だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 最近は新旧歴史時代小説やエンターテイメント、ライトノベルにも手を伸ばして節操のない状態に。趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

IN/桐野夏生

◆読んだ本◆
・書名:IN
・著者:桐野夏生
・定価:1,500円
・出版社:集英社
・発行日:2009/5/30

◆おすすめ度◆
・クズクズの恋愛小説度:★★
・ウジウジの不倫関係度:★★
・人間模様に意味を見いだそうとする作家の性度:

◆感想◆
作家の鈴木タマキは、文豪緑川未来男の「無垢人」という小説に登場する○子(伏せ字)という女性を調査していた。私小説といわれた「無垢人」には、緑川未来男と不倫関係にあった○子のことが描かれており、鈴木タマキは○子の実像を執念深く調べるのだが・・・

主人公の作家鈴木タマキと不倫相手の編集者の関係に並行して、タマキが○子の存在を調査する展開が描かれる。

不倫関係を悩み克服しようとするタマキ。
「無垢人」という小説の中で、未来男の不倫相手として登場する○子。
タマキは○子という存在を調べることが、あたかも自分の存在を確認することになるかのごとく、執念深く調べていく。

テーマは恋愛における抹殺(自分の都合で相手を無いものとする)ということだが、どうも分かりにくい。
著者桐野夏生自身の私小説ぽいところもあるし、恋愛という名を借りた人間の勝手さを書いているようでもあるし、繊細で世間知らずな作家と編集者の関係を自嘲的に書いているようでも、小説の中に「無垢人」という小説を組み込んだ実験的な小説のようでもある。

簡単にいうと、面倒な小説だ。
まあ、恋愛とか不倫とかは面倒な所も多々あるけど、グチャグチャと答えの無いことを考えなければならないのはわずらわしい。
それが自分の興味のあることならいいが、恋愛とか不倫とか作家の性とか。
もっとアカデミックだったりハートを揺さぶられる人間関係とかだったりするならいいけど、ウジウジグジグジ梅雨時のナメクジみたいで性に合わん!

それでいて読むのを止めるほどつまらない訳でもない。
ウーム。困ったもんだ。
寝る前に読むと、すぐ寝れるくらいの面白さだ。


IN
IN桐野 夏生

おすすめ平均
stars饐えた恋愛への葛藤と煩悶を吐露する難しさを描いた傑作。
starsだんだんと・・・
starsターニングポイントである作品、に同意
stars三つの世界のリンク具合
stars作者の折り返し地点か

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本書は、名作「OUT」とは関係ない小説だった。
本の帯には「OUT」との関連性を示唆するような文句があるし、出版社はちがうのに装丁はそっくりだし。
なんだ?
どうゆう意図なんだ?
自分一人が本書の面白さや「OUT」との関連性を見いだせないでいるのだろうか?


OUT 上 講談社文庫 き 32-3
OUT 上  講談社文庫 き 32-3桐野 夏生

おすすめ平均
stars上巻のみの感想~人間心理の闇を抉った快作
stars妻に殺されない為に男性は必読w
stars弁当工場、殺人、死体解体、ヤクザなどが盛りだくさんで怖い話だが、超お勧め
starsこれはミステリーなのか?
starsおもしろいが「リアルワールド」と構成がまったく一緒なのはいかがなのものか

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東京島/桐野夏生

◆読んだ本◆
・書 名:東京島
・著 者:桐野夏生
・出版社:新潮社
・定 価:1,400円
・発行日:2008/5/25

◆評価◆
・無人島漂流記度:★★★
・サバイバル度:★★
・信頼と裏切り度:

◆感想◆
太平洋上の小さな島に流れ着いた32人のうち、女性は清子ひとりだった。助けがこないという諦めから東京島と名付けられたその島で、清子の夫を決めるくじ引きが始まろうとしていた・・・

ボートの難破でたどり着いた小さな無人島。
32人の内、女性は中年の清子ひとりだけという逆ハーレム状態。
この設定だけで読む気がムクムクと起きてしまう。
男ってエッチな考え方しかできないのかと、自分を見て思ってしまう。

内容は無人島でのサバイバル生活、仲間とのいざこざや駆け引き、島からの脱出劇と、予想された展開で、あんまりインパクトはなかったなあ。
もっとギトギトな葛藤や極限状態の描写があるかと思ったが。

小説の主人公である清子も、どうやって生き残るか色々と考え行動するが、なんか刹那的。
これじゃ本当だったら生き残れないんじゃないの?

でも逆に31人の女性の中に男がひとりという設定だったらどうなのか?
出家するしかないだろうな。

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アンボス・ムンドス/桐野夏生

◆読んだ本◆
・書 名:アンボス・ムンドス
・著 者:桐野夏生
・出版社:文芸春秋
・定 価:1,300円
・発行日:2005/10/15

◆評価◆
・女の執念&妄想&嫉妬&奔放度:★★
・一癖ありそうでそれでいて普通な女性度:★★
・うすら怖い度:★★★

◆感想◆
なにがしかのコンプレックスや問題や憤懣を抱えている女性たちが主人公の、ブラックテイストの短編集。

日常からちょっとずれた位置にいる女性を描かせると、著者の筆致は冴えまくり。
本書に登場する主人公達も、容貌にコンプレックスを持っていたり、妻と別れてくれない男に鬱憤をためていたり、性的な自分を持て余していたりと、マイナス方向のパワーを蓄積した女性たちばかり。
ちょっとしたきっかけで、彼女達の行動が日常からズレ出す。
著者の得意とする展開だな。

それにしても、女性は腹の中で何を考えているかわかんない面があって、怖い。
普通の娘だと思っていたら、突然突拍子もないことをしでかしたりしてね。

「毒童」の落ちも、なんだか訳分からない。
それが妙に怖かったりするんだなぁ。

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アイム ソーリー、ママ/桐野夏生

◆読んだ本◆
・書 名:アイム ソーリー、ママ
・著 者:桐野夏生
・出版社:集英社
・定 価:1,400円
・発行日:2004/11/30

◆評価◆
・悪魔のような女性度:
・心の壊れる様度:
・破綻している行動がリアル度:★★★★

◆感想◆
孤児達の保育施設に勤めていた美佐江は、自分が面倒を見てきた25才年下の稔と所帯を持つ。ある晩、2人で焼肉屋に行くと、かつて施設にいたアイ子と遭遇し…

娼館で、誰の子と分からぬまま育ったアイ子。彼女は環境に合わせて生活する方法を学ぶとともに、自分に都合の悪い者は消し去ることで生き長らえてきた。
そんなアイ子は、焼肉屋の店員、家政婦と流浪しながら、行き当たりばったりに凶行に及ぶ。
その様は、彼女の行動と同じように、とても理不尽で場当たり的。犯罪を犯した後の事や逃げる方法などは、アイ子の思考に無い。

物語の脈絡の無さと、主人公アイ子の非論理的思考&行動が、薄ら寒くなるほどリアル。著者ならではの、身体的小説。
表紙の写真も、物語の内容と見事に合っていて無気味。

前作より一歩進んだ小説世界を味わえる。

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残虐記/桐野夏生

◆読んだ本◆
・書名:残虐記
・著者:桐野夏生
・出版社:新潮社
・定価:1,400円
・発行日:2004/2/25

◆評価◆
・少女誘拐拉致事件の内側度:★★★★
・人間の中の性的存在度:★★★
・少女と男達の奇妙な関係度:★★★★

◆ひとこと◆
失踪した女流作家が残した原稿には、かつて作家自身が被害者として経験した監禁事件の真実が記されていた…

過去に現実としてあった少女の誘拐監禁事件を連想させる小説。
前作「グロテスク」と同じような手法。 これってけっこう読者の俗悪趣味を刺激するなあ。
ずるくもあり、うまくもある。

中盤あたりまでは、誘拐された少女の、事件によって引き出された性的存在をどう処理していいのか戸惑い悩む姿が、印象的で興味深かった。
もっとどろどろした精神世界にはまり込んで行くのかと期待もしたが。

結末部分は、ちょっと前半とチグハグな感じ。

小説としての決着をつけなければならないし、そういう意味では、きちんと完結している。
でもねぇ、過去に引きずられた奇妙な三角関係みたいな、週刊誌の記事にあるようなB級展開に、不満というか落胆というか。
はじめからB級であれば、納得するけど。

しかし著者の、小説で現実の事件を解決しようとする姿勢には、力が必要。
虚構をはるかに超える現実の事件を、このような小説の姿で捉えようとするのは、作家にしかできない所行。
そしてそこには桐野夏生という作家が、確かに存在してはいる。


残虐記
残虐記桐野 夏生

おすすめ平均
stars人間の一筋縄ではいかない屈折を描いて、見事
stars虚構の虚構について
stars不愉快
starsセカンドレイプ小説
stars作品から漂う臭い

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