だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 最近は新旧歴史時代小説やエンターテイメント、ライトノベルにも手を伸ばして節操のない状態に。趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

四次元時計は狂わない 21世紀 文明の逆説/立花隆

◆読んだ本◆
・書名:四次元時計は狂わない 21世紀 文明の逆説
・著者:立花隆
・定価:800円
・出版社:文春新書
・発行日:2014/10/20

◆おすすめ度◆
・知的興奮を誘うエッセイ度:★★★★
・やっぱり先端サイエンスが面白びっくり度:★★★★
・元気そうでよかったよかった度:★★★★

◆感想◆
文芸春秋に掲載されていたエッセイ39話。
東日本大震災関連に関するエッセイを始め、政治や経済、文化や歴史と多岐にわたる著者の考えが知的興奮を誘う。

でも何と言っても興味深いのはサイエンスに関するエッセイ。

探査衛星「ケプラー」が、生命体が存在しそうな惑星を数多く見つけそうだとか、
超高精度の時計は、歩行する程度の速度でも相対論効果による時間の変化が分かっちゃうとか、
人間は将来、食物やエネルギーにみならずあらゆる物質を有機合成できるようになるかもしれないとか。

SFのネタになりそうな話題がてんこもり。
著者の語る先端サイエンスは面白びっくりで飽きない。

それにしてもエッセイを書くにあたり様々なところに出かけて、見て触って実感する取材はエネルギッシュ。
見習わないといけないけど、たぶん知りたいことはグーグルに訊いちゃうんだろうな、たぶん。

出雲大社ほどすごい建造物は日本中のどこにもない、なんて話しを聞くと、すぐに見に行く立花隆。
すぐにYuoTubeでみちゃう自分。

ゴキブリは余計だと思う。

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火星の人/アンディ・ウィアー

◆読んだ本◆
・書名:火星の人
・著者:アンディ・ウィアー
・定価:1,200円
・出版社:ハヤカワ文庫SF
・発行日:2014/8/25

◆おすすめ度◆
・サバイバルSF冒険小説度:★★★★★
・何事にもめげない前向きな主人公度:★★★★
・単純明快なストーリーがいい度:★★★★
・火星に行くときは持っていきたい本度:★★★★★

◆感想◆
猛烈な砂嵐により探査を中止せざるを得なくなった火星探査隊。宇宙船で火星を離脱する寸前、砂嵐により折れたアンテナがマーク・ワトニーを直撃する…

火星に一人取り残された主人公のマーク・ワトニーが、なんとかして生き残ろうと奮闘するサバイバルSF冒険小説。
派手なアクションはないものの、次々と直面する不測の事態に対応する主人公の奮闘が読ませる。

途絶した地球との通信は?
残り少ない食料は?
水や空気は?
さらにどうやって地球に帰還するのか?

エンジニアにして植物学者である主人公が、持てる知識と技術を駆使する様子がSFならではの読みどころ。
派手なアクションシーンはないものの、最後まで飽きさせずハラハラドキドキの展開。
無人島やジャングルが舞台のサバイバル小説だと普通?の冒険小説になるところだが、火星を舞台にしたところがミソだなあ。

それにしてもリアル。
ちょっと読者サービスのユーモアを交えた、実際に起きた事故のノンフィクション、あるいは火星遭難者の手記にといってもいいほど。
将来火星探査に行くときは持って行きたい本だ。
万一不測の事態が発生しても、本書の主人公のようにめげずに前向きに頑張れば、何とかなるような気にしてくれるだろう。
(たぶん宇宙空間にも行かないだろうけど)


本書はリドリー・スコット監督で映画化進行中。

◆関連記事◆
火星の人 アンディ・ウィアー著 宇宙サバイバル、直球のSF/日本経済新聞
アンディ・ウィアー/火星の人/life-4
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純喫茶『一服堂』の四季/東川篤哉

◆読んだ本◆
・書名:純喫茶『一服堂』の四季
・著者:東川篤哉
・定価:1,450円
・出版社:講談社
・発行日:2014/10/8

◆おすすめ度◆
・ユーモアミステリー小説度:★★
・びっくり仰天のうっちゃり度:★★★★
・「珈琲店タレーランの事件簿」のパロディ度:★★★

◆感想◆
純喫茶『一服堂』の店主・ヨリ子は、超恥ずかしがり屋の人見知り。所見の客にはまともな挨拶もできない彼女が、何故か事件を解決する能力は名探偵そこのけで…

安楽椅子探偵もののユーモア連作ミステリー小説。
「珈琲店タレーランの事件簿」のパロディなんだけれど、「珈琲店タレーランの事件簿」を読んでいないのにおおよそ内容が分かっちゃうからびっくり。

ユーモアもミステリーも、たくさんある著者のシリーズ物と似た雰囲気で、やや物足りない感じ、なんて思って読んでいたらラストの「バラバラ死体と密室の冬」はびっくり仰天のうっちゃりを決められた感じ。
表紙のかわいらしいヨリ子さんのイメージとはほど遠い密室の解決は、「ええい、これでどうだ。文句があるなら自分でユーモアミステリー書いてみろ」的な破れかぶれ?ぶり。

文句ありません。

っていうか、もっと破天荒な解決のユーモアミステリが読んでみたいです、はい。

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フォルトゥナの瞳/百田尚樹

◆読んだ本◆
・書名:フォルトゥナの瞳
・著者:百田尚樹
・定価:1,600円
・出版社:新潮社
・発行日:2014/9/25

◆おすすめ度◆
・不思議な能力を持った男の半生度:★★★★
・究極の選択度:★★★
・どうなる!どうなる?度:★★★★
・こうなる?そうなるの↓度:★★

◆感想◆
電車に乗っていた慎一郎は、ふと目にしたサラリーマンの手が透けているように見えた。目の錯覚かと思ったが…

不幸な生い立ちで友人もおらず、趣味もなければ彼女もいない。そんないつもうつむいて歩いているような主人公の慎一郎だったが、あるとき自分に不思議な能力が備わっていることに気づいてから、人生が大きく変化する。
その能力をどう使うべきなのか、あるいは使わないほうがよいのか。
あまりに人に与える影響力が大きく、次第にその力を持て余し、さらにそれに振り回されるようになるが…

読みやすさは抜群の本書。
読み始めは「どうなる!どうなる?」という先を知りたい気持ちでぐんぐん読み進むが、次第に「こうなる?そうなっちゃうの」というミステリーファンならずとも結末が予想される展開に。

ウブな恋愛模様はそれなりにドキドキするけれど、思いもよらないびっくりなラストでドキッとしたかったと思うのは贅沢?

「カルネアデスの舟板」とか「トロッコ問題」とか「冷たい方程式」とか、究極の選択を迫られるケースが物語のテーマになるこもしばしば。
結局は自分に身近な人を助けるということになるんだろうなあ。
でもそうしないところにドラマが生まれるんだろうなあ。

鹿の王/上橋菜穂子

◆読んだ本◆
・書名:鹿の王 (上) ‐‐生き残った者‐‐ 鹿の王 (下) ‐‐還って行く者‐‐
・著者:上橋菜穂子
・定価:上1,600円 下1,600円
・出版社:角川書店
・発行日:2014/9/25

◆おすすめ度◆
・一気読みの異世界ファンタジー小説度:★★★★★
・巨大帝国の思惑と弱小部族の生き残り戦略度:★★★★
・人体∽社会 とちらも生きるために必死度:★★★★
・やんちゃで元気なユナが可愛すぎる度:★★★★★

◆感想◆
帝国に囚われ岩塩鉱で強制労働を強いられる戦士団<独角>のヴァン。ある夜、岩塩鉱の労働者たちが犬の群れに襲われ、そのかみ傷が原因と思われる奇病が発生するが…

「守り人」シリーズや「獣の奏者」シリーズがめちゃ面白い上橋菜穂子の長編。
期待に違わず面白い。
巨大帝国の思惑や、帝国に吸収され虐げられている弱小部族の反乱や、特異な医療技術を武器に帝国と一定の距離をとりながらも活路を見出そうとしている民族など。
様々な人々の想いを背景に、岩塩鉱で強制労働させられていた戦士のヴァンが、いかにして生き残るかという一種のサバイバル小説でもある。

物語の発端となるのは犬のかみ傷が原因と思われる奇病。
罹患した人や、それを治そうとする医師、さらにその病を戦略的に使おうとする人たち。
そして自らの生き残りをかけた行動さえ、人々の思惑に捕われ翻弄される主人公のヴァン。
いったい彼の前にはどんな道があるのか…

物語は、なにもここまで複雑にしなくても、と感じるような多面的な展開である一方、人体はミクロコスモスというテーマを社会にも敷衍する構成とすれば納得も。
医学に関する考え方や、人が生きるという意味を自らに問う登場人物たち。子供向けのファンタジーと侮ってはいけない。

もう一つの読みどころが、ヴァンが助ける幼い「ユナ」と名付けられる少女。
やんちゃで元気なユナが、それはもう可愛すぎ。
戦士じゃなくても、この子を助けるためには何でもしようという気になっちゃうこと必至のお茶目さ。
ラストも爽やかで暖かい。

著者の「精霊の守り人」が、綾瀬はるか主演で2016年にNHK大河ファンタジーとして実写化。 個人的には、女用心棒のバルサは天海祐希が一押しだったのですが。

◆関連記事◆
『鹿の王』上橋菜穂子 著者インタビュー

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