だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 最近は新旧歴史時代小説やエンターテイメント、ライトノベルにも手を伸ばして節操のない状態に。趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

書楼弔堂 破暁/京極夏彦

◆読んだ本◆
・書名:書楼弔堂 破暁
・著者:京極夏彦
・定価:1,900円
・出版社:集英社
・発行日:2013/11/30

◆おすすめ度◆
・著名人を通して現れる明治時代度:★★★
・人々の迷いを「本」で解決度:★★★
・偉人の迷い/凡人の悩み度:★★★★

◆感想◆
明治時代、毎日のらりくらりと過ごしていた高遠は、膨大な本を所蔵する書楼弔堂という本屋に巡り会う。いつしか書楼弔堂の常連となった高遠は、不思議な縁で当時の著名人たちと邂逅するが…

「本は一冊あればいい、その一冊に巡り合うために何冊も読むのだ」という書楼弔堂の主人は、訪ねてくる顧客(泉鏡花、井上圓了、ジョン万次郎、勝海舟などの有名な偉人たちだ)に、京極堂ばりの鋭い読みで彼らの抱えている苦悩や迷いを読み取り、一冊の本を薦める。

京極堂が妖怪をモチーフに「憑き物落とし」をするのに対し、書楼弔堂の主人は「本」で迷いを断ち切るというのがユニークで対比的。

「手段こそが目的」とか「皆が進んでいる方向に目的があるとは限らない」とか「信ずることが即ち正しきこととは限らない」とか、理解しやすい言葉で苦悩・迷いのもとをえぐり出して「迷いを断つのはこの本だ」みたいな。

泉鏡花、井上圓了、ジョン万次郎、勝海舟などの有名人の人となりや当時の情勢がが浮かび上がってくる描写も秀逸だし、さもありなんと思わせる彼らの迷いも、現代にてらし合わせても色あせることのない迷いで、共感する人も多いのでは。

とかいっときながら一番自分が共感したのは、難しい本を読んで頭が良くなったような気になってるのが分かってる凡人・高遠だったりします。

個人的に共感する部分も多くあるけれど、全体的に歴史物に疎い自分にはエピソードがもったいなさ過ぎ。

◆関連記事◆
『書楼弔堂 破曉』京極夏彦/集英社
書楼弔堂 破暁 [京極夏彦]/久しぶりに食べたナタデココには根性がなかった

テーマ:読書感想文,おすすめミステリー小説,本 - ジャンル:小説・文学,本,感想,ミステリー

眩談/京極夏彦

◆読んだ本◆
・書名:眩談
・著者:京極夏彦
・定価:1,500円
・出版社:メディアファクトリー
・発行日:2012/11/30

◆おすすめ度◆
・不思議で怖くて怪異な物語度:★★★
・「世にも奇妙な物語」の原作になる度:★★★★
・不条理なのに納得度:★★★

◆感想◆
「幽談」「冥談」に続く「 」談シリーズ第三弾。

不思議で怖くて怪異な物語の短編集だけれども、なんだか著者の意図がはっきりしててまんまり怖くない感じ。
出来事や展開は、それはそれは不条理感満載なんだけれど、ラストは感情的には不条理感なしで真っ当な落ち。
出来事は不条理だけど、内容はストレート。

作風がかわったのか、読む方がかわったのか。
それとも「幽談」や「冥談」も同じテイストの小説だったのか。
読んでるうちに今も昔もごっちゃになって、現実と虚構がないまぜになり、何が何やらわからなくなってくるのは本書に眩まされているのかも。

ここにおさめられている前短編を「世にも奇妙な物語」の原作にするっていうのもいいかも、なんて思ったり。
でもこの浮世離れした雰囲気をテレビドラマでかもし出すのは大変か。

相変わらず本の作りは凝っていて、題名をそんなはじっこに書かなくてもいいんじゃないの?みたいな。
文字が色付きだし、紙には薄く模様があるし、書体も「と」が「ご」に見えるし。
ことごとくが興味を惹く。
深い意図はわからないけど。

◆関連記事◆
幽談/京極夏彦/サイト内
冥談/京極夏彦/サイト内

テーマ:読書感想文,おすすめミステリー小説,本 - ジャンル:小説・文学,本,感想,ミステリー

定本 百鬼夜行 陽/京極夏彦

◆読んだ本◆
・書名:定本 百鬼夜行 陽
・著者:京極夏彦
・定価:1,750円
・出版社:文芸春秋
・発行日:20112/3/20

◆おすすめ度◆
・ホラー小説(怪談話)度:★★★
・取り憑かれた人達(共感すると恐い夢をみそう)度:★★★
・脇役を主役に(本編を読みたくなる)度:★★★★

◆感想◆
百鬼夜行シリーズの最新作。
長編に登場した脇役たちを主人公に据え、題名とする妖怪になぞらえた怪談話にするという趣向は「百鬼夜行 陰」と同じ。
とかいいながらも、「百鬼夜行 陰」は1999年の発行だし、一番最近の長編「邪魅の雫」が発行されてからだいぶ時間が経つこともあって、本書に登場する人物たちが、長編の方でどんなふうに描かれていたか思い出すのはムヅカシイ。(長編の方を読みたくなるけど、本の厚さにタジタジ…)

でもそんな予備知識(記憶)がなくても、面白く読める。

苦しかったり、辛かったり、惨かったりした体験により、精神が不安定になって、まるで妖怪に取り憑かれてしまたような登場人物。
登場人物とどこかで共振するととっても恐い夢を見そうなくらい、不気味でおどろおどろしく悲しい。
「人間って、こんなにも衝動的で矛盾していて不可解な生き物なんだ」ということを感じさせるし、それはそのままそっとしておいた方が幸せに暮らせるんだろうなあ、と思わせる。

どうしても見えてしまう「榎津礼二郎」は、だから探偵になったのか?

本作に登場する登場人物と、百鬼夜行シリーズの関係
(本作の題名:登場人物名:百鬼夜行シリーズ書名)
・青行燈:平田謙三 :陰摩羅鬼の瑕
・大首 :大鷹篤志 :邪魅の雫
・屏風闚:多田マキ :絡新婦の理
・鬼童 :江藤徹也 :邪魅の雫
・青鷺火:宇田川崇 :狂骨の夢
・墓の火:寒川秀巳 :次作「鵺の碑」
・青女房:寺田兵衛 :魍魎の匣
・雨女 :赤木大輔 :邪魅の雫
・蛇帯 :桜田登和子:次作「鵺の碑」
・目競 :榎木津礼二郎

京極夏彦作品人名事典で探すと、ちょっとは記憶が戻るかも。
人名は京極夏彦作品人名事典に、書名はウィキペディアにリンクしています。

定本 百鬼夜行 陽

京極 夏彦 文藝春秋 2012-03
売り上げランキング : 346
by ヨメレバ

定本 百鬼夜行 陰

京極 夏彦 文藝春秋 2012-03
売り上げランキング : 1107
by ヨメレバ

子供も頃、一人で寝られない夜を過ごしているとき、手足がジンジンと太くなって行き、それはもう自分の手足じゃないみたいな感覚に陥り、それでいて肌に鋭敏な感覚がるような…
自分の身体が膨らんで行くような、身体の界面があやふやになるような感覚を覚えたことが。

本書を読んで、そんな子供の頃の記憶が蘇りました。
だから何?ってこともないんですが。

◆関連記事◆
『定本 百鬼夜行 陽』(京極夏彦著)著者インタビュー 人の世の哀しみを妖怪に托して/本の話WEB
百鬼夜行 陽 京極夏彦 文藝春秋/この世の全てはこともなし

テーマ:読書感想文,おすすめミステリー小説,本 - ジャンル:小説・文学,本,感想,ミステリー

ルー=ガルー2 インクブス×スクブス 相容れぬ夢魔/京極夏彦

◆読んだ本◆
・書名:ルー=ガルー2 インクブス×スクブス 相容れぬ夢魔
・著者:京極夏彦
・定価:文庫:上下各700円 ノベルス:1,400円 単行本:3,200円
・出版社:講談社
・発行日:2011/10/14

◆おすすめ度◆
・近未来ミステリー度:★★★
・少女たちがめっぽう活躍する冒険小説度:★★★★
・天才少女都築美緒は探偵榎木津礼二郎だ!度:★★★★

◆感想◆
あのおぞましい事件から3ヶ月。被害者の一人であった作倉雛子が、「毒」の入った小壜を友人・律子に渡したことから新たな事件が・・・

「おぞましい事件から3ヶ月」といわれても、リアル世界では10年も過ぎちゃって刊行された「ルー=ガルー」の続編。
登場人物や物語の設定やおぞまし事件の内容なんか全然覚えていないけれども、それでもけっこう面白く読める近未来ミステリー冒険小説。
前作はあんまり面白くなかたような印象があるんだけど・・・
(内容は覚えていないのに、印象は覚えているという不思議!)

物語の舞台は、携帯端末での情報交換による繋がりが当たり前になり、逆にリアルなコミュニケーションが希薄になった近未来。学校に通う14歳の少女たちが、ひょんなことから忌まわしい事件に巻き込まれてしまうという内容。

ユニークなキャラクターたちが、人生とか人と人との繋がりとかに悩んだりしながらも、相手の顔を見て、言葉を聞いて、体温を感じてのコミュニケーションに確固としたものを実感するという反情報化社会な展開と、少女たちが「毒」にまつわる事件に巻き込み巻き込まれながらも、ド派手に事件を解決して行く展開がライトノベル風。

特に天才少女・都築美緒が天衣無縫のハチャメチャぶりで爽快。
彼女が活躍する部分はカタルシスだなあ。
百鬼夜行シリーズに登場する探偵・榎木津礼二郎なみに豪快で有無を言わせぬ解決ぶりだ。
舞台や登場人物は違うけど、ドロドロな人間の業みたいな百鬼夜行シリーズの内容ともけっこう似ているし。

実は本書と「邪魅の雫」とが関連もあったりするらしいのだが、とても覚えきれない京極ワールド。
でも大丈夫です。

ルー=ガルー2 インクブス×スクブス 相容れぬ夢魔

京極 夏彦 講談社 2011-10-14
売り上げランキング : 7713
by ヨメレバ
ルー=ガルー2 インクブス×スクブス 相容れぬ夢魔<講談社ノベルス>

京極 夏彦 講談社 2011-10-14
売り上げランキング : 232
by ヨメレバ
分冊文庫版 ルー=ガルー2 インクブス×スクブス《相容れぬ夢魔》(上) (講談社文庫)

京極 夏彦 講談社 2011-10-14
売り上げランキング : 1114
by ヨメレバ

単行本、ノベルス、文庫、電子書籍の4形態で同時発売な本書。
近所の本屋には文庫とノベルスが平積みされていたけれど、単行本は棚に1冊だけ。

やっぱり。

◆関連記事◆
京極夏彦 ルー=ガルー2 インクブス×スクブス 相容れぬ夢魔/講談社BOOK倶楽部(著者インタビュー記事あり)
分冊文庫版 ルー=ガルー《忌避すべき狼》(上)/アマゾン

テーマ:読書感想文,おすすめミステリー小説,本 - ジャンル:小説・文学,本,感想,ミステリー

虚言少年/京極夏彦

◆読んだ本◆
・書名:虚言少年
・著者:京極夏彦
・定価:1,700円
・出版社:集英社
・発行日:2011/7/30

◆おすすめ度◆
・小学生の日常度:★★
・起きる事件のくだらなさに笑える度:★★★
・何かの比喩のようだか回りくどくて分らない度:★★★

◆感想◆
小学生3人を主人公にした、ばかばかしい小学生の日常連作短編小説。

なんだか「オジいサン」の小学生版みたいな小説で、お約束とはいえ「こんなにうまく詭弁や虚言を弄する小学生はいないだろう」な小学生3人が、学校で起きる事件をいかに面白おかしく笑い飛ばそうかとする?小説。

著者の小説はそのくどさやねちっこさが持ち味だけど(京極堂シリーズはそれが醍醐味だったな!)、本書や「オジいサン」はやや空回り気味。
それでも「お楽しみ会」とか「運動会」とか「コックリさん」とかを題材に、超くだらない日常的笑いを巧みに醸成して落とす構成は見事。

上手だけれどマニアック過ぎる?
何かの比喩のようにも読めるが、回りくどくてよく分らない?


小学生が大人の言葉を知っていたら、きっとこんな風なんだろうなあ。
ということは、歳をとればそれなりに語彙は豊富になるけれど、思考内容は小学生のソレと変わらないのかもなあ。
なんてゆう風な感想も。

虚言少年

京極 夏彦 集英社 2011-07-26
売り上げランキング : 1054
by ヨメレバ

「ストリーキング」とか「中岡俊哉」なんていう昭和なキーワードに反応する年代の方には、自分が小学生だった頃をだぶらせながら読んだりもできる。
やだやだ、歳とりたくないっ。

◆関連記事◆
『虚言少年』刊行記念インタビュー/集英社 WEB文芸「レンザブロー」
虚言少年 京極夏彦 集英社/この世の全てはこともなし
読書日記49 「虚言少年」/お電話番の日々雑感
オジいサン/京極夏彦/サイト内

テーマ:読書感想文,おすすめミステリー小説,本 - ジャンル:小説・文学,本,感想,ミステリー

オジいサン/京極夏彦

◆読んだ本◆
・書名:オジいサン
・著者:京極夏彦
・定価:1,500円
・出版社:中央公論新社
・発行日:2011/3/10

◆おすすめ度◆
・独居老人の日常/毅然と敢然と慮る度:★★★
・迷走する思考に「あるある!」度:★★★
・「七十二年六箇月と五日」の料理シーンに爆笑度:★★★★★

◆感想◆
72歳の独居老人の日常。それはちょっと迷走気味でちょっと悲しげだが、真っ正直で爆笑ものな日常だった…

ひとりでつつがなく暮らす老人の独白、といった体裁の小説なんだか、老人の迷走する思考に「あるある!」とうなづいてしまう。
うーむ、自分も十分に老人の素養あり、ということか。

子供から「オジイサン」でも「お爺さん」でもなく「オジいサン」というアクセントで呼ばれたことに端を発し、いらなくなったカセットテープの分別方法に苦悩し、外見の老成化と中身の老成化に考察し、近所のおばさんの台風のような一方的言動におののき、計画した朝食を作ろうとしたら思うようにいかずに慌てふためく。

全部自分の中で完結するような迷走する思考を文章にすると、こんな風に取留めのないものになるんだなあ。
笑っちゃうけれど自分だってほとんど同じような迷走する思考をしているし、一種ダダ漏れな思考を文章化した実験小説でもある。

オジいサン

京極 夏彦 中央公論新社 2011-03-10
売り上げランキング : 2340
by ヨメレバ

東北関東大震災で被災された方は大変な苦労をしている。
けれど食料や水、燃料をみんなで分け合って生活しようとする姿は、まさしく道徳的で人道的で正義的な行い。

幸い自分の住んでいるところは地震による被害はなかったものの、多くの人が食料品やガソリンや水を奪い合うように買いだめし、物不足に。

まるで囚人のジレンマ社会的ジレンマ)を絵に描いたような風景。
被災地のようにみんなで分け合えばみんなが助かるのに、疑心暗鬼にかられて自分だけ助かろうとする。

相手の痛みを本当にわからないと協調はありえないということ?
無限大にモノを供給するしかないということ?

オジいサンに訊いてみたい。

テーマ:読書感想文,おすすめミステリー小説,本 - ジャンル:小説・文学,本,感想,ミステリー

西巷説百物語/京極夏彦

◆読んだ本◆
・書名:西巷説百物語
・著者:京極夏彦
・定価:1,900円
・出版社:角川書店
・発行日:2010/7/30

◆おすすめ度◆
・おとろしいミステリー小説度:★★★
・あばかれる人間の業度:★★★
・これで終いの金比羅さん度:★★★

◆感想◆
舞台を関東から関西に移し、主役を又市から林蔵に替えた、巷説百物語シリーズの最新作。
曰くのある人物の隠された姿を、林蔵が仕掛けたからくりであぶり出す。
ミステリー小説はナゾを解き明かすが、本シリーズは「人の業」を解き明かすというしくみ。

やや強引な展開もあるけれど、登場人物の業がミステリー小説の作法によって暴かれる展開はなかなか鮮やか。 関西弁も、独特の雰囲気を造り上げるのに効果的。

でももうちょっと深みのある業が欲しかった?
物語を造り過ぎて、絵空事が絵空事に感じてしまうというか。
落ちが見えてしまい、読者の業は解き明かされないというか。

欲張り?

西巷説百物語 (怪BOOKS)
西巷説百物語 (怪BOOKS)京極 夏彦

おすすめ平均
stars林蔵の仕掛け
stars瑕と狂気を孕んだ幸福
starsそうきたか
starsもう一つのサイドストーリー

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

大団円での林蔵の決め台詞「これで終いの金比羅さんやで」っていうのは、どういう意味なんだろう?

「靄船の林蔵」だから金刀比羅さんなのか?
「屁こいて寝よ」みたいなもんか?
「金比羅船々」と関係あるのか?

◆他サイトの感想◆
WEB本の雑誌

テーマ:読書感想文,おすすめミステリー小説,本 - ジャンル:小説・文学,本,感想,ミステリー

次のページ

FC2Ad