だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 最近は新旧歴史時代小説やエンターテイメント、ライトノベルにも手を伸ばして節操のない状態に。趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

オジいサン/京極夏彦

◆読んだ本◆
・書名:オジいサン
・著者:京極夏彦
・定価:1,500円
・出版社:中央公論新社
・発行日:2011/3/10

◆おすすめ度◆
・独居老人の日常/毅然と敢然と慮る度:★★★
・迷走する思考に「あるある!」度:★★★
・「七十二年六箇月と五日」の料理シーンに爆笑度:★★★★★

◆感想◆
72歳の独居老人の日常。それはちょっと迷走気味でちょっと悲しげだが、真っ正直で爆笑ものな日常だった…

ひとりでつつがなく暮らす老人の独白、といった体裁の小説なんだか、老人の迷走する思考に「あるある!」とうなづいてしまう。
うーむ、自分も十分に老人の素養あり、ということか。

子供から「オジイサン」でも「お爺さん」でもなく「オジいサン」というアクセントで呼ばれたことに端を発し、いらなくなったカセットテープの分別方法に苦悩し、外見の老成化と中身の老成化に考察し、近所のおばさんの台風のような一方的言動におののき、計画した朝食を作ろうとしたら思うようにいかずに慌てふためく。

全部自分の中で完結するような迷走する思考を文章にすると、こんな風に取留めのないものになるんだなあ。
笑っちゃうけれど自分だってほとんど同じような迷走する思考をしているし、一種ダダ漏れな思考を文章化した実験小説でもある。

オジいサン

京極 夏彦 中央公論新社 2011-03-10
売り上げランキング : 2340
by ヨメレバ

東北関東大震災で被災された方は大変な苦労をしている。
けれど食料や水、燃料をみんなで分け合って生活しようとする姿は、まさしく道徳的で人道的で正義的な行い。

幸い自分の住んでいるところは地震による被害はなかったものの、多くの人が食料品やガソリンや水を奪い合うように買いだめし、物不足に。

まるで囚人のジレンマ社会的ジレンマ)を絵に描いたような風景。
被災地のようにみんなで分け合えばみんなが助かるのに、疑心暗鬼にかられて自分だけ助かろうとする。

相手の痛みを本当にわからないと協調はありえないということ?
無限大にモノを供給するしかないということ?

オジいサンに訊いてみたい。

テーマ:読書感想文,おすすめミステリー小説,本 - ジャンル:小説・文学,本,感想,ミステリー

麒麟の翼/東野圭吾

◆読んだ本◆
・書名:麒麟の翼
・著者:東野圭吾
・定価:1,600円
・出版社:講談社
・発行日:2011/3/3

◆おすすめ度◆
・刑事物ミステリー度:★★★★
・加賀恭一郎の推理が冴える度:★★★★
・みんなが納得するために/ごまかさない勇気度:★★★★

◆感想◆
日本橋の欄干にもたれるようにうずくまった男。不審に思った巡査が見たのは、男の胸に深々と刺さったナイフだった・・・

高評価でベストセラーにもなった「新参者」に続く、加賀恭一郎シリーズの最新作。
帯には「加賀シリーズ最高作」の強気なコピー。

癖のない文章や予断を許さない展開や人情味あふれる登場人物設定で、あれよあれよと時間を忘れて読みふけっちゃう。
上手ですねぇ。
題名にも使われている「日本橋の麒麟像」をはじめ「浜町緑道」「日本橋七福神」など、ファンならずとも物語の舞台を訪れてみたい日本橋風情もいっぱいで、地域活性化にも繋がりそう?
出だしには振り込め詐欺を未然に防ぐようなシーンもあって、小説ものつ社会的な役割なんかも考えてる?みたいな。

ただ「加賀シリーズ最高作」というにはもう一息か。
「麒麟の翼」にどんな謎があるのか、過剰な期待をかけてしまったし。

麒麟の翼 (特別書き下ろし)

東野 圭吾 講談社 2011-03-03
売り上げランキング : 17
by ヨメレバ

作家生活25周年記念特別刊行と銘打って、違う出版社から3冊が順次刊行される。
第1弾が本書で、第2弾は6月、第3弾は9月に発売予定。
出す本がベストセラーになる東野圭吾、出版業界の救世主です。

◆他サイトの感想◆
朴念仁と居候
東野圭吾堂々の最新刊『麒麟の翼』/WEB本の雑誌/杉江松恋
加賀恭一郎シリーズ最新作、東野圭吾『麒麟の翼』/WEB本の雑誌/大森望

テーマ:読書感想文,おすすめミステリー小説,本 - ジャンル:小説・文学,本,感想,ミステリー

ばんば憑き/宮部みゆき

◆読んだ本◆
・書名:ばんば憑き
・著者:宮部みゆき
・定価:1,700円
・出版社:角川書店
・発行日:2011/2/28

◆おすすめ度◆
・江戸怪談話度:★★★★
・優しく悲しくせつなく度:★★★★★
・100%宮部みゆきな小説度:★★★★★

◆感想◆
江戸時代の市井の人々が遭遇する、優しく悲しくせつない不思議話し。

日暮らし」や「あんじゅう」にも登場した人物を配した、「あやし」の続編にあたる短編集。
もうどの短編を読んでも100%宮部みゆきな小説だ。
物語の展開といい、登場人物の描写といい、完璧宮部みゆき。

読みはじめるとスルスルと小説の世界に引き込まれ、著者の思うがままに気持ちを揺さぶられ、それでいてあざとさや作り物めいた不自然さを感じさせない筆力。
類型的であったり、悪人にさえ清らかな/もの悲しい魂を感じさせたりというワンパターンな展開さえ、ものともしない物語世界。

もう完成されてます。
著者名を伏せても、数ページ読めば「ああ、宮部みゆきの小説だな」とわかるほど、100%宮部みゆきな小説。



犬張り子

本書を読んで一番グッときたのは、本書の最後に集録されている「野槌の墓」の一文。

「幸せだった、生まれてきてよかったといった」

これだけ読むと陳腐だけれど、ほんの数行書きくわえるだけで心に沁みる文章にし、「ああ、おれはこんなことを人に言われるような人生を送っていないなあ」なんて忸怩たる思いを抱かせながら、ちゃーんと伏線にもなっているという宮部マジック。
いったいどうゆう作法で書けば、こんなことができるんだろう?
読んでいながらさっぱり分らない。

ばんば憑き

宮部 みゆき 角川書店(角川グループパブリッシング) 2011-03-01
売り上げランキング : 123
by ヨメレバ

◆他サイトの感想◆
今更ながら宮部みゆきは凄い!最新作『ばんば憑き』に圧倒される/エキサイトニュース

テーマ:読書感想文,おすすめミステリー小説,本 - ジャンル:小説・文学,本,感想,ミステリー

脱出山脈/トマス・W・ヤング

◆読んだ本◆
・書名:脱出山脈
・著者:トマス・W・ヤング
・定価:900円
・出版社:ハヤカワ文庫
・発行日:2011/1/15

◆おすすめ度◆
・ハラハラドキドキ冒険小説度:★★★★
・追いつ追われつサバイバル度:★★★
・雪山との戦い&タリバンとの戦い度:★★★

◆感想◆
捕虜のタリバン高位聖職者を移送していた米空軍機が撃墜される。航空士のパーンズは、タリバン高位聖職者と通訳のゴールド軍曹♀を伴い、ブリザードとタリバンを相手に決死の脱出行にのぞむが…

ブリザードが吹き荒れるアフガニスタンの山岳。
タリバン高位聖職者を奪回しようと、せまり来る敵。
ロッキー山脈でハンティングをしていた経験をもつ、主人公パーンズ。

パーンズとタリバン高位聖職者と女性通訳のゴールド軍曹がメインの登場人物という設定にくわえ、過酷な自然とタリバンを相手に戦うという、冒険小説の王道をいく設定。
本の裏表紙に書いてある内容を読んだだけで、冒険小説ファンなら痺れてしまいそうだ。

読んでみても、妙にデコデコ飾らずストレートな描写と展開に、それなりの面白さはあったのだけれど…

なんか、とっても惜しい!
アッサリし過ぎ。
もうちょっと手に汗握らせてくれっ、もっとドキドキさせて欲しいっ。

おいしいラーメンが冷めて出てきた、みたいな。
生ビールを一口飲んだらぬるかった、みたいな。
美味しいんだけどねえ。
とっても残念。


We set the temp on our fridge too low... / kalleboo

山岳冒険小説といえば、やっぱり「北壁の死闘」。
手に汗握っちゃう。
普通に美味しそうなラーメンが激辛、みたいな。
飲もうとした生ビールがカチンカチンに凍ってる、みたいな。

脱出山脈 (ハヤカワ文庫NV)

トマス・W・ヤング 早川書房 2011-01-07
売り上げランキング : 32991
by ヨメレバ

テーマ:読書感想文,おすすめミステリー小説,本 - ジャンル:小説・文学,本,感想,ミステリー

FC2Ad