だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 最近は新旧歴史時代小説やエンターテイメント、ライトノベルにも手を伸ばして節操のない状態に。趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

ローカル線で行こう!/真保裕一

◆読んだ本◆
・書名:ローカル線で行こう!
・著者:真保裕一
・定価:1,500円
・出版社:講談社
・発行日:2013/2/12

◆おすすめ度◆
・町(赤字鉄道)おこし小説度:★★★★
・常套的だけど面白い度:★★★
・我が社にもカリスマ・アテンダントを!度:★★★

◆感想◆
廃線の危機にさらされていた、赤字ローカル線のもりはら鉄道。ここに新社長として抜擢されたのは、新幹線のカリスマ・アテンダント・篠宮亜佐美。三十一歳、独身。はたして赤字ローカル線の再生は成るのか…

寂れたローカル線の再生物語。
町おこしや村おこし小説のよくあるパターンを踏襲し、やる気のない社員やあきらめムードの沿線住民の気持ちが、カリスマ・アテンダントのアイデアや仕事への意気込みで、少しずつ改善していく。

一瞬「荻原浩の小説を読んでいるのか?」なんて思ったほど、既視感たっぷりの小説。
それでも読み始めると面白い。
新社長に影響されて社員のやる気がむくむくと出てきたり、経営を揺るがす不穏な事件が発生したり、ちょっとしたロマンスがあったり。
常套的だろうが既視感があろうが、面白いのは面白いんだからしょうがない。

「連鎖」「取引」などの小役人シリーズを手がけただけあって、役人の描き方もさすが。イラッとする程巧みだ。

「経営不振の会社に、是非カリスマ・アテンダントを!」と言いたくなる、夢のような赤字ローカル線再生物語。

荻原浩の「花のさくら通り」は、シャッター通りとなった商店街を再生していく物語。
本書と同じようなシチュエーションで、目新しさや驚きはないが、けっこう面白く読めちゃうから不思議。

◆関連記事◆
『ローカル線で行こう!』真保裕一著 読み出したらノンストップ/MSN産経ニュース
ローカル線で行こう!PRIVATE EYES
花のさくら通り/荻原浩/サイト内

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ブルー・ゴールド/真保裕一

◆読んだ本◆
・書名:ブルー・ゴールド
・著者:真保裕一
・定価:1,600円
・出版社:朝日新聞出版
・発行日:2010/9/30

◆おすすめ度◆
・社会派ミステリー小説度:★★★
・緻密な構成と大胆な展開度:★★★
・水ビジネスの裏側の裏側度:★★★

◆感想◆
今話題の水ビジネスを扱った社会派ミステリー。
水ビジネスを扱う巨大商社、豊富な地下水を保有する地方都市と役人、他水ビジネスに群がる有象無象を巻き込んだ駆け引き/騙し合いがはじまる・・・

水ビジネスというとすぐグローバルな展開を想像するが、あえて日本の地下水が豊かな地方を舞台にしている所に、著者のこだわりを感じる。
登場人物も木っ端役人をはじめ、巨大商社で人を人とも思わないバリバリ商社マンから、アクの強い商社の社長や癖のある弁護士とか、ハードな企業戦士が登場。
物語も細部までこった展開で、著者らしい物語に。

でもちょっとこじんまりした感も。
もっと大胆にウッチャリかましても良かった。
緻密な分だけこじんまりした感じかな。

真保 裕一 朝日新聞出版 2010-09-07
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「大企業が工場を新たに建設する計画がある」なんていうニュースの裏には、本書に描かれているような企業間の駆け引きや、政治家、役人、マスコミを巻き込んだ情報戦略がありそう。
でも大企業の上層部は、企業の利益を如何に上げるかというマクロな視点で戦略を練る一方、「あいつはおれの言うことを聞かない奴だ」「どっちの味方をするんだ」といったガキ大将的な感覚が判断を左右することも多い。
けっこう動機が幼稚だったりするんである、ホント。

◆他サイトの感想◆
森乃屋龍之介の日常
読書日記 嘉壽家堂 アネックス

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デパートへ行こう!/真保裕一

◆読んだ本◆
・書名:デパートへ行こう!
・著者:真保裕一
・定価:1,600円
・出版社:講談社
・発行日:2009/8/25

◆おすすめ度◆
・夜のデーパートで起きる大騒動度:★★★
・登場人物全員が主人公度:★★★
・ハラハラドキドキほろっ度:★★★

◆感想◆
リストラされ家族にも見放されたおじさん、若い男女のカップル、ヤクザに追われる男、彼らがそれぞれに目指したのは老舗のデパート鈴膳だった・・・

様々な訳ありの登場人物にくわえ、老舗デパート鈴膳の社長や警備員などが織りなす、一夜の大騒動。
はじめは何の繋がりもないようにみえる登場人物たちの関係が、だんだんと繋がってきて最後には!

登場人物全員が主人公という設定と、それを繋いでいく人物の相関関係。
著者はだいぶ苦労しただろうと思わせる。
でもそれを無理なく展開して収束させるのは、さすが真保裕一。
なんか、戯曲にアレンジしてどっかで上演されそうな内容でもあるぞ。
登場人物一人ひとりがきっちり描かれているし、展開もうまい。
ただ一人一人にさけるボリュームが少なくなって、やや書き込み不足な感じもする。

読後は爽やか!
もうちょっとコミカルにしたら、なお面白かったかも。


デパートへ行こう!
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全員が主人公というと井上夢人の「99人の最終電車」を思い出す。
これはなかなか凝ったウエブ小説で、それこそ全員が主人公。
登場人物ごとにもよめるし、時系列に沿って読むこともできるという、ウエブならではの小説だ。
いまでも無料で読めるので、興味のある方は是非!


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アマルフィ/真保裕一

◆読んだ本◆
・書名:アマルフィ
・著者:真保裕一
・定価:1,500円
・出版社:扶桑社
・発行日:2009/04/30

◆おすすめ度◆
・ノンストップ誘拐+α小説度:★★★★
・錯綜するストーリー/精緻な展開度:★★
・スリルとサスペンスとアクション度:★★★

◆感想◆
外務大臣のイタリア外遊に伴い、急遽警護に当たることとなった黒田。イタリアの日本大使館に赴任する早々、火炎瓶による放火騒ぎが発生。さらに邦人の少女が誘拐され・・・

イタリアを舞台にした国際スパイ小説みたいな雰囲気のサスペンス。
小役人モノを書いていただけあって、保身と事なかれ主義の大使館員を描くのはうまい。イラッと感じる。
それに反するようなカッコいい黒田。真摯な態度で女性に対応し、テキパキと的確な判断と行動で事件を解決してゆく。
まるでTVドラマの主人公みたいだ。

それもそのはず、本書は本年7月に上映される映画の原作?なのだ。
帯には織田裕二や天海祐、希戸田恵梨香(かわいい!)の顔写真まで掲載されて、メディアミックスな小説なのである。

そのためか、やや強引な展開や舞台設定に難があるが、スピーディで次第に大掛かりな事件になっていく展開は、著者らしく緻密に構成されている。
手を抜かない真保裕一、エラいぞ。
小説家の矜持か。
でも色んな人たちの意見をまとめて、きちんとした物語にするのに、苦労しただろうなあ。


アマルフィ
アマルフィ/ウィキペディア


「アマルフィ」はイタリア南東の都市。世界遺産もある風光明媚な土地だ。
なんでここが舞台の一つに選ばれたのかなあ?
でもロケとかでいったら楽しいだろうなあ。


アマルフィ

真保 裕一 扶桑社 2009-04-28
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おすすめ平均 starAve
star1面白いのではあるけれど・・・
star2上質のエンターテインメント
star3相変わらずの着眼点と展開
star4やっつけ仕事だね
star5映画も観るべし。

by ヨメレバ


◆他サイトの感想◆
アマルフィ 女神の報酬 公式サイト/フジテレビ他

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追伸/真保裕一

◆読んだ本◆
・書 名:追伸
・著 者:真保裕一
・出版社:文芸春秋
・定 価:1,429円
・発行日:2007/9/15

◆評価◆
・世代を超える女性の因果度:★★★
・恋文度:★★★★★
・良い人度:★★★

◆感想◆
ギリシャに単身赴任中の夫に、妻から手紙がくる。そこには悩んだ末、離婚の決意をした妻の心情が吐露されていた…

妻と夫の間で交わされた、手紙の文面だけで物語が展開するという構成。始めは「こんなに筆まめな夫婦なんて、明治時代じゃあるまいし、いないよなぁ」と感じながら読み進む。なんだか手紙の内容も陳腐だし。
でも中盤の、妻の祖父母の物語り(これも手紙文で構成)に繋げるには、これしかないのかと、やや納得。

メインは、この妻の祖父母の物語り。
殺人の容疑で逮捕されながら、頑に口を噤んでいる祖母春子と、彼女の無実を信じ懸命に真相を探ろうとする祖父誠治の姿が、互いの手紙文で語られる。

しだいに明らかになる事実と、それに伴って現われる二人の思い。
この辺が本書のキモとなる所だ。

春子の、美しく夫や子供のことを想う気持ちと、それに相反する刹那的行動。
不幸な過去がその背景とはなっているが、手紙の文面から伺える春子の性格とは相容れないものが。

でもしかし、春子と誠治の、互いに思いやる気持ちはヒシヒシと伝わり、気持ちを揺さぶられるシーンも。
こんだけのハートを持っていてなお、ささいな悪戯心が最悪の事態を招くようなことになるのは、とても悲劇的だ。

なんか納得できない。
誰かをもっと悪いやつにしてくれ。

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最愛/真保裕一

◆読んだ本◆
・書 名:最愛
・著 者:真保裕一
・出版社:新潮社
・定 価:1,500円
・発行日:2007/1/20

◆評価◆
・ショッキングな恋愛小説度:★★
・しだいに浮かび上がるヒロイン像度:★★★
・人は何を求め、何を得るのか度:★★★

◆感想◆
幼い頃に両親を亡くし、姉弟2人となった千賀子と悟郎。離ればなれに親戚に引き取られて以降18年間音沙汰のなかった千賀子が、救急病院に搬送されたという連絡を悟郎は受ける…

ICUに入り言葉を交わすこともできない姉。いったい何が起きたのか、彼女の周囲を調査する悟郎は、しだいに彼女の太く芯の通った生き方を知ることになる。

物語の展開は、物言わぬヒロイン千賀子に関係のあった人たちを、悟郎が調べて聞き込むという、常套的手法。
それでも読ませるのは、各所にちりばめられた謎と、なかなか見えてこない主題のせいか。

冒頭で、それとなくしかし唐突な感じで伏線が張られているのだが、それににても本書のテーマとラストは、すんなり納得するのは困難。
ショッキングではあるけど、リアルではない。

それはおいといても、姉千賀子の姐御肌で意地っ張り、自分の考えを曲げない姿が印象的。
「自らを追い込むような恋愛しかできない」という弟悟郎の言葉通りの、破滅型の性格が、多くの人に愛された理由か。

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栄光なき凱旋/真保裕一

◆読んだ本◆
・書 名:栄光なき凱旋
・著 者:真保裕一
・出版社:小学館
・定 価:上1,900円 下1,900円
・発行日:2006/5/10

◆評価◆
・アメリカに住む日系人の第二次世界大戦度:
・戦時に浮かび上がる人の隠された心度:★★
・日系人の苦悩と決断度:★★
・戦争の不毛さと血生臭度:★★★

◆感想◆
アメリカに渡り、懸命に自らの生活基盤を築き上げてきた日系人たち。彼等の運命は、日本軍による真珠湾攻撃で大きく変えられようとしていた…

アメリカに移住した日本人とその二世たち。アメリカ人から差別を受けながらも、アメリカ人として生きる方法を模索している中、日本軍の攻撃が始まる。
ジャップと罵られながら、アメリカで生きる彼等の姿・存在・家族愛・愛国心を描いた大作。

非常に重たいテーマ。
日系人から見た第二次世界大戦という、今までにあまりない登場人物たちの視点が斬新。
多くの日系人がいるハワイに奇襲をかけるという、日系人にしてみれば日本から裏切られたような行為と、日系二世はアメリカ国籍をもつにもかかわらず、周囲のアメリカ人から敵視されるジレンマの中、かれらの選択する道がどうしようもなく虚しい。

本書の構成としては、著者らしい綿密な記述が登場人物の性格や戦争の情景をリアルに描き出している一方、ややしくこく感じてしまうこともある。
ずば抜けた描写で強烈な印象を受ける部分と、冗長に感じてしまう部分がありやや不満が残る。

だが、半端な気持ちでは読めない小説であることは確かだ。

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