だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 最近は新旧歴史時代小説やエンターテイメント、ライトノベルにも手を伸ばして節操のない状態に。趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと二つの顔~/三上延

◆読んだ本◆
・書名:ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと二つの顔~
・著者:三上延
・定価:570円
・出版社:メディアワークス文庫
・発行日:2013/2/22

◆おすすめ度◆
・お題は江戸川乱歩なミステリー小説度:★★★★
・ついにお母さん登場度:★★★
・栞子と大輔の関係に進展はあるのか度:★★★

◆感想◆
江戸川乱歩の膨大なコレクションと引き換えに、古い金庫をあけて欲しいという依頼が舞い込む。栞子と大輔は金庫をあけようと、謎めいた依頼主に聞き取りを始めるが…

だんだんシリーズ全体の流れが分かってきて、今回はついに栞子さんのお母さんも登場して、しだいに物語が収束する分「これからどうなる?」な興味も薄れていくようで、ちょっと寂しい。
お題の「江戸川乱歩」の古書にまつわる蘊蓄も、なんだかいつものキレがないような。

期待が大き過ぎたというか欲張り過ぎというか、困ったもんです。

それでも読み始めれば一気だし、ひねりの効いた仕掛けもちゃんとあるし、どうやらこのシリーズもそろそろ後半だということで、シリージ完結までは続編が待ち遠しい毎日なのです。

お母さんのマニアな問いに答える栞子の台詞が、本書の一番の読みどころだったりして、「ライトノベルなノリ、悪くないぞ」なんて思ったり。

「剛力彩芽もいいけれど、夏帆の方が原作のイメージに合ってる」に一票。

◆関連記事◆
ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~/三上延/サイト内

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ローカル線で行こう!/真保裕一

◆読んだ本◆
・書名:ローカル線で行こう!
・著者:真保裕一
・定価:1,500円
・出版社:講談社
・発行日:2013/2/12

◆おすすめ度◆
・町(赤字鉄道)おこし小説度:★★★★
・常套的だけど面白い度:★★★
・我が社にもカリスマ・アテンダントを!度:★★★

◆感想◆
廃線の危機にさらされていた、赤字ローカル線のもりはら鉄道。ここに新社長として抜擢されたのは、新幹線のカリスマ・アテンダント・篠宮亜佐美。三十一歳、独身。はたして赤字ローカル線の再生は成るのか…

寂れたローカル線の再生物語。
町おこしや村おこし小説のよくあるパターンを踏襲し、やる気のない社員やあきらめムードの沿線住民の気持ちが、カリスマ・アテンダントのアイデアや仕事への意気込みで、少しずつ改善していく。

一瞬「荻原浩の小説を読んでいるのか?」なんて思ったほど、既視感たっぷりの小説。
それでも読み始めると面白い。
新社長に影響されて社員のやる気がむくむくと出てきたり、経営を揺るがす不穏な事件が発生したり、ちょっとしたロマンスがあったり。
常套的だろうが既視感があろうが、面白いのは面白いんだからしょうがない。

「連鎖」「取引」などの小役人シリーズを手がけただけあって、役人の描き方もさすが。イラッとする程巧みだ。

「経営不振の会社に、是非カリスマ・アテンダントを!」と言いたくなる、夢のような赤字ローカル線再生物語。

荻原浩の「花のさくら通り」は、シャッター通りとなった商店街を再生していく物語。
本書と同じようなシチュエーションで、目新しさや驚きはないが、けっこう面白く読めちゃうから不思議。

◆関連記事◆
『ローカル線で行こう!』真保裕一著 読み出したらノンストップ/MSN産経ニュース
ローカル線で行こう!PRIVATE EYES
花のさくら通り/荻原浩/サイト内

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夢を売る男/百田尚樹

◆読んだ本◆
・書名:夢を売る男
・著者:百田尚樹
・定価:1,400円
・出版社:太田出版
・発行日:2013/2/26

◆おすすめ度◆
・作家志望者おちょくり度:★★★★
・出版業界裏話/自虐ネタ度:★★★
・ちょっといい話度:★★★

◆感想◆
出版社に勤める敏腕編集者・牛河原勘治は、自意識過剰で自己顕示欲が強い作家志望者を相手に、言葉巧みに「出版」という夢を叶えさせる編集者。果たしてその実態は…

多彩な著者がテーマにしたのは、本の出版を夢見る作家志望者と、それを自費出版モドキの手法で実現させる編集者の、いわば出版業界裏話し。

自分が書いた文章を本にして出版したいと考えている人間なんて「自意識過剰で自己顕示欲が強い」、さらに「小説を書くやつなんて頭がおかしいんだ」とまでけなしながらも、そんな作家志望者を言葉巧みにおだて上げ、金を巻き上げるというお話し。
著者自身のこともちょろっと触れたりするお遊びな自虐ネタも盛り込んで、ダメダメ作家志望者を滅多切り。

東野圭吾の「○笑小説」をブラックにした感じでしょうか。

それでも牛河原勘治の台詞を読んでいるうち、あこぎな商売をしているにもかかわらず、「夢を売るというのはあながち嘘じゃないのかも」と思わせるところがさすがです。

最後には心がジーンとくる場面も用意されてて、ちょっといい話しになってます。

「だな通信ミステリー文庫」なんていう弱小ブログにも、「ブログを書籍化しませんか?」なんていうメールがちらほら舞い込み、言葉巧みに誘ってくる。

ははーん、さては牛河原勘治が送り主だな。

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沈黙の町で/奥田英朗

◆読んだ本◆
・書名:沈黙の町で
・著者:奥田英朗
・定価:1,800円
・出版社:朝日新聞出版
・発行日:2013/2/28

◆おすすめ度◆
・社会派ミステリー小説度:★★★★
・子供たちの、そして大人たちの人間ドラマ度:★★★★
・重苦しい内容は悪夢を見させる度:★★★★★

◆感想◆
中学二年生の少年が部室の屋上から転落死する。これは事故なのか自殺なのか。少年がいじめにあっていたことが明るみになるが…

死亡した少年を中心に、友人や家族、学校関係者や警察などの登場人物を配し、リアルないじめの実態に迫ったミステリー小説。
「少年の死」という重たい出来事を核にして、登場人物たちの人間ドラマが描かれる。

事件が起きてからの時間軸に、過去の時間軸を織り交ぜながら真相が明らかになる展開は、ベテランの作家だけに飽きさせずダレない。
平易で癖のない文章で、物語にぐいぐい引き込まれる。

最後には真相が明らかになるというミステリー小説な構成だけれど、そこにはトリックとかどんでん返しとかの仕掛けはなく、ただ重苦しい「少年の死」があるのみ。

日常の横にある「少年の死」。
些細なきっかけで誰もが出会ってしまうかもしれない不幸が、とっても恐ろしい。

この本を読み終わった夜、会社で死亡事故が起きるという悪夢を見る。 夢にまで影響するこの小説。
なんてリアルなんだ。

宮部みゆきの「ソロモンの偽証」も中学生のいじめがテーマだったけど、内容はだいぶ違う。
「ソロモンの偽証」には著者の少年少女たちへの温かな眼差しを感じたが、本書には著者の冷徹な気迫を感じる。
同じようなテーマで小説を書いても、これだけ違う物語に。
真実なんて人間の数だけあるんだなあ。

◆関連記事◆
奥田英朗さん、初の新聞連載小説「沈黙の町で」/asahi.com(朝日新聞社)
奥田英朗「沈黙の町で」(朝日新聞)/「きむたく」日記@AREA SOSEKI
ソロモンの偽証 第I部 事件,第II部 決意,第III部 法廷/宮部みゆき/サイト内

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