だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 最近は新旧歴史時代小説やエンターテイメント、ライトノベルにも手を伸ばして節操のない状態に。趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

猫が足りない/沢村凜

◆読んだ本◆
・書名:猫が足りない
・著者:沢村凜
・定価:1,500円
・出版社:双葉社
・発行日:2014/9/21

◆おすすめ度◆
・猫にまつわる連作ミステリー小説度:★★★
・猫が足りない「ミセス不機嫌」が破天荒キャラ度:★★★
・主人公の知章は悪女に振り回されるタイプ度:★★★

◆感想◆
就職浪人の知章は、「ミセス不機嫌」こと四元さんとスポーツクラブで知り合う。「猫が足りない」と嘆く彼女の周りで、なぜか猫がらみの事件が起きるのだが…

骨太のファンタジックなストーリーが特徴の沢村凜だが、本書はちょっと趣きがかわった、猫がらみの連作ミステリー小説。
読みどころは「ミセス不機嫌」こと四元さんの破天荒なキャラクター。

猫に関する思い入れや行動や人生観が独特な四元さん。
彼女になぜかつきあい振り回される主人公の知章が、かわいそうになるくらい。(彼は悪女に振り回されるつきまとわれるタイプかも)

読み進むうち、次第に事件の規模が大きくなっていくけれど、ラストはなんだかほんわりした雰囲気に。
「ミセス不機嫌」こと四元さんは、猫の性格がオーバーラップしていて、猫好きの男性には魅力的?
この物語の後、主人公の知章は猫を飼いはじめると予想させる「猫が足りない」短編集。

「沢村凛」と「沢村凜」どっちが正解?
それとも別人? (ってことはないよな)

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ぼくは〈眠りの町〉から旅に出た/沢村凛

◆読んだ本◆
・書名:ぼくは〈眠りの町〉から旅に出た
・著者:沢村凛
・定価:1,400円
・出版社:角川書店
・発行日:2014/1/30

◆おすすめ度◆
・少年少女向けの心暖まるファンタジー小説度:★★★
・自分探しの旅/仲間との固い結束度:★★
・予想不能の結末度:★★★

◆感想◆
悩みも不安もない穏やかな〈眠りの町〉。そこで一人の奇妙な男に出会った「ぼく」は、その男につれられるようにして旅に出るが…

なんだかフワフワとした心地よい夢の国にいるような「ぼく」が、仲間を捜しながら自分探しの旅をするというロードノベル風のファンタジックな冒険小説。

多感な小学生が読めば清く正しい大人になりそうな正統派ファンタジーでありながら、おじさんが読んでも「いったい結末はどうなるんだ?」という興味がラストまで持続するあっぱれな展開。
とっても心暖まる結末も、学校で嫌なことがあって凹んでる小学生にぴったりです。

うつらうつらとしている〈眠りの町〉、とっても魅力的です。
そこから自分探しの旅に出るより、自分がないままへらへらと過ごしたいと思うのは人生に疲れている証拠でしょうか。

同時に出版された「通り雨は〈世界〉をまたいで旅をする」は、ファンタスティックなSF。こっちは小学女子向け?なストーリーでしたが、骨太なファンタジー小説を手がける著者らしく、特異な物語世界を築いてます。

◆関連記事◆
『ぼくは〈眠りの町〉から旅に出た』『通り雨は〈世界〉をまたいで旅をする』著者 沢村凛さん bestseller's interview 第54回/新刊JP

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リフレイン/沢村凜

◆読んだ本◆
・書名:リフレイン
・著者:沢村凜
・定価:705円
・出版社:角川文庫
・発行日:2012/7/25(1992年2月発行を加筆・修正して文庫化)

◆おすすめ度◆
・SF設定のサバイバル小説度:★★★★
・罪とは? 正義とは? 何が正しいことなのかの法廷劇度:★★★★
・マイケル・サンデル教授に教えてほしい度:★★★★★

◆感想◆
様々な星の乗客を乗せた宇宙船が遭難。宇宙船が航行不能に陥る前に、なんとか地球型の無人の惑星に漂着する。生き残った人々は、力を合わせて食料を確保し、家を建て、自治的な社会組織をつくって困難に立ち向かおうとするが…

これは深い、深すぎる。

漂着した惑星で、リーダーシップをとる弁護士のラビル。
説得力のある言動や、皆を統率する力と意志の強さを持ったラビルは、皆からリーダーにふさわしい存在として認められる。
しかし、彼に逆らう数人の男たちと反目し、次第にそれが大きな事件へと発展してしまう。

果たして彼らは母星に帰ることができるのか。
そして、リーダーのラビルと、彼に反目する男たちとの間に起きた事件はどのように決着するのか。

無人の惑星でのサバイバル生活の描写は、まるで冒険小説のよう。
それだけでひとつのSF小説としても成立する内容だけれど、それは後半の舞台設定にすぎないという重厚な構成。

肝となるテーマは「殺人」

非暴力主義を貫く主人公のラビルと、自分たちや仲間を守るためには「殺人」もやむなしとする人たちとのせめぎ合い。
自分の生命を守るためにも、暴力的な力を使ってはならないのか。
非暴力はただの理想なのか。
殺し合うのは人間の本能なのか。
正義はいったいどこにあるのか。

著者の「黄金の王 白銀の王」や「瞳の中の大河」に共通する重たいテーマだ。
簡単に答えが出ない問題だけれど、主人公のラビルのとった行動には強いメッセージ性を感じる。
マイケル・サンデル教授にどうすればよかったのか訊いてみたいぞ。

本書を読んで思い起こすのは「ミニョネット号事件」
難破した船から4人が救命艇で脱出するが、食料が無くなる中、海水を飲んで衰弱した若者を殺害し、その死体を残った3人の食料として生き延びる。
24日後に3人は救助されるが、裁判にかけられ、その罪を問われるという事件だ。

全員が餓死するのを覚悟するのが正しいのか、誰かを犠牲にしてでも生き残る道を選択するのが正しいのか。

死ぬのも苦しいが、生き残るのも苦しい。
こんな状況に陥らないよう祈るばかりだけど、そんな風に考える人間は弱肉強食の社会では生き残れないのかもしれない。

◆関連記事◆
リフレイン 沢村凛著/読書日記~防忘録~
「リフレイン」 沢村凜/乱読にもほどがあるッ!
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ミニョネット号事件/ウィキペディア

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ディーセント・ワーク・ガーディアン/沢村凜

◆読んだ本◆
・書名:ディーセント・ワーク・ガーディアン
・著者:沢村凜
・定価:1,700円
・出版社:双葉社
・発行日:2012/1/22

◆おすすめ度◆
・超マニアック業種のミステリー小説度:★★★★
・建設業、製造業の安全担当者でミステリーファンは必読度:★★★★
・実際の労働基準監督署は小説と違うかも度:★★

◆感想◆
労働基準監督署に勤務する監督官を主役にした、超マニアックな建設業・製造業限定ミステリー連作短編集。

沢村凜というと、「黄金の王 白銀の王」とか「瞳の中の大河」などの読みごたえのある骨太ファンタジー作家というイメージだったけど、本書は読みごたえのある骨太マニアックミステリーといった内容。

なんたって主人公が労働基準監督署に勤務する監督官というのだから前代未聞。
いきなり「36協定」とか「足場の組立て等作業主任者」なんていう業界の専門用語が出てきて、建設業や製造業の安全管理などに従事したことのある人は「おおっ」と声をあげそうになるくらいのマニアックさ。
そっち方面のミステリーファンには、現場がリアルに想像できる小説なんである。

自分もそっち方面の仕事に従事していたことがあって、「整理整頓は安全の基本」にうなづいたり、「ティーチングプレイバック方式の産業ロボット」にハハンと思ったり、「是正勧告」におののいたり。
取材や下調べがバッチリなようで、違和感ないし。

だたマニアックだけのミステリーかというとそんなことはなくて、労働環境を改善しようとする主人公の考え方や行動、家族や友人たちとの関係ももじっくり描かれていて、読みごたえのある骨太な物語に。

でもなんで労働基準監督署なのかねえ。

ディーセント・ワーク・ガーディアン

沢村 凜 双葉社 2012-01-18
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労働基準監督署といえば製造業者にとってのおまわりさん的な存在。
法令違反すると逮捕されちゃうこともある恐い存在なんである。
本書に登場する監督官は人間味あふれる人物だけれど、実際はもっと事務的なキャリア官僚だったり、愛想のいいおっさん(を演じてる?)人だったり。

ま、新宿鮫みたいな刑事がいないのと同じで、労働者にたいしてこんなに密接に、真摯に対応する監督官はいないだろうけど。
ひょっとして「いるんだ」ということを著者はいいたかったのか?

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本邦初の労基小説! 沢村凜『ディーセント・ワーク・ガーディアン』/hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳)
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笑うヤシュ・クック・モ/沢村凜

◆読んだ本◆
・書 名:笑うヤシュ・クック・モ
・著 者:沢村凜
・出版社:双葉社
・定 価:1,700円
・発行日:2008/11/23

◆評価◆
・ちょっとファンタジックなミステリー度:★★
・友達いろいろ、人生色々度:★★
・マヤ文明との不思議?な関係度:★★

◆感想◆
大学を卒業してから10年ぶりの同窓会。久しぶりに会った5人は、とあるきっかけでサッカーくじを1枚購入する。翌日サッカーの試合結果を確認すると、全試合の予想が当たっている事が分かり!・・・

本屋の平台に置かれていた本書。「沢村凜」、どっかで見た事あるなあ、と本の奥付を見ると「黄金の王 白銀の王」の著者だ。あれは面白かったなあ。
ということで購入。

出だしは、ミステリアスで上出来だ。
みんなの記憶では1等になっているはずのサッカーくじが、何故か1つの試合の予想だけが記憶と違っていて2等になっている不思議。
さらに、そんなはずはないと、たまたま撮ったくじの写真を現像すると、全然知らない女性の写真に入れ替わっているという不思議。

何故くじの予想が変わってしまったのか。それにくじの写真が写っているはずの写真までなくなっている!

なんで?なんで?の興味が原動力となって、どんどん読み進むけど、物語の展開とは別の所に違和感が。

うーむ。
ちゃんとディテールの辻褄は合っているし、謎を解き明かす過程も面白いんだけどなあ。
ややご都合主義のところも弱点だし、マヤ文明と無理矢理関係づけているのも説得力に欠けるけど、一番の違和感は主人公たちの関係にブレがあることかな。

学生時代の友人という設定のわりには、疑心暗鬼になって互いに疑り合ったりするし、そうかと思うと親友のような振る舞いをしたり。
それぞれが社会に出て、挫折や苦しみを味わっているからこその疑心暗鬼なんだろうけど、それは仲間に抱く感情ではないような。

「男5人の旧友」ではなくて「女5人の同級生」にしといた方が良かった。
そんなに強い友情はなかった、ということでね。



DSC06778.jpg
マヤ遺跡探訪



物語の展開と微妙にシンクロするマヤ文明の神殿。
ピラミッドやなんかもそうだけど、むかしの人はよくもこんなデカクて高い構造物を作ったなあ。
でも、今もそうか。
巨大なビルや塔。高さを争うように建築されてるし。

「大きく」「高く」というのは人の本能なのか? 権威誇示する象徴なのか?

たしかに「小さく」「深く」というのはあんまりはやらないような気もする。
高いビルを見ると、意味なく「おおっ」とか言っちゃうしな。





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黄金の王 白銀の王/沢村凜

◆読んだ本◆
・書 名:黄金の王 白銀の王
・著 者:沢村凜
・出版社:幻冬舍
・定 価:1,600円
・発行日:2007/10/25

◆評価◆
・異世界ファンタジー(武器は刀と槍ぐらいの世界)度:★★★★★
・「この血に恥じぬよう生きる」二人の王度:★★★★★
・平和は絶え間ない苦渋の上に度:★★★★

◆感想◆
一つの王座を巡り、二つの一族による長い戦いが続いている翠国。しかしこのままではこの国が滅んでしまうと危惧した敵対する二人の王は、国に平和をもたらそうと密約を交わす…

これは面白い。
十二国記みたいな異世界ファンタジーで、描かれるのは若い二人の王が国を平和に導こうと苦悩する姿。
しかし平和を取り戻すには、予想以上の苦難が!

肉親を殺された恨み。覇権を握ろうとする欲。他者を信じることの難しさ。
さらに一方は現王だが、もう一人は囚われの身の偽王。
自分たちの行っていることに、未来はあるのか?
相手を殺してしまった方が、近道ではないのか?
様々な苦難と危機を乗り越えながら、国の平和を築こうとする姿が描かれる。

やや青臭く青春小説風なところもあるが、人のことを思いやり強く生きようとする二人がまぶしいぜ!
薄汚れちまったオヤジのハートに、久々のクリーンパンチだ。

しかし深く共鳴するのは、平和は自らを殺すような覚悟がなければ成り立たないのかもしれないという著者のスタンス。
やっぱり誰かを悪者にしないと、世間/国民は納得しないのか?
国はもっと教育や情報公開に力を入れるべきで、安易な方法に逃げちゃいけないんじゃないのか?
とか、いろいろ考えちゃう余韻も含めて、ほろ苦さと青臭さとほろっとくる温かさのある物語だ。

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