だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 最近は新旧歴史時代小説やエンターテイメント、ライトノベルにも手を伸ばして節操のない状態に。趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

見当たり捜査官/戸梶圭太

◆読んだ本◆
・書名:見当たり捜査官
・著者:戸梶圭太
・定価:1,600円
・出版社:双葉社
・発行日:2010/9/19

◆おすすめ度◆
・B級連作警察小説度:★★★★
・ラストはトカジらしく激しくスプラッター度:★★★★
・トカジにしてはけっこう普通度:★★★

◆感想◆
指名手配被疑者の写真を多数記憶した上で繁華街や駅などで指名手配被疑者を発見するという見当たり捜査官。主人公の久米山も見当たり捜査官の一人だが、ホシを挙げられない日が続き焦りを感じていた…

見当たり捜査官というやや特殊な仕事が珍しいが、トカジにしてはけっこう普通の警察小説。
見当たり捜査で見つけた被疑者を取り逃がしたり取っ捕まえたりのアレやコレやがちょい面白い。

中年独身男の悲哀と、かつては警視総監賞までもらったが今はサッパリな逮捕成績のペーソスと、それでも意地とプライドをかけて見当たり捜査に専念する警察官の矜持なんかも描かれて、ホントにトカジ?と思うくらい。

やっぱりトカジはこうでなくちゃ、と思わせるスプラッターでクレイジーな暴力的シーンで最後は盛り上げてくれて、思わずニカニカ笑ってしまった。

読んでるうちはそれなりに面白いけど、3日たったら忘れちゃいそうなB級さもステキだ。

見当たり捜査官
「指名手配犯、逃さない! 街頭に光る“眼光”「ミアタリ」」/イザ!

500人もの容疑者の顔写真を記憶する見当たり捜査官。警視庁が逮捕する指名手配犯の約10%が見当たり捜査によるという。
すごい。
「あ、どうも。最近は涼しくなりましたねぇ。ところでどなたでしたっけ?」なおれには、とてもできないプロフェッショナルな技だ。

見当たり捜査官

戸梶 圭太 双葉社 2010-09-15
売り上げランキング : 14540


by ヨメレバ

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ハンターズ・ラン/ジョージ・R・R・マーティン

◆読んだ本◆
・書名:ハンターズ・ラン
・著者:ジョージ・R・R・マーティン
・定価:1,000円
・出版社:ハヤカワ文庫
・発行日:2010/6/25

◆おすすめ度◆
・SF冒険小説度:★★★★
・サバイバル/追跡劇度:★★★★★
・異種族との遭遇で変化する心度:★★★★★

◆感想◆
辺境の植民星サンパウロ。喧嘩っ早い探鉱師のラモンは、酔った勢いでエウロパの大使を殺してしまう。街から逃げ出したラモンは未開拓の北部山岳地域に向かうが・・・

ジョージ・R・R・マーティンの「氷と炎の歌」シリーズが面白いという噂を聞きつけ読んだものの、シリーズ半ばにして放り投げてしまったことが。
だから「ハンターズ・ラン」が面白いと聞いてもあんまり読む気が起きなかった。けど、あっちこっちで面白いと聞くにおよび、とうとう手にして読むと、これが面白い!
読みはじめたら止められない。

舞台は辺境の植民地惑星。そこで炭鉱師という荒くれた仕事をしている、気性の荒いアウトロー(やや人生の落伍者ぎみ)が主人公。
殺人事件を起こし、逃げた先の山岳地域でとんでもないことにっ!

得体の知れない動植物や山岳地域の自然描写がリアルだし、そこでのサバイバル劇や追いつ追われつの追跡劇がハラハラドキドキもの。
また異種族との遭遇によって、ならず者の主人公が微妙に変化していく様子もじんわり描写。

サバイバルな冒険活劇とマンハントなスリリングな展開、さらに人間と異種族の不思議な交流を描いた、面白SF小説だ。
「ジョージ・R・R・マーティンは苦手」という方も、是非お試しあれ~!

ハンターズ・ラン (ハヤカワ文庫SF)

ジョージ・R・R・マーティン 早川書房 2010-06-30
売り上げランキング : 115422

おすすめ平均 starAve
star1構想から物語に熟成するまで、30年…。
star2ジョージ・R・R・マーティンではない
star3古いものを新しく
star4「当たり」と言える面白さ

by ヨメレバ

山岳地域でのサバイバルなだけに、巨大で平たい皮革質のからだでパンケーキに似た形状の空飛ぶ動物「フラップジャック」とか、獰猛で鋭い鉤爪を持つ肉食獣「チュッパカブラ」とか色んな架空の動植物が登場して、その姿を想像するのも面白さの一つ。

もっとも想像が困難だったのが、人類よりも高位に君臨するエニェという異種族。
彼らは牡蠣の身に似た目を持ち、全身には淡い黄緑色の繊毛が生え、長い舌で相手をペロペロと舐めるのが別れの挨拶なんである。
気持ち悪っ!

◆他サイトの感想◆
本よみうり堂
あとりの本棚手当たり次第の本棚
読書記録, et.al


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謎解きはディナーのあとで/東川篤哉

◆読んだ本◆
・書名:謎解きはディナーのあとで
・著者:東川篤哉
・定価:1,500円
・出版社:小学館
・発行日:2010/9/7

◆おすすめ度◆
・ユーモアミステリー小説度:★★★★
・けっこう本格度:★★★★
・会話が絶妙に面白い度:★★★★

◆感想◆
金持ちのボンボンが警部になったような風祭。彼とコンビを組むのは本当のお嬢様育ちながら刑事になった宝生麗子。二人で殺人事件の調査に当るのだが、これがちっとも進展せず・・・

軽いノリのユーモアミステリー小説。
これがけっこう面白い。
ボンボンの風祭警部とお嬢様刑事の宝生麗子の掛け合い、これが先ず笑える。
さらに宝生麗子についている執事の影山が、執事のわりにお嬢様を小馬鹿にしたような物言いで、宝生麗子と執事・影山との会話も笑いを誘う。
さらにこの執事・影山、事件の概要を宝生麗子お嬢様から聞いただけで、犯人を言い当ててしまうという名探偵ぶり。

クスクス笑いながら読めるユーモアミステリー小説だけれど、けっこう本格派な謎解きモノ。
種明かしされて「なるほど!」な面もあって、ユーモア小説と本格ミステリーが合体したような小説だ。
六話からなる連作短編集だけど、心して読まないと著者の術中になまること間違いなし。

謎解きはディナーのあとで

東川 篤哉 小学館 2010-09-02
売り上げランキング : 2662

おすすめ平均 starAve
star1しっかり楽しめる謎解きとユーモア
star2キャラクターが良い

by ヨメレバ

「謎解きはディナーのあとで」の舞台は東京の国立(くにたち)なんである。
近所だなあ。
小説の舞台が近所だと、ついつい事件の現場に行ってみたくなる。
野暮な人のことを「野暮天」と呼んだりするのは野暮天満宮に由来する、なんていうローカルな豆知識も仕入れられて、国立市民にもお勧めだ。

◆他サイトの感想◆
読書記録, et.al
棒日記VI

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ブルー・ゴールド/真保裕一

◆読んだ本◆
・書名:ブルー・ゴールド
・著者:真保裕一
・定価:1,600円
・出版社:朝日新聞出版
・発行日:2010/9/30

◆おすすめ度◆
・社会派ミステリー小説度:★★★
・緻密な構成と大胆な展開度:★★★
・水ビジネスの裏側の裏側度:★★★

◆感想◆
今話題の水ビジネスを扱った社会派ミステリー。
水ビジネスを扱う巨大商社、豊富な地下水を保有する地方都市と役人、他水ビジネスに群がる有象無象を巻き込んだ駆け引き/騙し合いがはじまる・・・

水ビジネスというとすぐグローバルな展開を想像するが、あえて日本の地下水が豊かな地方を舞台にしている所に、著者のこだわりを感じる。
登場人物も木っ端役人をはじめ、巨大商社で人を人とも思わないバリバリ商社マンから、アクの強い商社の社長や癖のある弁護士とか、ハードな企業戦士が登場。
物語も細部までこった展開で、著者らしい物語に。

でもちょっとこじんまりした感も。
もっと大胆にウッチャリかましても良かった。
緻密な分だけこじんまりした感じかな。

真保 裕一 朝日新聞出版 2010-09-07
売り上げランキング : 1184
by ヨメレバ

「大企業が工場を新たに建設する計画がある」なんていうニュースの裏には、本書に描かれているような企業間の駆け引きや、政治家、役人、マスコミを巻き込んだ情報戦略がありそう。
でも大企業の上層部は、企業の利益を如何に上げるかというマクロな視点で戦略を練る一方、「あいつはおれの言うことを聞かない奴だ」「どっちの味方をするんだ」といったガキ大将的な感覚が判断を左右することも多い。
けっこう動機が幼稚だったりするんである、ホント。

◆他サイトの感想◆
森乃屋龍之介の日常
読書日記 嘉壽家堂 アネックス

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獣の奏者 外伝 刹那/上橋菜穂子

◆読んだ本◆
・書名:獣の奏者 外伝 刹那
・著者:上橋菜穂子
・定価:1,500円
・出版社:講談社
・発行日:2010/9/3

◆おすすめ度◆
・エリンとエサルのもの悲しい恋愛小説度:★★★
・正直でためらわない人生度:★★★★
・強く前向きな女性/弱く哀れな男性度:★★★★

◆感想◆
ファンタジー小説の傑作「獣の奏者」の登場人物二人を主人公にした恋愛小説。
エリンとイアルがいかにして結婚するにいたったかという短編「刹那」と、エサルの若き日の恋愛と人生を描いた短編「秘め事」。おまけに微笑ましい掌編「初めての…」の合わせて3編。

登場人物と王獣の関わりを背景として、主人公たちが愛する人とどのように過ごし、どのように人生の物語として捉え、どう生きようとしたかがテーマ。

著者はあとがきで、「自分の人生も半ばを過ぎたな、と感じる世代に向けた物語になったようです」と書いているが、言い方を変えれば「そのときそのときに悔いが残らないように生きろ。大きな決断した時は辛く苦しいかもしれないが、年齢を重ねてから振り返ったとき、それはとても輝いている」みたいなことかと。

エリンもイアルも自分に正直に、そして思うことにためらわない姿勢が眩しい。
人生も半ばを過ぎたなと感じる世代向けというより、やっぱり若い人向けの物語だろう。
おじさんがこうゆう恋愛小説を読むと、なんか綺麗すぎて照れちゃうし、自分が情けなくなる。
あるいはしょうもない男たちに弱さと哀愁を感じる。

獣の奏者 外伝 刹那

上橋 菜穂子 講談社 2010-09-04
売り上げランキング : 39

おすすめ平均 starAve
star1賛否あるでしょうね。
star2自分の人生を生きる
star3"外伝"であるべき物語

by ヨメレバ

「獣の奏者」もファンタージの傑作だけど、「十二国記」も素晴らしい。
毎年夏になると読み返す「十二国記」。今年は「月の影 影の海」と「図南の翼」を再読。
心が折れそうになるのを懸命にこらえ、何が良いことで何が悪いことなのか葛藤し、どんどん成長していく主人公たち。
おれが守ってやるぞ陽子!
家来にしてくれ珠晶!

◆他サイトの感想◆
なまけもののひとりごと


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脳のなかの万華鏡 「共感覚」のめくるめく世界/リチャード・E・サイトウィック他

◆読んだ本◆
・書名:脳の中の万華鏡 「共感覚」のめくるめく世界
・著者:リチャード・E・サイトウィック他
・定価:2,800円
・出版社:河出書房新社
・発行日:2010/8/30

◆おすすめ度◆
・不思議な共感覚啓蒙書度:★★★
・アカデミックでファンタジックでアメージング度:★★★
・やっぱり!(おれだけ?)度:★★★★

◆感想◆
文字や曜日に色がついて見える、味や匂いに形がある、音を聞くと色が見えるといった共感覚に関する解説書。

共感覚を題材にした小説をチラホラ読んだことがあって、「おおっ、共感覚。不思議だねぇ」って思っていたんだけど。
本書を読んでその不思議感がちょっと整理された感じ。

なんで文字に色がついて見え、音を聞くと色が見えるのかというと、どうやら脳の中で領域のクロストークが原因らしいのだ。
色や音や匂いといった感覚の信号が混ざり合ってる?みたいな。
そんな共感覚を持っている人が23人に1人はいるという統計もあり、さらに感覚が未分化な幼いころは、誰もが共感覚を持っていたとする考えも。

著者は膨大な共感覚者の調査や、脳内の認知メカニズムとfMRIを使った試験、著名な共感覚をもった芸術家の作品考察、「クールなジャズ」「スイートな人」といった共感覚由来と思われるメタファーなどから、共感覚の世界を学術的に解き明かして行く。

個人的に一番感動したのは、共感覚じゃない人でも瞑想中や深い没頭状態、眠りに落ちる時に共感覚を体験することがあるとうくだり。
やっぱり!
眠る直前、小さな音を聞いた時につぶっている目の前が真っ白に光輝いたり、読んでいる本の活字に色がついて見えたりしたことがあった。
これって共感覚だったんだな!

マガーク効果とか腹話術効果とか聴覚主導の錯覚とか、よくテレビで取り上げられる認知科学に関する現象も紹介されていて、脳はワンダーランドなことを再認識。


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壱里島奇譚/梶尾真治

◆読んだ本◆
・書名:壱里島奇譚
・著者:梶尾真治
・定価:1,600円
・出版社:祥伝社
・発行日:2010/9/10

◆おすすめ度◆
・ファンタジックSF小説度:★★★
・離島での不思議な物語度:★★★
・「おれの人生を返してくれ~」な男性へ度:★★★★

◆感想◆
銀色の縫い目の無いアクリルたわしのような「おもしろたわし」。しかしのその成分さえ分からない不思議な物体。
入手先の壱里島へ行き調査するよう命じられた翔一だが、訪れた先で不思議な出来事に遭遇したり、善良な島民たちと触れ合ったり、素晴らしい大自然や美味しい海産物を食べたりして行くうち、島から離れがたくなってしまう。

さらに、「おもしろたわし」はきっかけでしか無く、そこに秘められたメッセージと翔一の果たす役割が明らかになり・・・っていう感じの、架空の離島を舞台にした不思議なお話し。

会社ではさんざんこき使われ、恋人にはふられ、人生の目標が何だか分からなくなった「おれの人生を返してくれぇ~」な男性なら、「こんな風光明媚な離島で暮らせたらいいよなぁ」と思わずにはいられない。

村起こしな生き甲斐に目覚めて行く主人公や、カジシンらしいロマンチックな展開も用意されて、汗ばむ夏の夜も気分は爽快だっ。

壱里島奇譚

梶尾 真治 祥伝社 2010-08-31
売り上げランキング : 5941


by ヨメレバ

本を読んでる時は、美しい自然や美味しそうな食べ物に惹かれ「住んでもいいかも」と思った壱里島。
人情味に溢れる島民や美しい女性もいて、これで近くにコンビニと本屋があれば言うことなしだね。

◆他サイトの感想など◆
【書評】『壱里島奇譚』梶尾真治著 - MSN産経ニュース

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