だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 最近は新旧歴史時代小説やエンターテイメント、ライトノベルにも手を伸ばして節操のない状態に。趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

花のさくら通り/荻原浩

◆読んだ本◆
・書名:花のさくら通り
・著者:荻原浩
・定価:1,600円
・出版社:集英社
・発行日:2012/6/30

◆おすすめ度◆
・ハートフルユーモア小説度:★★★
・いつの間にかみんなで街おこし度:★★★★
・斬新でも意外でも謎めいてもいないのにこの面白さ度:★★★★★

◆感想◆
かつては門前町としてにぎわっていた商店街。しかしいつの間にかシャッター通り商店街となりつつあるさくら通り商店街に、都落ちした弱小広告代理店が越してくるが…

どこの郊外にもありそうなシャッター通り商店街のさくら通り。
そこに小さな広告代理店が引越してきたことがきっかけになって、いつの間にか街おこしが始まってしまうという展開。

自分のことしか考えない商店主たち。
商店会の会長であることにこだわる長老たち。
同じ商店会のなかでの、新旧の確執。

もうどこにでも転がっていそうなありふれた設定で、先も丸っと読めてしまうし驚きも謎もない。
でもでもこれが面白い!

放火事件をきっかけに、なんとなくまとまり出す商店会。
魅力的でユーモラスな登場人物たち。
ほのかな恋。
いつの間にかみんながまとまって、さくら通り商店街がにぎわって行く?!

登場人物が活き活きとしていて共感できれば、斬新でも意外でも謎めいていなくてもこんなに面白く読めるんだ!という見本のような小説だ。

主人公の娘の手紙も泣かせるぜ。

「花のさくら通り」は、本文がツルツルでスべスベの紙でできてる。
たまに出会うんだけど、これがなんだか肌触りがいいんである。
思わず頬ずりしたくなる感触。
本書に登場する初音ちゃんのホッペのようだ。

◆関連記事◆
花のさくら通り 最終回 荻原浩/三つ子の活字中毒百までか?

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ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~/三上延

◆読んだ本◆
・書名:ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~
・著者:三上延
・定価:550円
・出版社:メディアワークス文庫
・発行日:2012/6/23

◆おすすめ度◆
・古書にまつわる連作短編ミステリー小説度:★★★
・古書店の母娘にまつわるミステリー小説度:★★★★
・栞子さんのキャラ萌え度:★★★

◆感想◆
大人気ビブリア古書堂の事件手帖シリーズの第3弾。
古書店の店主・栞子さんとアルバイト店員の大輔が、お客さんが持ち込んでくる古書にまつわる謎を解き明かして行くという連作短編ミステリー小説。

「ベストセラーは読む気が起きないなあ」なんて敬遠していたのに、未読本がが途切れた際に手に取って、思わず1,2巻を一気に読んでしまった面白シリーズ。
でもなんだか3巻目は中休みな感じ。

1,2巻と同じく、喪失したり盗まれたりした古書の謎を、超人見知りの恥ずかしがり屋にして黒髪の美人である栞子さんが、ササッと解き明かしていき、さらには登場人物たちの心のわだかまりまで解消させてしまうという展開。
並行して栞子さんと母親との間の確執も描写され、そっちの謎はこれからどうなるの?といった具合。

謎解きの妙、栞子さんのキャラ、古書店業界の内容などが本シリーズの読みどころなんだけど、俎上にあげられる実在の古書もとっても興味深い。
本書では「たんぽぽ娘」や「春と修羅」が取り上げられていて、特に栞子さんが説明してくれる「たんぽぽ娘」は読んでみたくなること請け合い。

このシリーズは、古本フリーク,古書マニアな小説でもあるなあ。

絶版で入手困難な「たんぽぽ娘
河出書房新社の奇想コレクションから発売が予定されているようだけど、首が伸びっぱなしの人が沢山いるよう。 もう原文で読むしかない?

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ビブリア古書堂の事件手帖 3 ~栞子さんと消えない絆~/reading archives

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天狼新星 SIRIUS: Hypernova/花田智

◆読んだ本◆
・書名:天狼新星 SIRIUS: Hypernova
・著者:花田智
・定価:1,600円
・出版社:ハヤカワSFシリーズ Jコレクション
・発行日:2012/5/25

◆おすすめ度◆
・サイバーパンクSF度:★★★★
・量子論と電脳空間を駆使したサバイバル小説度:★★★★
・「シュレーディンガーの猫」になった気分度:★★★★

◆感想◆
光ソリトンを使った高速通信の販売に着手したSOCOM社は、ネット上に膨大なノイズが発生していることを危惧していた。この問題を解決しようと、チームを立ち上げるが…

高速通信網や大容量記憶デバイスを背景に、人間の意識までも電子化可能なサイバーサバイバル小説。
コンピューターの専門用語とか量子論とかがバンバン出てくるハードな描写が、とってもサイバーパンクだ。

ネット上のノイズの正体を突き止めようと苦戦するSOCOM社のエンジニアたち。実はそのノイズは「特殊電脳兵」という電脳空間にいる兵士たちで、さらに彼らの目的は…!
という、どんどん話しがスケールアップしていく展開。
登場人物の性格や背景なども書き込まれていて、感情移入もしやすい。(ばか うけ好きだし)

頻出する量子論的な展開は、ちょっと飛躍し過ぎな印象だけど、それなりになんとなく納得しちゃうのは、そもそも量子論を正しく理解していないせいかも。
なんだか「シュレーディンガーの猫」になった気分で、分ろうがわからまいがドンドン物語は進んで行っちゃうんである。
「あなたは死んでるんです」と言われれば「はいそうです」と返事し、「あなたは生きてるんです」と言われれば「はいそうです」と返事しちゃうあなた任せ状態で読み終わっちゃって、おお、サイバーだなあ。

いわくありげな少女をもっと書き込んでくれたら、と思うのは、それに頼らないように書き込んだ著者に失礼か。

同時期に刊行されたDelivery/八杉将司 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)もあれよあれよと話しがスケールアッップしていく展開。
小松左京ばりに風呂敷は大きく広げたけど、畳むのも大きくみたいな印象でした。

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天狼新星 SIRIUS:Hypernova/BookReviewOnline
天狼新星/はなださとしの黒い地下室
天狼新星は著者の脚本による舞台の方が先なんである。舞台?ビックリ!

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迷宮警視正 最後の秘境/戸梶圭太

◆読んだ本◆
・書名:迷宮警視正 最後の秘境
・著者:戸梶圭太
・定価:667円
・出版社:徳間文庫
・発行日:2012/6/15

◆おすすめ度◆
・ぶっ飛び警察小説度:★★
・近年まれに見るブラック度:★★★★★
・反社会的/差別的/暴力的/狂気的/グロでシュール度:★★★★★

◆感想◆
原発反対集会に参加していた女性が、トチ狂った女にハンマーで殴られるという事件が発生。異様な雰囲気と存在感のある星野神警視正は事件の捜査を開始するが…

うむ、これはなんとも凄いというか突き抜けてるというか、トカジ作品の中でも近年まれに見るブラックな小説。

シリーズ1作目の「迷宮警視正」でも気を吐いた星野神警視正が、新たに強烈な個性の部下を従えて犯人を追いかけるという展開。
そして行き着く先が放射能で汚染されたフクシマ。

本文の前には注記書きがあって、

本作品は過激な暴力及び性描写などがございます。個人の判断によりお読みください。なお、登場人物の思考発言は作者ならびに徳間書店の思想立場を代弁するものではありません。

なんていうお断りがある。

さらに徳間書店編集部のブログには、「戸梶圭太先生『迷宮警視正』シリーズ第2巻刊行に関するお詫び」と題して、ネット上に流れた本書刊行中止の情報に対するお詫びなんかもあったりして。

言ってみれば、そんなお断りや刊行中止の噂が流布されるほどのブラックで暴力的でシュールな小説。
フクシマはすでにこうゆう題材にされてしまうほど、そして本書が妙にリアリティを持つほどの『秘境』であり、そう描写する著者の先鋭ぶりと、なかば命懸けな文章に圧倒される。

本書もインパクトのある小説だが、本書の刊行をめぐってのアレやコレやも興味深い。
戸梶圭太って、なんだか筒井康隆を思い起こさせる。

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戸梶圭太の身にふりかかったこと(第1章)/Togetter
「迷宮警視正2・福島恐怖の秘境」の刊行が校了後に中止を通告された、と作家・戸梶圭太(敬称略・以下同)がツイートしてからの約24時間を対象にまとめたもの
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迷宮警視正 最後の秘境(小説:戸梶圭太)/早トチリ感想文BOOKS
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ラバー・ソウル/井上夢人

◆読んだ本◆
・書名:ラバー・ソウル
・著者:井上夢人
・定価:1,900円
・出版社:講談社
・発行日:2012/6/6

◆おすすめ度◆
・ホラーな展開のサスペンス小説度:★★★★
・すべてが180度変わるミステリー小説度:★★★★★
・ビートルスの歌詞を読むとさらに切な悲しい度:★★★★

◆感想◆
特異な外見から引きこもった生活を送っていた音楽評論家の鈴木誠。彼が偶然居合わせたロケでモデルの美縞絵里と出会ったことが、すべてのはじまりだった…

魔法使いの弟子たち」以来2年ぶりの井上夢人。
本屋で手に取った時は、なんだか恋人にあったときみたいにドキドキしちゃうのは、ちょっと著者に惚れ込みすぎ?
本屋に行くと必ず井上夢人の棚を見て新刊がないか確認しちゃうのは、ちょっとストーカーっぽい?

そんな井上夢人フェチな自分よりも、もっとストーカーな人物として登場するのが鈴木誠。
その外見が深海魚のホウライエソを連想させるような怪奇さ。ゆえに人に会うことを厭い、家に引きこもった生活をしていたが、モデルの美縞絵里と運命的な出会いをしたことで、彼の人生が変わって行く。

物語は鈴木誠や美縞絵里など、事件にかかわった人の一人称で語られ、鈴木誠の美縞絵里へのストーキングがエスカレートしていくホラーでサスペンスな展開。

ただこれで終わるわけはなく、どんなミステリーな仕掛けがしてあるのか想像しながら読み進めるも、ことごとく著者のミスリードにひっかかってしまうという。ああ騙されるって一種快感だ。

はてさてその結末は!?

なんだか切なく悲しい、まるで青春小説を読んだ時のようなテイストは、井上夢人の持ち味だなあ。
善悪、美醜が180度変わってしまう落ちも見事。(だから一人称なのね)
ビートルズの”ラバー・ソウル”の歌詞といっしょに読みすすめると、とんでもなく緻密な構成と展開に感心し、さらにせつな悲しくなる。

本書の帯には「空前の純愛小説が幕を開ける」とあるけど、空前ということはないだろう?
著者の本で一番好きなのは「ダレカガナカニイル…」。
これこそ空前絶後、輪廻転生の恋愛小説だ。

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井上夢人が仕掛けるビートルズ×ストーカー×ミステリーの異色作/WEB本の雑誌
魔法使いの弟子たち/井上夢人/サイト内
ビートルズ(The Beatles) 【歌詞・和訳・動画・試聴】

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