だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 最近は新旧歴史時代小説やエンターテイメント、ライトノベルにも手を伸ばして節操のない状態に。趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

レジスタンス、ニッポン/戸梶圭太

◆読んだ本◆
・書名:レジスタンス、ニッポン
・著者:戸梶圭太
・定価:1,600円
・出版社:双葉社
・発行日:2013/3/24

◆おすすめ度◆
・型破り結婚相談所&革命小説度:★★
・型破りな展開度:★★
・型破りな登場人物度:★★★

◆感想◆
バンドでのメジャーデビューの夢を断たれた活人は、叔父の経営する結婚相談所で働くようになるが…

自分のことしか考えない常識はずれの会員ばかりの結婚相談所。
「そりゃあ相手が見つからないよ」なヒドイ大人たちの姿を、トカジらしい激ヤバな表現で描写しつつ、主人公活人が世の中に失望するのが前半。
後半ではなんと、そんな「腐った日本に革命を!」な、型破りの展開。

傭兵やテロリストの登場など、脈絡があるようなないような、意表をついた展開で考え込んじゃいます。
が、そんなことは気にせず、型破りな罵詈雑言に感動するのもいいかと。
これだけ悪口を考えるだけでもけっこう大変そうですが、トカジジャンキーにはちょっと物足りないかも。

同時期に出版された「おじいちゃんもう一度最期の戦い」
こっちの方が、激しくぶっちゃけてます。

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ブラックボックス/篠田節子

◆読んだ本◆
・書名:ブラックボックス
・著者:篠田節子
・定価:2,100円
・出版社:朝日新聞出版
・発行日:2013/1/30

◆おすすめ度◆
・社会派サスペンス小説度:★★★★
・カップ入りサラダは食べたくなくなる度:★★★★★
・近い将来に起きる(いや、もう起きてる)度:★★★★

◆感想◆
会社の不祥事で故郷に逃げ帰ってきた栄実。最新技術で生産された野菜を加工するサラダ工場で働くようになるが…

完全無農薬の無菌状態で生産する植物工場。
食の安心と安全を実現化するはずの植物工場に大きな期待をかける人がる一方、自然と大きく乖離した栽培方法に、そこはかとない不安を抱く人も多いはず。
本書はまるでドキュメンタリーのように、人々の抱く不安をリアルな形にした小説。

怖いですね。

何が怖いって、本当のことを知るのが怖い。
たとえば、原発の事故をきっかけに、その構造や仕組み、管理方法などがつまびらかになるほど、「これで大丈夫なの?」という疑問がいっぱい湧いてきて、どんどん不安になっていく。
知れば知るほど不安のタネが増えるばっかり。

本書を読むと、植物工場やカップ入りサラダの生産方法が、どんな風に行われているのか想像できる。
そこには外部の人間が知り得ない危うさが。
小説の主人公たちと同じように、「これじゃあダメだろう!」と思いながらも科学技術を100%拒否することもできないもどかしさ。
良質のドキュメンタリーやルポルタージュを読んだ時に感じるような危機感が横溢している。

小説だからすべてが現実のものではないけれど、近い将来起きてもおかしくない、ひょっとしたらもうすでに起きているかもしれないと思わせる説得力がある。

当分の間、コンビニのカップいりサラダは食べたくなくなること必至の小説。
(数日もすればムシャムシャ食べてるだろうけど)

ブラックボックスブラックボックス
篠田節子

朝日新聞出版 2013-01-04
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目に見えない「毒」に汚染されている食べ物もイヤだけど、泥や虫まみれの食べ物もイヤ。
危ない原発もイヤだけど、電気代が上がるのもイヤ。
近くにゴミ焼却場ができるのもイヤだけど、ゴミをきちんと分別するのもイヤ。
その「イヤ」をなんとか解決しようとする科学技術も信用できない。
一体どないせぇっちゅーねん。

◆関連記事◆
今週の本棚・本と人:『ブラックボックス』 著者・篠田節子さん/毎日jp(毎日新聞)
『ブラックボックス』 (篠田節子 著) 今週の必読/週刊文春WEB
ブラックボックス 篠田節子著 食の「安心安全」をめぐる小説/日本経済新聞
第134回:篠田節子さんその5「食の裏柄を描く『ブラックボックス』について」 - 作家の読書道/WEB本の雑誌

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私の嫌いな探偵/東川篤哉

◆読んだ本◆
・書名:私の嫌いな探偵
・著者:東川篤哉
・定価:1,500円
・出版社:光文社
・発行日:2013/3/20

◆おすすめ度◆
・本格ミステリー連作短編小説度:★★★
・少なくとも3回は思わず声を出して笑ってしまう度:★★★★
・少なくとも5回はムフフフと含み笑いしてしまう度:★★★

◆感想◆
うら若きビルオーナーの二宮朱美と、迷探偵の鵜飼が遭遇する、奇妙奇天烈な怪事件。烏賊川市シリーズの最新作。

マンションの壁に全力疾走し、瀕死の重傷をおう男性や、転落死した男性の口からエクトプラズム(!)が出てくるという、何とも懐かしいフレーズの怪事件を、おなじみの面々が解き明かすという本格ユーモアミステリー。

ムフフフと含み笑いしてしまうことしばしば。思わず声を上げて笑ってしまうこと数回。
著者のユーモアのセンスは健在です。

奇妙奇天烈な事件の設定だけに、展開もアクロバティックだけれど、面白いからすいすい読めちゃいます。
メタっぽいギャグも落語みたいでいい感じ。

私も昔、中岡俊哉の本を愛読していました。

◆関連記事◆
烏賊川市シリーズ/ウィキペディア

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生存者ゼロ/安生正

◆読んだ本◆
・書名:生存者ゼロ
・著者:安生正
・定価:1,400円
・出版社:宝島社
・発行日:2013/1/24

◆おすすめ度◆
・パニックサスペンス小説度:★★★★
・手に汗握る展開 度:★★★
・「ジェノサイド」を連想させる度:★★★

◆感想◆
北太平洋に浮かぶ石油掘削基地との連絡が途絶える。現場に急行した陸上自衛官三等陸佐の廻田が見たものは、多数の無惨な死体だった…

第11回『このミステリーがすごい! 』大賞を受賞した本書、出だしは未知のウイルスによるパンデミックものという感じだけれど、読み進むうち「なんだかウイルスじゃないぞ、何だなんだ?」のパニック小説。

前半はいったい何が原因で石油掘削基地の作業員が死んだのかのサスペンスな展開、後半は未知の恐怖との戦いというスリリングな展開。

話しがどんどんスケールアップしていき、日本政府や自衛隊を巻き込む大掛かりな事件に発展していく。
また、何が原因で石油掘削基地の作業員が死んだのかを追求していく様子は、「ジェノサイド」を連想させる。

ただディテールはもう一つ。
物語に勢いはあるけど、細かな部分の詰めが甘い感じ。
細部にこだわる読者には不満が残るかもしれないが、そこらへんをすっ飛ばして読めば、手に汗握りハラハラドキドキできるエンターテイメント小説。

巻末に記載されている「吉野仁」のコメントに共感。
そうなんである。「主人公が困難を克服しつつ己の力で敵と戦う姿を読みたいのだ」なのだ。

『このミステリーがすごい!』大賞の応募したときのタイトルは「下弦の刻印」
本書の中にもこのフレーズが出てくるんだけど。なんだか意味がよくわからない。
物語は終わっていないということなのか。

◆関連記事◆
第11回『このミステリーがすごい!』大賞 大賞受賞作『生存者ゼロ』のプロモーション動画/YouTube
6,「生存者ゼロ」安生正:著(宝島社)/夢幻キリコのブログ

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シャッター・マウンテン/北林一光

◆読んだ本◆
・書名:シャッター・マウンテン
・著者:北林一光
・定価:1,700円
・出版社:角川書店
・発行日:2013/2/28

◆おすすめ度◆
・サスペンス&ホラー小説度:★★★★
・正統派で由緒正しい展開 度:★★★★
・山荘とホテルに閉じこけられた人々の運命は!?度:★★★

◆感想◆
幽霊を見たという噂話が頻出している北アルプスの漆沢渓谷。不穏な空気が蔓延する中、麓に続く道で土砂崩れが起きる。ホテルと山荘に閉じ込められた登山客たちに、想像を超えた恐ろしい出来事が…

「ファントム・ピークス」「サイレント・ブラッド」という秀作を残して夭折した著者。遺品のワープロから発見、復元されたという本書は、過去の小説と同様、自然の山や動物などをあつかったケレンみのない文章がすばらしい。

目新しさや度肝を抜く展開はないけれど、由緒正しい日本のホラー小説の王道をいくような小説。

かつて見たこともないような動物たちの出現、少女の幽霊を見たという噂話、そしてサスペンスでホラーな展開を煽るような土砂崩れ。
ホテルや山荘に取り残された登山客たちに、そうれはもう恐ろしい出来事が襲いかかる!

「ファントム・ピークス」や「サイレント・ブラッド」は、ややサスペンスに傾いた物語だったけど、本書はホラーに重きを置いた内容に。
ホラー小説ファンにおすすめの一冊です。

「閉ざされたホテル」「ホラー小説」で思い起こすのはS・キングの「シャイニング」だけど、さらに「シャイニング」を連想させるのは本書の装画。
まるでS・キングの本なんである。
と思ったら、S・キングの本の装幀でおなじみの藤田新策とう人の装画。

角川書店の担当者も、「シャイニング」を連想したということかな。

◆関連記事◆
サイレント・ブラッド/北林一光/サイト内
シャイニング /アマゾン

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桜ほうさら/宮部みゆき

◆読んだ本◆
・書名:桜ほうさら
・著者:宮部みゆき
・定価:1,700円
・出版社:PHP研究所
・発行日:2013/3/11

◆おすすめ度◆
・心温まる時代小説度:★★★★★
・いつまでも物語に浸っていたい度:★★★★★
・大胆な展開もあり度:★★★★

◆感想◆
上総国搗根藩で小納戸役を仰せつかる古橋が、賄賂を受け取った疑いをかけられて自刃する。古橋家次男の笙之介は、江戸深川の長屋に住みながら、事件の真相を明かそうとするが…

江戸の下町を舞台にした、人情と淡い恋と御家騒動をいい塩梅でミックスした心温まる時代小説。
過去の著者の時代小説同様、完成してます揺るぎません。
温かく心地よい物語の世界に、いつまでもゆるゆると浸っていたくなる小説です。

笙之介と勝ち気なお嬢さんとの淡い恋あり、下町の人情話あり、ちょっとしたミステリーあり、尾家騒動の大胆な展開あり。
そして物語を貫く「名は字は体を表す」ならぬ「文字は体を表す」みたいなテーマもあって、うきうきしたり感心したりドキドキしたり。

浮き世の「ささらほうさら」を忘れるには「桜ほうさら」を読むのが一番。(決まったっ)

挿絵もほのぼのしているし、ペジには桜の花びらがレイアウトされているし、起こし絵なんていうアイテムも物語に出てくるし、たおやかな少女なら抱きしめて寝たくなるような本です。

◆関連記事◆
宮部みゆき『桜ほうさら』/PHP研究所 著者のインタビューも読めます
宮部みゆき最新作、浪人の恋と家族の難しさを描く時代ミステリー『桜ほうさら』を刊行/MSN産経ニュース

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