』/MSN産経ニュース


遅まきながら読んだ「告白」は、「このミステリーがすごい!」や「週刊文春ミステリーベスト10」で上位にランクされるだけあって、予想以上の読みごたえ。
著者である湊かなえはどんな人なのか興味モリモリだ。
女性の書く恐い小説は、とことん恐いけど、それにしても心理描写が繊細。
心理学とかに詳しい人なのかと思ったり。

WEBの記事とか見ると、ステキな女性だ。
家政学部卒というのも、本書の内容と著者の実像に大きな差があってミステリアス。
恐い小説もいいけど、著者の心がゆさぶられるような感動的な物語も読んでみたいぞ!


告白/湊かなえの表紙とAmazonでのレビュー
告白
告白湊 かなえ

双葉社 2008-08-05
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おすすめ平均 star
star独白あるいは書簡
star私の「告白」
star★をどうつけたら良いか、迷う一冊

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◆他サイトの感想◆
映画な日々。読書な日々。
黒夜行
活字中毒日記

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