だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 最近は新旧歴史時代小説やエンターテイメント、ライトノベルにも手を伸ばして節操のない状態に。趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

ダブルトーン/梶尾真治

◆読んだ本◆
・書名:ダブルトーン
・著者:梶尾真治
・定価:1,500円
・出版社:平凡社
・発行日:2012/5/23

◆おすすめ度◆
・ロマンチックサスペンスミステリーホラーSF度:★★★
・交錯する二人の女性の意識度:★★★
・最後はどうなる?… ひえぇ~度:★★★

◆感想◆
目を覚ましたときに、今日は自分が田村裕美だということがわかる。そして、まるで夢の記憶のように、自分が誰か他の人として生活している記憶が薄れて行く…

カジシン得意のタイムトラベルもののロマンチックでサスペンスなSF小説。
主役となる田村裕美と中野由巳の間で、意識がジワジワと交錯していく。
脇役の同僚や家族なんかもうまく巻き込んで、ロマンチックでサスペンスな物語に。
ちょっとときめいたり、不安でドキドキしたりする描写は、著者の独擅場。読んでるこっちもドキドキだ。

ラストは幸せな展開になるのか、悲しい結末が待っているのか、いったいどうなるんだ? 残りわずかでどんな落ちが?
と思いながら読み進むと、「ひえぇ~」な結末に。

穏やかなラストを予想していたから、ちょっとビックリ。
田村裕美も中野由巳も、幸せな生活を送って欲しくなる結末だ。

起きてすぐ、見た夢の記憶を書き留めようとするシーンがでてくるが、自分も実はやってみたことがある。
これがけっこう難しい。
文字に書いてるうちに、しょわしょわしょわ~っと消えてしまうんである。
それでいて楽しい夢だったとか、怖い夢だったとかの感情は覚えていて、とっても楽しい夢だった時は「何だ読もう! 二度寝して続きを見てやるっ」となるんだけどそんなにうまくいかないのが夢のじれったいところだ。

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名被害者・一条(仮名)の事件簿/山本弘

◆読んだ本◆
・書名:名被害者・一条(仮名)の事件簿
・著者:山本弘
・定価:840円
・出版社:講談社ノベルス
・発行日:2012/4/4

◆おすすめ度◆
・名探偵ならぬ名被害者登場度:★★★
・B級な雰囲気がたまらなくいい感じ度:★★★
・トンデモな落ちにワッハッハッ度:★★★

◆感想◆
名探偵が次々と殺人事件に遭遇してしまうように、何故か殺人事件のダーゲットにされてしまう名被害者もいておかしく無いだろうというコンセプト?のコメディ小説。

著者らしくオタク度やアニメ度、美少女度が高めのコメディ。
B級な雰囲気や、ツンとした主人公・一条(仮名)のキャラクターがくだけてていい感じ。
他の登場人物も笑わせるし、最後のトンデモな落ちもトンデモすぎて一種爽快だ。

真面目に読むとアレだけど、だらだらと読むとヘラヘラ笑えるしくみ。
作中作の、ミステリ研の雲母坂部長が夏休みをなげうって書いた「轟速狂時爆闘サーガー1・呪いの鮮血鬼伝説の館」は是非読んでみたくなる。
実際に刊行されたら絶対買っちゃう。

文明が高度に発達すると、お塩の容器の穴が詰まったり、シャーペンから次の芯が出てこなかったり、コピー機が紙詰まりを起こすなんてことはありえないらしい。

素晴らしい。
やっぱり文明は高度に限る。

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エス/鈴木光司

◆読んだ本◆
・書名:エス
・著者:鈴木光司
・定価:1,500円
・出版社:角川書店
・発行日:2012/5/15

◆おすすめ度◆
・「リング」みたいなホラー小説度:★★★★
・「らせん」みたいなサスペンス小説度:★★★
・「ループ」みたいなSF小説度:★★
・シリーズの続編度/納得の結末度:

◆感想◆
自殺の模様をネットで公開したという動画ファイル。映像制作会社に勤める安藤は、社長の米田から動画の分析を依頼されるが…

前半のホラーな展開は、まるで「リング」の続編みたいで、目新しさこそ無いもののけっこう面白く読んでいたけど、後半になると、なんだか「リング」と「らせん」と「ループ」が混在した展開に。
リング3部作をリミックスして1冊にしたような感じ。

リング3部作はホラーな「リング」はじまり、サスペンスな「らせん」、SFな「ループ」へと続き、読み進むと「何っ!」な掟破りとも取れる大胆な展開にビックリ仰天なんだけれど、それを1冊にリミックスしたような本書には、無理が見え隠れするような。

帯には「映画『貞子3D』原作」の文字が強調されているし、そうゆう大人の事情もあっての「エス」なのかも?
本書をいきなり読むより、「リング」「らせん」「ループ」を順番に読む方が3倍は面白いと思う。

小説の「リング」はとっても面白怖いホラー小説だったけど、映画の「リング」もテレビから出てくるシーンはのけ反るほど怖かったなあ。
映画「キャリー」のラストに匹敵するくらいののけ反り度だ。

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連環宇宙/ロバート・チャールズ・ウィルスン

◆読んだ本◆
・書名:連環宇宙
・著者:ロバート・チャールズ・ウィルスン
・定価:1,280円
・出版社:創元SF文庫
・発行日:2012/5/11

◆おすすめ度◆
・壮大なスケールのSF/ドラマチックな人間模様度:★★★★
・時間封鎖三部作ついに完結(仮定体の謎も解決)度:★★★★★
・面白い小説は、終わらない方がなお面白い度:★★★★★

◆感想◆
スピン封鎖が解除された地球のテキサス州で、一人の青年が警察に保護される。彼が持つノートには、1万年後に再生したタークの手記が書かれていた…

とうとう完結してしまった「時間封鎖」「無限記憶」「連環宇宙」の三部作。
「無限記憶」には本書の伏線がいっぱいあるようなので、すっかり忘れてしまった「無限記憶」の再読からしようと思い読みはじめると、これが面白い。
ささっと斜め読みしようと思ったのに、じっくり読んじゃう面白さ。
「忘れる」ってステキなことだ。

なんて感想はおいといて、本書「連環宇宙」は「無限記憶」に登場したターク等に新たな登場人物をくわえ、時間封鎖解除後の地球と、1万年後の世界が舞台となって展開。
物語はサスペンスと冒険小説風な味付けのSF的展開で進むが、ラストは仮定体の謎を含む大風呂敷をさらに広げて畳んじゃうという壮大なスケールのSFに。

「時間封鎖」を読みはじめたら、「無限記憶」「連環宇宙」と読まねば落ち着いた暮らしが出来ないというくらいの面白SFだ。
でも読み終わっちゃうと、なんかつまんない。
面白い長編小説は、「次はいったいどうなるんだ?ワクワク」という期待と興奮を抱かせながら、永遠に続いて欲しいぞ。

ロバート・チャールズ・ウィルスン 東京創元社 2012-05-11
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「時間封鎖」は続編が待ち遠しいシリーズのひとつだったんだけど、本書で完結。人生の楽しみがひとつ減ってしまった。
でも「天冥の標 」、「ソードアート・オンライン 」、「機龍警察 」、「十二国記 」(完結していないよな?)と気になる小説がいくつかあるので、頑張って生きて行こうと思う。(大げさ)

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木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか/増田俊也

◆読んだ本◆
・書名:木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか
・著者:増田俊也
・定価:2,600円
・出版社:新潮社
・発行日:2011/9/30

◆おすすめ度◆
・史上最強の柔道家 木村政彦の生涯度:★★★★★
・全部がクライマックス度:★★★★★
・身体の震えは本の重さだけじゃない度:★★★★★
・本当かよ?なエピソードも満載度:★★★★

◆感想◆
「史上最強の柔道家」「木村の前に木村なく、木村の後に木村なし」「鬼の木村」等の異名を持つ木村政彦の生涯を描いたノンフィクション。

こ、これは凄いっ。
まるで劇画を読んでいるような、格闘技モノのアクション小説のような破天荒さ。

貧しい家庭に生まれた木村政彦が、師匠の牛島辰熊(「鬼の牛島」、顔が凄すぎ)に見いだされ、激しい練習と天性の柔道センスにより15年間不敗の記録を樹立。
しかしプロレスラーに転向して力道山との「昭和の巌流島」決戦で謎のKO負けを喫してから、その存在自体が忘れ去られて不遇な生涯を送る。

著者は、木村政彦の生い立ちから亡くなるまでの詳細な記録を基に、その信じられない強さ、文字通り命懸けで臨む武道家としての姿勢、格闘技のあり方などを描き出す。
さらに柔道の練習風景(毎日2000回の打ち込みに使ったモミジの樹が枯れてしまった)、試合模様(木村に締められたエリオ・グレイシーの耳から大量の血が噴きだした)は手に汗にぎる描写というか、もう劇画を読んでいるような迫力。

そういった格闘技ものとしての面白さもさることながら、著者の木村政彦への思いがあふれているところも、本書の読みどころ。

史上最強と言われながらも奢ることなく武道にだけ邁進した愛すべきだし木村政彦が、たった一度「昭和の巌流島」決戦で負けたことで、その名誉を地に落としてしまう。

著者は敬愛する木村政彦の汚名を返上すべく、このダンベル替わりにもなろうかという分厚い本書を著したと言ってもいい。

木村政彦寄りの記述に異を唱える人も多いようだが、ノンフィクションとはいえ人間の書くもの。完全にフラットな文章なんてありえない。
それよりも木村政彦の凄さ、素晴らしさ、その無念さについて厚く厚く語る著者に、身体が震えっぱなしになってしまった。

木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか

増田 俊也 新潮社 2011-09-30
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自分は柔道やプロレスや総合格闘技には全然詳しくないし、木村政彦という名前すら恥ずかしながら知らなかった。 それでも本書に登場する力道山や大山倍達、グレイシー一族の名は知っている。

そこが「史上最強の柔道家」木村政彦の不遇な所なんだろうな。
メディアというのは、よくも悪くも生殺与奪の権を握っているんだなあ。

っていうか、自分が知らなすぎ?

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“負け犬”の伝説『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』/エキサイトニュース
『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』増田俊也著/本よみうり堂 YOMIURI ONLINE(読売新聞)
増田俊也『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』/本の虫クラブ

柔道と木村政彦がよくわかるTV番組「君は木村政彦を知っているか」

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