だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 最近は新旧歴史時代小説やエンターテイメント、ライトノベルにも手を伸ばして節操のない状態に。趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

IN/桐野夏生

◆読んだ本◆
・書名:IN
・著者:桐野夏生
・定価:1,500円
・出版社:集英社
・発行日:2009/5/30

◆おすすめ度◆
・クズクズの恋愛小説度:★★
・ウジウジの不倫関係度:★★
・人間模様に意味を見いだそうとする作家の性度:

◆感想◆
作家の鈴木タマキは、文豪緑川未来男の「無垢人」という小説に登場する○子(伏せ字)という女性を調査していた。私小説といわれた「無垢人」には、緑川未来男と不倫関係にあった○子のことが描かれており、鈴木タマキは○子の実像を執念深く調べるのだが・・・

主人公の作家鈴木タマキと不倫相手の編集者の関係に並行して、タマキが○子の存在を調査する展開が描かれる。

不倫関係を悩み克服しようとするタマキ。
「無垢人」という小説の中で、未来男の不倫相手として登場する○子。
タマキは○子という存在を調べることが、あたかも自分の存在を確認することになるかのごとく、執念深く調べていく。

テーマは恋愛における抹殺(自分の都合で相手を無いものとする)ということだが、どうも分かりにくい。
著者桐野夏生自身の私小説ぽいところもあるし、恋愛という名を借りた人間の勝手さを書いているようでもあるし、繊細で世間知らずな作家と編集者の関係を自嘲的に書いているようでも、小説の中に「無垢人」という小説を組み込んだ実験的な小説のようでもある。

簡単にいうと、面倒な小説だ。
まあ、恋愛とか不倫とかは面倒な所も多々あるけど、グチャグチャと答えの無いことを考えなければならないのはわずらわしい。
それが自分の興味のあることならいいが、恋愛とか不倫とか作家の性とか。
もっとアカデミックだったりハートを揺さぶられる人間関係とかだったりするならいいけど、ウジウジグジグジ梅雨時のナメクジみたいで性に合わん!

それでいて読むのを止めるほどつまらない訳でもない。
ウーム。困ったもんだ。
寝る前に読むと、すぐ寝れるくらいの面白さだ。


IN
IN桐野 夏生

おすすめ平均
stars饐えた恋愛への葛藤と煩悶を吐露する難しさを描いた傑作。
starsだんだんと・・・
starsターニングポイントである作品、に同意
stars三つの世界のリンク具合
stars作者の折り返し地点か

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本書は、名作「OUT」とは関係ない小説だった。
本の帯には「OUT」との関連性を示唆するような文句があるし、出版社はちがうのに装丁はそっくりだし。
なんだ?
どうゆう意図なんだ?
自分一人が本書の面白さや「OUT」との関連性を見いだせないでいるのだろうか?


OUT 上 講談社文庫 き 32-3
OUT 上  講談社文庫 き 32-3桐野 夏生

おすすめ平均
stars上巻のみの感想~人間心理の闇を抉った快作
stars妻に殺されない為に男性は必読w
stars弁当工場、殺人、死体解体、ヤクザなどが盛りだくさんで怖い話だが、超お勧め
starsこれはミステリーなのか?
starsおもしろいが「リアルワールド」と構成がまったく一緒なのはいかがなのものか

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厭な小説/京極夏彦

◆読んだ本◆
・書名:厭な小説
・著者:京極夏彦
・定価:1,890円
・出版社:祥伝社
・発行日:2009/5/20

◆おすすめ度◆
・不条理小説度:★★★★
・ありそうな設定とデフォルメされた展開度:★★★★★
・感情移入すると厭な思い出がドンドン思い出されて度:★★★★
・偏執的な装丁度:★★★★

◆感想◆
日常で「ちょっと厭だな」と感じる出来事を、小説まで昇華、展開させた短編集。

夫婦や恋人同士でのちょっとした齟齬、ちょっと気に入らない上司や同僚。日常どこにでもありそうな「厭な」ことを、どんどん突き詰めて発展させ、不条理きわまりない厭な状態まで昇華させた、ヘンテコな小説だ。

泣かせる小説とか笑わせる小説というのはいっぱいあるけど、厭な気持ちにさせる小説とは。
さすが京極夏彦、奇抜なデーマで小説を書く。
展開も読者の興味を惹くように書かれているし、落ちも不条理感がいっぱいで厭感倍増だ。

夫婦や会社の同僚との間の出来事を題材にしているだけあって、身近で感情移入しやすいというか、「あるあるある」っていう感じ。
「この登場人物と似ている奴がいる。変なやつなんだ」とか思って読んでるうち、頭に来たことや厭な出来事がドンドン思い出されてきて、小説よりもそっちのほうで厭な気分になったりして。
著者の思う壷だ。

最後はメタ小説っぽい無限厭厭地獄に。

今度は無限快感天国な小説も書いて欲しいぞ。


厭な小説
厭な小説京極 夏彦

おすすめ平均
stars厭だけどエンターテイメントとしては最高!

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本書「厭な小説」は「幽談」と同じような構想で書かれた小説に思える。
「幽談」は恐怖がテーマで「厭な小説」は厭がテーマ。
憑物落しの蘊蓄を卒業し、人間の感情と不条理をテーマにした小説に移行。
論理ではらりしれない感情というものに焦点が移るのは自明の理か。


◆他サイトの感想◆
e-hon W著者との60分 京極夏彦インタビュー
AKASHIC NOTE
ただぼんやり生きている

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完全恋愛/牧薩次

◆読んだ本◆
・書名:完全恋愛
・著者:牧薩次
・定価:1,900円
・出版社:マガジンハウス
・発行日:2008/1/31

◆おすすめ度◆
・本格ミステリー小説度:★★★★
・実らぬ恋度:★★★★★
・驚愕の展開度:★★★★

◆感想◆
伯父の住む会津の山奥に疎開した本庄究は、伯父の家の離れに疎開していた小仏画伯の娘に恋心を抱くが・・・

これは読みごたえのある小説。
恋愛小説としても素晴らしい出来だ。

物語は、両親を戦火で失った本庄究が伯父に引き取られ、会津の山奥にある温泉町で過ごすようになるシーンからはじまる。
戦争当時の時代考証も的確に行われた当時の生活ぶりや、主人公の本庄究が画家の娘である朋音に恋心を抱くようになる展開、進駐軍が町に浸透してくる様子などが活写される中、殺人事件が発生する。
さらに時代は移り、本庄究と朋音の悲恋と彼らを軸として起きる事件が、昭和、平成の時代に渡って展開する。

本庄究のひたむきな恋が、なんとも悲しい。
美しい朋音への思慕と憧れと愛しい人を守りたいという気持ち。悲恋ものの定番みたいな展開だけど、この展開にまいった!

惜しいのはミステリー小説としての展開。
はじめの殺人事件は物語に合った流れで起き、不自然な感じはしないんだけど、その後の事件はちょっとギクシャク。
本格ミステリ小説にするために脚色されたような事件で、取ってつけたような違和感がある。

無理して密室状態の事件にしたり、リアル事件を物語に取り込んだり。ラストも楽屋落ちみたいな部分もあって。
わざわざこんな体裁にしなくても、十分読者を楽しませることができたと思うが。
トリックや、謎の解決シーンにこだわり過ぎ?
ミステリ小説愛好家は、こうじゃなきゃ納得しない?
トリックやどんでん返しに驚嘆するものの、なんかなじめない。
ミステリとしての仕掛けをもうちょっと抑えて、物語性の方を重視した展開になってれば、文句なしの恋愛小説だ。


親指シフト
親指シフト・キーボードを普及させる会


あとがきに、「この作品は日本語入力に最適と信ずる親指シフトキーボードによって綴られました」の断り書きが。
著者は『親指シフト・キーボードを普及させる会』の発起人のようだ。
そういえばパソコンのハードユーザである井上夢人も、親指シフトキーボードを使っているような記述を読んだ記憶が。

使いやすいのかなあ。
アルファベットのキー配列をようやく覚えたのに、また別の配列を覚えるのはちょっと辛いかもしれないなあ。
でも著名な作家が『親指シフト・キーボードを普及させる会』の趣旨に賛同しているようだし。
これを使えば、名文がかけるかも?


完全恋愛
完全恋愛牧 薩次

おすすめ平均
stars悲しくて切なくなる恋愛
stars壮大な恋愛と悲劇
stars快作です。
stars恋愛小説とミステリの融合
starsせつない恋。驚天動地の謎。

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◆他サイトの感想◆
asahi.com
棒日記V -I will carry on-
活字中毒日記


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小林・益川理論の証明 陰の主役Bファクトリーの腕力/立花隆

◆読んだ本◆
・書名:小林・益川理論の証明 陰の主役Bファクトリーの腕力
・著者:立花隆
・定価:1,900円
・出版社:朝日新聞出版
・発行日:2009/1/30

◆おすすめ度◆
・スリリングなノンフィクション科学書度:★★★★
・驚きの先端理論と加速器の構造度:★★★★
・素人でも分かっちゃう「対称性の破れ」度:★★★★
・朝日新聞は絶対読まないゾ度:★★★★

◆感想◆
記憶に新しい日本人物理学者3人のノーベル物理学賞受賞。ところが物理学だけあって、なかなか素人には理解が困難。
こんなスゴイことをきちんと報道しないことに不満を感じた著者が、素人でもその偉業が分かるよう、詳細で具体的、かつ平易に書いた科学書。

さすが立花隆、これが本当に素人でもじっくり読み進めれば分かってきちゃうんである。

宇宙が対称性に支配されている(宇宙のどこにも特別な空間は無く、物理法則が同じように成り立つという意味)というのは、近代科学の基本的な考え方。
(フムフム)
ところが、これに「破れ」があるというのは近代科学社会の根幹をゆるがしかねない大事件なのである!
(それはそうだ!)
しかし「対称性の破れ」があるのも事実で、我々の世界が存在しているのも、その「対称性の破れ」にあるらしい。
(おおっっ!)
もし宇宙が完全に対称的にできていたら、ビッグバンで生成された物質と反物質は同量となり、いずれすべて消滅するはずである。
(なるほど)
ところがそうはならず、我々の世界が物質の世界として在る。ということは、「対称性の破れ」のおかげで物質の方が反物質よりちょっと多く残っているということなのだ。
(そういうことだったのか!)

とまあ、「対称性の破れ」という理論を前振りで分かりやすく展開したのち、その破れをどうやって実験的に検証したのかという件に入る。

使用されたのは筑波にある高エネルギー加速器研究機構のBファクトリーという加速器。
このマシンがすんごいマシンで、その構造や性能や実験風景が、本当に細かく描写されている。

同様の研究を行っている米スタンフォード大学の加速器との検証競争を交えながらの検証実験の進み具合もスリリングだし、加速器という最先端超弩級マシーンについても、理解できちゃうんじゃないかと思わせる内容。

ところが!!
なんと連載されていた「サイアス」という雑誌が休刊となり、連載が中止の憂き目に。
本書はこの連載をまとめたもののため、「対称性の破れ」が実証された?というところで終わっちゃうんである。
なんとも尻切れとんぼな状態。(巻末の対談で補完はされているが)

著者も「サイアス」を発行している朝日新聞社を、ケチョンケチョンに非難しているが(そんな裏話も、それなりに面白い)、尻切れとんぼな結末が本書の欠点。
これじゃあフラストレーションが溜るっ!
最後まで読ませてっ!


高エネルギー加速器研究機構
高エネルギー加速器研究機構


物質は分子から出来ていて、もっと細かくすると原子とか電子からなる。ま、そのへんまではイメージしやすいが、さらに細かくするとクォークになって、3世代12個のクォークとレプトンから成っており、またそれそれに反粒子がある。なんていうことになるとイメージすらできない。
理論も、ニュートンの万有引力はイメージしやすが、相対性理論とか4つの力とか量子力学とか万物理論(!)になるとお手上げ状態。

人間がどんどん物質を見極めていき、精緻で細かく築き上げた理論を敷衍していても、未知なる部分は一向に減らない。
逆に新たな未知が産まれるようだ。

そうやってドンドコドンドコ追求していくと、最後に「あがり」ってなってると面白いなあ。(双六か!)

立花隆 小林・益川理論の証明 陰の主役Bファクトリーの腕力
立花隆 小林・益川理論の証明 陰の主役Bファクトリーの腕力立花 隆

おすすめ平均
stars日本という国を見直すことに繋がるかもしれません。
starsさすが立花隆さん・・・なんですが
stars現代最大最高のマシンBファクトリー(加速器)という存在
stars素人が専門家のために書いた本?
stars小林・益川理論を実験的に証明した"Bファクトリー"の話。まさに"プロジェクトX"

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◆他サイトの感想など◆
シェ・タチバナ 立花隆公式サイト
わりとノーテンキ
らくちんのつれづれ暮らし

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訪問者/恩田陸

◆読んだ本◆
・書名:訪問者
・著者:恩田陸
・定価:1,600円
・出版社:祥伝社
・発行日:2009/5/20

◆おすすめ度◆
・誰が何でどうしたのミステリー小説度:★★★
・どんどん増える謎度:★★★★
・驚きの結末/すかっと大団円度:★★

◆感想◆
山中にたたずむ洋館。週刊誌の記者である井上は、事故死した映画監督の取材をするため、彼の親族が集まる洋館へ赴いた・・・

事故死した映画監督の峠昌彦。
峠昌彦の幼少期を知る朝霧家の一族。
朝霧大治郎から財産と家督を受け継いだ朝霧千沙子の不審死。
洋館に集まる朝霧家の一家。

密室状態の洋館で繰り広げられる、誰が何でどうしたのミステリー小説だ。
洋館に訪問者が訪れるごとに、謎が謎を呼び、いったい何が事件で誰が犯人でどうゆう人間関係でなにが動機なのかが錯綜してくるという、恩田陸テイスト満載の展開。

過去の著者のミステリー小説同様、謎の中に身を委ねて漂うように読み進めるのがいい。
結末はどこに漂着するかわからないけど、この謎の中に漂ってる感が恩田陸風ミステリーの醍醐味。
ガチガチに犯人探しをするような読み方をしない方が、面白く読める。


群盲、象を撫でる
群盲、象を撫でる/佐野写真館


本書に「群盲象を撫でる」という諺が出てくる。
ある人物の一部分だけしか見ていないため全体像が把握できない、と言うような意味合いで使われている。
ミステリー小説なんて、まさに作家の思惑で「群盲象を撫でる」ように構成された小説。
著者は諧謔的に使ってるのか、なかなか含蓄のある諺だ。


でも「群盲象を撫でる」上等!
全体なんか把握できなくて問題ない!
所詮凡人はちまちました所でおもしろがったり悲しんだりしてるんで、逆に大人物は凡人にも分かるようにしなければならないんである。

凡人を「群盲象を撫でる」などと言って小馬鹿にするような人物こそ、物事の本質が見えていないと思うが、いかがか。
(「訪問者」とは関係ない所で盛り上がってしまった豆コラムでした。ハハハ)


訪問者
訪問者恩田 陸

おすすめ平均
stars何が真実?何が嘘?・・・何も信じてはいけません
stars本格ミステリーではないけれど
starsおもしろかったです。が。
stars何が起きたのか、何が真相なのか、それは・・・・
starsもう限界でしょうか?

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カラスの親指/道尾秀介

◆読んだ本◆
・書名:カラスの親指
・著者:道尾秀介
・定価:1,700円
・出版社:講談社
・発行日:2008/7/22

◆おすすめ度◆
・コンゲーム小説の王道度:★★★★
・ちょっと笑えてちょっと泣けてちょっと感心度:★★★★
・ひねった展開/アッとびっくり度:★★★★

◆感想◆
同僚が博打でこさえた借金の保証人になったばかりに、今までの生活も、そして娘までも亡くした武沢。武沢は、ひょんなことで知り合った仲間たちと、その無念をはらそうとするが・・・

落ちぶれた詐欺師が、かつて苦汁をなめさせられた闇金業者を騙くらかそうと画策するコンゲーム小説。
本題に入るまでがやや長いが、ちょっと笑えてちょっと泣けてちょっと感心する内容だ。
はじめは武沢と入川の二人のおっさん詐欺師が主人公だが、そこに少女が加わるあたりから、俄然面白くなる。
かわいい少女の登場、この手の小説の定石だ。
物語の展開も、コンゲーム小説の王道ともいえる流れで、これをどう料理するかが著者の腕の見せ所。
結果は読んでのお楽しみ。

個人的にはもっと「痛快!」な展開が良かったが、一気に読んじゃう面白さは特筆もの!


カラスの親指 by rule of CROW’s thumb
カラスの親指 by rule of CROW’s thumb道尾 秀介

おすすめ平均
stars罪を償うこと
starsミステリーなのか、それとも中年と若者の群像劇なのか
stars父娘もの
stars何かもの足りない
stars期待しすぎたかも・・・

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コンゲーム小説といえば、たいていのミステリー作家が一度は書いてるんじゃないかというポピュラーなジャンル。
今まで読んだ中で一番面白かったのは、コンゲームとい言葉も知らない頃に読んだ「大誘拐」か。
主役のおばあちゃんがながなが豪快で、とっても面白かった朧な記憶が。
本棚から引っ張り出して奥付を見ると昭和54年発行だ。
うーむ、月日の経つのは速いものよ。記憶も朧になろうってもんだ。
でもそうやって昔のことを忘れていくから、新しい本を新鮮な気持ちで読めるんだろう。
読んだ本の内容をすべて昨日のことのように覚えていたら、ちょっとつまらないかも。
新しい感動の度合いが減ってしまうよな。


◆他サイトの感想◆
ミステリあれやこれや
本屋さんへ行こう!
今週の本棚
粋な提案

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風の中のマリア/百田尚樹

◆読んだ本◆
・書名:風の中のマリア
・著者:百田尚樹
・定価:1,500円
・出版社:講談社
・発行日:2009/3/3

◆おすすめ度◆
・蜂の世界は弱肉強食度:★★★★
・擬人化されたオオスズメバチ度:★★★
・少年少女向け度:★★★★

◆感想◆
オオスズメバチのワーカーであるマリアは、杉林を抜け灌木が生い茂る丘に出た。灌木の上を大きく旋回するように飛びながら、薮の中に動くものを捉える。―――獲物だ!

オオスズメバチのハタラキバチが主人公。
名前はマリア(ハタラキバチだからメスなのね)で、なんと小説の中では喋っちゃうんである。
マリアだけでなく、物語にはカマキリとかチョウチョとか色んな昆虫が登場するんだが、みんな喋るんである。
「みつばちマーヤ」か「みなしごハッチ」みたいに擬人化された昆虫たち。
でもそこで語られるのは、マリアの半生と昆虫世界の弱肉強食。

昆虫が人間と同じように考え話すという設定に、はじめは違和感ありまくり。
だって変だよねえ。
ところがそのうち違和感を感じなくなるから不思議だ。
慣れ? 著者のテクニックか?
オオスズメバチを悪者として描写していないところもミソだな。

著者はハチの生態もだいぶ勉強したみたいで、少年少女たちが理科の教材にしてもいいくらい。
生物生存機械論も噛み砕かれて展開されてるし、オオスズメバチが春先に活動をはじめてから、新たな女王蜂が誕生するまでの1サイクルを描ききってるし、昆虫好きな男子にはうってつけだ。

一番の見せ場は、オオスズメバチの戦闘シーン。
エサを求めて他の昆虫たちと戦う場面は、なかなか手に汗握る展開。

ボックス!」に感動して本書を購入したが、著者は放送作家だけあって、人の心をつかむのが上手だ。



本当は恐いオオスズメバチ


子供の頃ハイキングに行って、ズスメバチに指を指されたことがあった。
刺された時はものすごく痛くて、指が3倍くらいの太さに腫れたような記憶が。
今度刺されたらアナフィラキシーショックで死ぬかもしれないから、ハチには近づかないようにしてるんである。


風の中のマリア
風の中のマリア百田 尚樹

おすすめ平均
stars楽しく、ためになる!
stars百田尚樹がまたやってくれました!
starsこんなにドラマチックだなんて・・・!
starsハンターとして生きるオオスズメバチのワーカーの一生
starsすごくおもしろい。でも。

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◆他サイトの感想◆
いつか どこかで
待ちわび通り

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時間封鎖/ロバート・チャールズ・ウィルスン

◆読んだ本◆
・書名:時間封鎖
・著者:ロバート・チャールズ・ウィルスン
・定価:上940円 下940円
・出版社:創元SF文庫
・発行日:2008/10/31

◆おすすめ度◆
・大仕掛けSF小説度:★★★★★
・人類の終末的SF度:★★★★★
・微小テクノロジーと全宇宙的規模のスケール度:★★★★
・ジェイスンは真理を掴む?/ダイアンとタイラーの関係は?度:★★★★★

◆感想◆
ある夜、空から忽然と星が消えてしまう。それは地球が得体の知れないモノによって覆い尽くされたためだった・・・

SFが読みたい! 2009年版 」の堂々1位。「WEB本の雑誌 今月の新刊採点」で採点員5人全員が満点をつけたという、大注目のSFだ。

物語は、スピンと呼ばれる膜のようなもので覆われてしまい、外宇宙と断絶させられた地球。そしてスピンで覆われた地球だけが、異なった時間流の中におかれてしまう。
題名通り地球が「時間封鎖」されてしまうのだ。

いったい誰が、どんな目的で、どうやって時間封鎖したのか。

夜空を眺めていたとき、忽然と星が消えてしまうという実体験をした3人(双子の姉弟と友人男子)。
彼らが主役となって、物語が展開する。

これは読みごたえ十分のエンターテイメントSFだ。
小難しくマニアックなハードSFにせず、平易で分かりやすい表現なのがいいし、登場人物が双子の姉弟ダイアンとジェイスン、そしてその友人タイラーという3人がメインで、非常に分かりやすい。(外人の名前を覚えられない自分向きだ)

それでいながら、大胆なSFとしての仕掛けや、親子や友人間での人間ドラマもちゃーんと描かれているし、震えるような緊張感のあるシーンや、それこそセンス・オブ・ワンダーしまくりのSFならではのシーンも。

夜空から星が消えてからの数十年という長丁場を、巧みな展開でグイグイ読ませる。
SFとしての落ちも、人間ドラマの落ちもウマイ!

ダイナミックで先の読めないワクワクする展開と、登場人物や人間ドラマがきっちり描かれてこそ、面白い小説たりえる。
SFでもミステリーでも、仕掛けやトリックだけの小説はいまいち物足りない。
そこに人物が絡み合ってこそ面白い物語になるんだと、再認識した次第。

とにかく、「星のない夜空が夢に出てきて、びっくりして目覚めて夜空を見れば、ちゃんと星が瞬いてる!よかった!!」という幸せ感を味わいたい方は、今すぐ本屋へ!


Spin  Axis


本書に登場するスピンをはじめとしたいくつかのSF的な設定は、最後まで謎のままなんである。
もちょっとハードに真相に迫ってくれてもいいよな、と思いつつ読後に解説を読むと、なんと本書は3部作の第1部なんだと。
期待に胸が膨らむが、ハイペリオンシリーズみたいに待たされるんだろうな。


時間封鎖〈上〉 (創元SF文庫)
時間封鎖〈上〉 (創元SF文庫)Robert Charles Wilson 茂木 健

おすすめ平均
stars万人向けの傑作です
starsベテランにもハードSFの初心者にもうってつけ
stars訳の分からない怖さ
starsヒューゴー賞は伊達じゃない
stars話もうまいしSFマインドもたっぷり

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時間封鎖〈下〉 (創元SF文庫)
時間封鎖〈下〉 (創元SF文庫)Robert Charles Wilson 茂木 健

おすすめ平均
starsある段階にいたった文明には
stars始まりの終わり

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◆他サイトの感想◆
WEB本の雑誌
水の中。
みかん星人の幻覚

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黒百合/多島斗志之

◆読んだ本◆
・書名:黒百合
・著者:多島斗志之
・定価:1,500円
・出版社:東京創元社
・発行日:2008/10/30

◆おすすめ度◆
・淡く瑞々しい恋愛小説度:★★★
・だからどうしたミステリー小説度:★★
・黒百合の意味は色々度:★★

◆感想◆
14歳の進は、夏休みを父の友人である浅木さんの別荘で過ごすことになった。浅木さんの息子一彦と池で遊んでいる時、一人の少女と出会う。3人は意気投合し、一夏を一緒に過ごすが・・・

夏休みの思い出、3人の淡い恋、みたいな青春小説。舞台は昭和27年の六甲山。
この展開に、かつて少年たちの親がドイツに鉄道を視察した時の話しなどが挿入されて、最後は「あっと驚くミステリー小説」という構成。

読んでいて楽しいのは、3人の夏休み風景。
森の中で遊んだり少女の家に遊びに行ったり。
進と一彦が少女に恋心を抱きながら、牽制しあったり焼きもちをやいたりする様子が微笑ましい。

一方ミステリー小説としての出来は、いまいち。ミステリーの面白さはあんまり感じないなあ。
なんか後だしジャンケンみたいで、だらかどうした?みたいな。
挿話に登場する怪しすぎる登場人物も、わざと人間関係が分からないように書くやりかたも、ラストの展開を盛り上げるためだけにある。
そこで真実が提示されて、あっと驚くけど、それだけ。
物語の内容がひっくり返るわけではないし、新たな真相が判明する訳でもない。
ただ後から本当のことを言われただけみたいな。

2009年版「このミステリーがすごい!」の7位なんだけどねえ。
趣味が合わないってことか。


黒百合
花言葉事典


黒百合の花言葉は「恋」と「呪い」。
百合は「純潔」「無垢」「純愛」などの花言葉もあるし、ま、色々だ。
でも著者は、殺される人物を間違えてるんじゃないの?


黒百合
黒百合多島 斗志之

おすすめ平均
stars少年のひと夏の淡い思い出に隠された謎
stars時代考察は面白いが・・・
stars六甲の夏休みが印象深い
starsさりげないサプライズに感嘆!
stars期待しすぎました

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◆他サイトの感想◆
taipeimonochrome ミステリっぽい本とプログレっぽい音樂
ミステリ畑
ふるちんの「頭の中は魑魅魍魎」

テーマ:読書感想文,おすすめミステリー小説,本 - ジャンル:小説・文学,本,感想,ミステリー

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