だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 最近は新旧歴史時代小説やエンターテイメント、ライトノベルにも手を伸ばして節操のない状態に。趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

第九の日/瀬名秀明

◆読んだ本◆
・書 名:第九の日
・著 者:瀬名秀明
・出版社:光文社
・定 価:1,700円
・発行日:2006/6/25
     
◆評価◆
・人工知能SF度:★★★
・人間の本性/ロボットの身体性度:★★★
・物語の力度:★★

◆感想◆
デカルトの密室」に前後して発表された短編集。

ロボットのケンイチを主人公に、尾形祐輔、一ノ瀬玲奈などの登場人物が配置されていることから、「デカルトの密室」を軸とした連作小説と見ることもできる。

AIと身体性、人間の本性、AIと神/宗教/痛み、といったテーマを中心に思弁的な記述がなされる一方、マッドサイエンティストたちの奇抜な実験や殺伐としたシーンが描写される。

テーマはとても刺激的で内容も深い。「デカルトの密室」に感銘を受けた人には、読みごたえ十分。
しかし、物語の舞台設定はやや強引。ちょっとというか相当現実離れしているし、B級な設定&展開だなぁ。B級が悪いわけではなく、思弁的なテーマとB級の舞台設定が、ちぐはぐな感じ。

ちらちらと垣間見える著者自身の作中世界も、自分はあんまりつきあいたくない。
著者も二足のわらじを履いたり小説作法でいろいろ悩んだりしているんだろうが、そうゆう問題は、主人公のケンイチに全部あずけるか、小説以外の日常で解決したほうがいいのでは。

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デカルトの密室/瀬名秀明

◆読んだ本◆
・書 名:デカルトの密室
・著 者:瀬名秀明
・出版社:新潮社
・定 価:1,900円
・発行日:2005/8/30

◆評価◆
・ロボットSF度:★★★
・AIに関する思惟的SF度:★★★★
・思考実験度:★★★★★

◆感想◆
ロボット工学者の尾形は、出席した人工知能コンテストの会場に、AIの天才といわれたフランシーヌ・オハラの姿を発見する。彼女は尾形に逆チューリングテストともいえるゲームを持ちかけるが…

フランシーヌと尾形は、子供の頃に数学ジュニア国際オリンピックで日本の代表だった。その時から尾形は、フランシーヌの強い視線に心身とも搦めとられてしまう。
そのフランシーヌには感情というものがまるで無く、あたかもロボットのような性格。頭脳明晰で、それが一層不可思議で冷ややかな印象をかもし出している。

物語はこの2人を主人公に、尾形が開発したロボット「ユウスケ」や尾形の恋人などの傍役をたずさえて、展開する。

ロボットによる殺人事件や「2001年宇宙の旅」のチェスシーンの矛盾などが描かれるが、中心となるテーマは、フランシーヌ自身が抱える心的問題を、自ら開発した人工知能でどう解決するか、ということだと思う。
フランシーヌ自身の密室を、どうやって解決するか。

しかし物語のテーマとは別に、AI開発上の様々な問題点とそれに対する著者の考えが、本書の主役となっているきらいも。
なんせ、現代のロボティクスに関する記述や、一種哲学的な思考実験がすごい。

チューリングテスト、フレーム問題、中国語の部屋、グラフ理論と、ロボティクス分野にとどまらず、数学やら哲学やらの分野にまで及ぶ考察が、物語の随所にあふれている。

AIの在り方や生き物と機械の違いなどにも言及しており、その記述はSF的知的好奇心を刺激させる。この方面に詳しい読者には、納得のいく小説かもしれない。
ボンクラな読者(俺のことだ)には、SF的知的好奇心を刺激させられはするものの、カタルシスは得られないが(やっぱ、バカだから?)。

この方面に詳しくない方は、チューリングテスト、フレーム問題くらいは事前に調べておいた方がいいかも。
著者はそれ以上の基礎的な知識を読者に要求しているようだが、相当のSF好きでないと、こたえられないのでは?

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