だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 最近は新旧歴史時代小説やエンターテイメント、ライトノベルにも手を伸ばして節操のない状態に。趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

未踏峰/笹本稜平

◆読んだ本◆
・書名:未踏峰
・著者:笹本稜平
・定価:1,700円
・出版社:祥伝社
・発行日:2009/11/5

◆おすすめ度◆
・爽やか山岳小説度:★★★★
・ハンデを背負った若者たちの挑戦度:★★★
・浮かび上がる雄大で荘厳な風景度:★★★★

◆感想◆
自らの虚栄心と驕りから、社会から脱落した裕也。アスペルガー症候群という病から、人間関係に苦しむサヤカ。知的障害を抱える慎二。ハンデを背負った3人の若者が引退したトップクライマーと出会うことで、自分たちの居場所を掴みとろうとする山岳青春小説。

登場人物の設定や展開が、やや作り過ぎの感じ。
安易なドラマみたいで、ちょっとねえ、とか思いながら読み進めるが、中盤以降の登攀シーンはさすが笹本稜平。
雄大で荘厳な風景が、目の前に広がる!
一緒に登っているような臨場感もあるし。

3人の若者のチームワークもステキに青春している。
ミステリーや冒険小説な味付けなしで、ただひたすら爽やかな山岳小説。
山に登りたくなること間違いなしだ。


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カンティ・ヒマール南面Twujiche


「未踏峰」は本当にストレートな小説で、ミステリーな場面はないんである。
ひねくれた読者(俺のことだ)は、裕也たちが登攀の途中で出会う外国人クライマーに、不穏な状景を想像したりするが、そんな予想をあっさり裏切ってスカッと爽やかヒマラヤ登山なんである。

それはそれでいいけど、ちょっと物足りない気もする。


未踏峰
未踏峰笹本稜平

おすすめ平均
stars貴重な山岳小説
starsリアリティにかける山岳描写
stars前作「還るべき場所」に比べて、迫力が少なく物足りなかった
stars若者三人のヒマラヤ未踏峰への挑戦

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還るべき場所/笹本稜平

◆読んだ本◆
・書 名:還るべき場所
・著 者:笹本稜平
・出版社:文芸春秋
・定 価:1,850円
・発行日:2008/6/15

◆評価◆
・山岳冒険小説度:★★★★
・過酷な山とそこに挑む人間の姿度:★★★★★
・山に対する真摯な想い度:★★★★★
・生きるという事とは度:★★★★★

◆感想◆
自己流で山登りを覚えた高校生の翔平は、同じように単独で登山をしていた亮太、祐一と意気投合し、一緒に行動するようになる。亮太の従妹である聖美を仲間にいれた4人は、日本の名だたる山を制覇。大学生となった彼らは、冬のマッキンリーに挑むが・・・

のっけから翔平と聖美のK2登坂シーンで読者の心をつかみ、さらに雪崩による落下、宙吊りになった二人。そしてロープの切断による聖美墜落と、山岳小説のキモを押さえた出だしに大興奮!!
久々に心が熱くなる小説だ。

翔平を中心とした成長青春物語に並行して展開する、剛胆でワンマンな神津の物語もいいぞ。
医療機器会社を一代で起こし、自らが自社のペースメーカーを使用している神津。「ヒマラヤ公募登山へ参加し、自社製品で生産しているペースメーカーの優秀さを実証したい」という理由でヒマラヤへの登山を目指すが・・・

自社製品のアピールというのが登高の目的だった神津が、しだいに生きる目的や夢を山に見いだしていく姿。

さらに翔平や神津を取り巻く登場人物も男気あふれる人たちばかり。
街中で聞いたら陳腐になってしまう台詞も、寒風と雷と雪の吹きすさぶ山の中だと、とてつもなく真実みのあるものになるから不思議だ!


小説の山は、ブロードピーク登攀。
聖美を失って失意の底に沈んでいた翔平。人生の夢を山に見いだそうとする神津。
さらに様々なトラウマと死者に対する遺恨や愛を引きずる登場人物達が、K2の隣に聳えるブロードピークに挑む。

この登攀シーンがスゴい。
希薄な酸素。夏なのに凍えるような寒さと嵐。その中で相次ぐトラブルが起きる。
まさに極限状態に置かれた人間と、そこに浮かび上がるドラマ。

あーやっぱり山岳小説っていいなあ!
不可能と思われる困難に、何のてらいもなく立ち向かう姿。
これぞ冒険小説(山岳小説)の醍醐味!

読後の清涼感もいい。
みんながきちんと「還る場所」に帰ってるし。


ブロードピーク
ブロード・ピーク

「還るべき場所」のような小説を読むと、前読んだ「」を思い出す。
これも凄まじい内容だった。
それがノンフィクションだから尚驚く。
とても人間業とは思えない登攀シーンと、人間を寄せ付けない過酷な山。
そんじょそこらの小説が束になってかかっても、太刀打ちできないだけの迫力がある。

こうゆう本を読むと、登山家ってやっぱりどこか突き抜けてるというか抜けてるというか。
山で得られるものには、麻薬的な魅力があるとしか思えない。




◆他のサイトの感想◆
雪山大好きっ娘。2.0
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グリズリー/笹本稜平

◆読んだ本◆
・書 名:グリズリー
・著 者:笹本稜平
・出版社:徳間書店
・定 価:1,900円
・発行日:2004/8/31

◆評価◆
・戦う警察と狂ったテロリスト度:★★
・大国に刃向かう男度:★★
・フィービ大好き度:

◆感想◆
元北海道警狙撃手の城戸口は、登山中に一人の男と合う。その男は、かつて城戸口が直接かかわった事件の犯人だった。男は「真に理性に拠って立って殺人を犯せるのは国家だけだ」という言葉を残し立ち去るが…

過去に狙撃手という任務とはいえ、人を殺したことのある、城戸口。
元自衛隊のエリートで独特の政治観を持つ男、折本。そして彼の目標とするテロを実現させる過程が描かれる。

登場人物や北海道という極北の舞台など磐石の構えなのに、粗筋を追うような展開と描写。もったいない。
雪山を舞台に、もっとスリリングな冒険小説にして欲しかった。
銃器や爆薬に詳しいテロリストの姿も、はじめは非情で酷薄なのに、フィービ大好き男に変貌してしまうのも納得いかない。
城戸口の苦悩も苦悩のままのようだし、折本の仕掛けもなんだか尻すぼまり。

このての謀略小説、スパイ小説(今どきスパイ小説だって)は、読めない体になってしまった。
やはり共感やカタルシスを感じるには、魂や思いが描けていないとね。

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