だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 最近は新旧歴史時代小説やエンターテイメント、ライトノベルにも手を伸ばして節操のない状態に。趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

さよなら、ベイビー/里見蘭

◆読んだ本◆
・書名:さよなら、ベイビー
・著者:里見蘭
・定価:1,600円
・出版社:新潮社
・発行日:2010/10/20

◆おすすめ度◆
・コミカル&ほんわかミステリー小説度:★★★★★
・錯綜する人間関係度:★★★★
・だーまぶるひゅおうぱーわー度:★★★★★

◆感想◆
母親を亡くし引きこもりになった雅祥は、突然父があずかってきた赤ん坊の面倒を見るはめになるが・・・

これはなかなか愉快。
振って湧いたような不幸がかさなり、誰の子だかも分らない赤ん坊を世話するハメになる少年・雅祥が主人公。

雅祥が引きこもりとなった事件の真相は?
赤ん坊の親はいったい誰なのか?
並行して描かれる女性や医師の物語は?
赤ちゃんのウンチはどうやって処理する!

そんな感じで描かれる、コミカルでほんわかなミステリー。
文章もストレートで癖がなく読みやすいし、引きこもり少年が立ち直って行く成長物語だったり、錯綜する人間関係がミソのミステリー小説だったり、親子のドラマだったり。

なんといっも赤ちゃんがかわいい。
無条件に、生きることに前向き。生命力に満ちている。

赤ちゃんが準主役というのはちょっとズルい気もするけど、万人にお勧めな小説だ。

さよなら、ベイビー

里見 蘭 新潮社 2010-10
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赤ちゃんに話しかける時、なんで「かわいいでちゅね~」みたいな赤ちゃん語になるんだろう?

ま、「お主、無邪気な笑顔をしておる」なんて話しかけるのも変だけど。

◆感想◆
里見蘭の公式ブログ 里見蘭blog
PEPERONIの記憶の本棚
ヒッキー探偵の爽快ドタバタ育児コメディ/新潮社

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抱影/北方謙三

◆読んだ本◆
・書名:抱影
・著者:北方謙三
・定価:1,600円
・出版社:講談社
・発行日:2010/9/30

◆おすすめ度◆
・ハードボイルド小説度:★★★★
・純愛=死=芸術として発露度:★★★
・格好いい?/陳腐!度:★★★

◆感想◆
画家でありバーのオーナーでもある男を主人公にした、北方謙三のハードボイルド小説。

自分の中にある「モノ」を、絵画として発露させる工程(絵を描く)が凄い。
出だしのこの描写に度肝を抜かれる。
また、食事や酒、セックスや他人の恋愛までをも。絵を描くことと結びつけるストイックさ。
ハードボイルドだねえ。

でもその一方で、画家である主人公のすべての原動力が、昔一目惚れした女への純愛という設定に、「陳腐だ」と思ってしまう。

遠い昔に一生懸命読んだ北方謙三だけど、いかにもハードボイルドな雰囲気に飽きちゃって。
あちこちで絶賛の嵐な本書も、以前のイメージを払拭するものではなかったって感じ。

バーを何件も経営している元チンピラで、描いた絵が高値で売買されるような天才的抽象画家で、喧嘩もそこそこ強いけど厭世的で、純愛。
冷静に考えると、全然共感できないよね。


マリアビートル」の感想書いた時みたいに、大勢の人の反感を買いそうだ。

抱影 (100周年書き下ろし)

北方 謙三 講談社 2010-10-01
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「抱影」にあまり魅力を感じないのは、自分がかってに造り上げた著者のイメージによるものだと思う。
なんか芝居臭い。
岩井志麻子の下品さに通じるものがあるような。
こまったこまった。

◆他サイトの感想◆
mmpoloの日記
書評 - BOOK:asahi.com(朝日新聞社)
北方ハードボイルドが帰ってきた!/WEB本の雑誌

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腰痛探検家/高野秀行

◆読んだ本◆
・書名:腰痛探検家
・著者:高野秀行
・定価:600円
・出版社:集英社文庫
・発行日:2010/11/25

◆おすすめ度◆
・腰痛克服?体験記度:★★★★
・あるある!なるほど!ワハハ!度:★★★★
・腰痛持ちの方へ/そうでない方も度:★★★★

◆感想◆
辺境作家にしてエンタメノンフの書き手・高野秀行が体験した、腰痛治療記。

探検家として有名な高野秀行が腰痛持ちだったとは!
ちょっとビックリだけど、それを本にしちゃうという大胆さも愉快。

寝てても痛く、起きてても痛いという腰痛を治そうと、整形外科はもちろん鍼灸院や整体にPNF、はては超能力者や心療内科の「名医」たちを尋ね歩く。
しかし治療してもなかなか腰痛は治らず、そこに「ラーメン屋のオヤジ理論」や「実は男が港で女が船だった論」といた人生哲学に目覚めてしまったり。

病気と人生はダブってくるものなんだねえ。

著者の飼い犬が世話になっている、犬猫病院の先生(鍼灸免許あり)にまで治療を受けるくだりは爆笑。
最後にはやけっぱちになって、「人間の脳は同時に複数の痛みを感じない」のをいいことに、自虐的な行動へ!

著者のファンはもちろん、腰痛持ちやそうでない方が読んでも笑ってうなづける面白さだ。

腰痛探検家 (集英社文庫)

高野 秀行 集英社 2010-11-19
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オヤジが集まると病気自慢に花が咲く。
やれ脚が痛い腰が痛い。こういう薬を飲んでて、ああゆう治療をしている。
そういう自分も腰痛持ちで、「布団をウォーターベッドに替えたら腰痛にならなくなった」と自慢していたことが・・・

「病気だけれど頑張ってる自分」を認めてもらいたいんだなあ。
ウォーターベッドは水漏れしたため低反発ウレタンマットレスに替えたけど、現状腰痛は再発していない。
嬉しい反面、なんか残念。

◆他サイトの感想◆
探検家がのめりこむ腰痛の世界~『腰痛探検家』/WEB本の雑誌
翌の読書手帖

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錨を上げよ/百田尚樹

◆読んだ本◆
・書名:錨を上げよ
・著者:百田尚樹
・定価:上1,900円 下1,900円
・出版社:講談社
・発行日:2010/11/30

◆おすすめ度◆
・メチャクチャ男の半生度:★★★★
・悪ガキ少年の成長しない物語度:★★★
・若い頃に読んだら間違いなく壁にぶつけた度:★★★★★

◆感想◆
昭和30年、大阪に生まれた男の半生を描いた物語。

半生といっても生まれてから30歳ちょっとまでなんだが、これが何だかトデンデモな男なんである。
落ちこぼれの悪ガキで喧嘩ばかりの子供時代からスタートして、放浪したり学生となったり色んな仕事に従事したり女とくっ付いたり離れたりの、行き当たりばったりな青春?物語。

なんといっても主人公の破天荒で猪突猛進、大雑把で無鉄砲な性格が凄い。
こんな奴実在しないだろうし、やることもメチャクチャなら言うこともメチャクチャ。まるで筋が通っていない矛盾だらけな男なんである。

若い頃に読んでいたら、その支離滅裂な自己矛盾で自己中な主人公の性格設定に怒りを覚え、間違いなく本を壁にぶつけてるんじゃないかと。

ところがいつまでたっても成長しないメチャクチャな主人公をなんだか許せちゃうのは、おれが歳とったせいか?

長編だけど一気に読ませるパワーはある。
けど、読み終わってもカタルシスを感じたりどんでん返しな落ちにびっくりしたり感動的なフィナーレがあったりする訳じゃないからご注意を。

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ステレオが我が家にやってきた日…/好きな音楽でも聞きながら

はじめは著者の自伝的小説なのかと思ったが、まさかねえ。

でも同世代の人には「手回しローラで脱水する洗濯機」とか「ゲバ文字で書かれた安保反対の立て看板」とか「山口小夜子に似た美人」とかの語句に「あったあった、そうそう!」といった共感も。

逆に言えば、著者と同世代ではない読者には、まったく共感が得られない?

錨を上げよ(上) (100周年書き下ろし)

百田 尚樹 講談社 2010-11-30
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錨を上げよ(下) (100周年書き下ろし)

百田 尚樹 講談社 2010-11-30
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祝もものき事務所/茅田砂胡

◆読んだ本◆
・書名:祝もものき事務所
・著者:茅田砂胡
・定価:945円
・出版社:中央公論新社 C★NOVELSファンタジア
・発行日:2010/11/25

◆おすすめ度◆
・探偵小説風少女小説度:★★
・「いかにも」な登場人物度:★★
・時代錯誤な展開が時代錯誤?度:★★

◆感想◆
やる気も根性も能力もない「もものき事務所」の所長・百之喜太郎。「確実に有罪になる弟を何とか無罪にして欲しい」という依頼が舞い込むが・・・

前作のあとがきに書かれていた「登場人物の名前が漢字だらけの本になります」との告知通り、現代の日本が舞台の本書、どうやら一話完結型の連作小説になるよう。

内容は今までのアクションシーンが多めだった作風と変わって、探偵小説風の少女小説。
殺人事件や弁護士や探偵風な人物が登場するけれど、血湧き肉踊る感がないな。
なんか残念な感じ。

二枚目で頭脳明晰だったり、かわいい顔してめっぽう強かったり、ダメダメ男なのに憎みきれなかったりな男性達や、スマートで凛とした姿が美しかったり、可愛いけどちょっとおバカだったり、自分というものをしっかり持っていたりな女性達。
いかにもな感じの登場人物。

扱ってる題材も、男尊女卑でプライドが服を着ているような旧家の吾藤田一族、そこでの時代錯誤なイタイ出来事がメイン。
今時こんな非常識なことやっている一家はないだろう?な時代錯誤ぶりだけど、それを物語のメインに据えるのもいささか時代錯誤な。

う~む、少女は今も昔もこういった内容に共感するのか。
よく分らないぞ!
ああっ、少女になって共感してみたいっ。


次作は「デルフィニア戦記」の番外編のよう。
楽しみだ。

◆他サイトの感想◆
ラノベ365日
迷宮ぐるぐる日記
時間旅行~タイムトラベル

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廃院のミカエル/篠田節子

◆読んだ本◆
・書名:廃院のミカエル
・著者:篠田節子
・定価:1,600円
・出版社:集英社
・発行日:2010/11/30

◆おすすめ度◆
・サスペンスホラー小説度:★★★★★
・修道院で起きたこととは?度:★★★★
・超常的で現実的で宗教的展開度:★★★★

◆感想◆
ギリシャで見つけた蜂蜜をビジネスにつなげようとする美貴。通訳の綾子と壁画修復師士の吉園を連れ立って、ギリシャの地方都市を目指すが・・・

ゾワゾワとした恐怖感をベースに、ホラーでサスペンスでオカルトなタッチの不思議なテイストの小説。
篠田節子の「絹の変容」とか「神鳥イビス」等の初期の小説を思い出させる作風。
最後まで緊張感がゆるまず、最近では出色の出来映えだ。

怪奇な出来事を宗教的な事象として描写しながら、その一方で科学的な見方もするというのは、たまさか同時期に読んだ「ゴーストハント1 旧校舎怪談」と似ているけど、小説の持つ雰囲気は全然違う。
「廃院のミカエル」はホラータッチで、背筋が寒くなるようなシーンが連続。
宗教画に込められた謎や、綾子の奇怪な行動、廃修道院での不思議な出来事など、畳み掛けるように物語を展開させて読者を放さない。

現実的な決着をつけているけど、布団の中でゾクゾクしながら読みたいホラー小説だ。

廃院のミカエル廃院のミカエル
篠田 節子

集英社 2010-11-26
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例えば野鳥が大量に死んでいるのを発見して、「悪魔の仕業だ」と考える人もいれば「未知のウイルスが蔓延しているのではないか?」と危ぶむ人もいる。
どっちが正しいとか間違ってるということはなく、考え方や信条によって捉え方が替わるということなんだろう。

日和見な仏教徒で理系な自分は、どっちかと言えば「未知のウイルス?」と考えるほうだけど、そのわりに悪魔や悪霊の出てくるホラー小説が恐かったりする。

何でだろう?

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