だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 最近は新旧歴史時代小説やエンターテイメント、ライトノベルにも手を伸ばして節操のない状態に。趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

インドクリスタル/篠田節子

◆読んだ本◆
・書名:インドクリスタル
・著者:篠田節子
・定価:2,052円
・出版社:角川書店
・発行日:2014/12/20

◆おすすめ度◆
・インドを舞台にした社会派小説度:★★★★
・様々な対比の構図度:★★★★
・ロサのキャラクターがユニークすぎる度:★★★★★

◆感想◆
高精度の精密機器に使用する人工水晶。その種となる高品質の水晶をインドの村に見いだした山峡ドルジェ社長・藤岡だったが…
インド奥地の村を舞台に、高品質の水晶を入手しようと交渉を重ねるが、なかなか思うように進まない。
そこには価値観や商文化の違いはもとより、インド国内での差別や格差などが深く関わってくる。
どうやって水晶を入手するのか、村人は発掘に協力してくれるのか、敵対勢力の干渉はないのか。
文化や習慣がまるで違うインドの村人たちを相手にしたビジネスの、悪戦苦闘と奮闘ぶりが描かれる社会派小説。

でありながら、この物語のキモとなるのはロサという少女。
現地で出会った彼女の驚異的な能力と、彼女の内面を窺い知ることができない不思議な魅力と暗闇をもつ彼女。

先端産業とインド奥地の手掘りの水晶発掘
巨大資本が支配する世界と、神が支配する村
インド国内での地主と部族の対立

様々な明暗を織り交ぜながら、ロサという少女を通して見る世界は、日本人の藤岡が見る世界とはとてつもなく離れている。
だから藤岡は義足を薦め、ロサはそれを拒否するんだなあ。

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ブラックボックス/篠田節子

◆読んだ本◆
・書名:ブラックボックス
・著者:篠田節子
・定価:2,100円
・出版社:朝日新聞出版
・発行日:2013/1/30

◆おすすめ度◆
・社会派サスペンス小説度:★★★★
・カップ入りサラダは食べたくなくなる度:★★★★★
・近い将来に起きる(いや、もう起きてる)度:★★★★

◆感想◆
会社の不祥事で故郷に逃げ帰ってきた栄実。最新技術で生産された野菜を加工するサラダ工場で働くようになるが…

完全無農薬の無菌状態で生産する植物工場。
食の安心と安全を実現化するはずの植物工場に大きな期待をかける人がる一方、自然と大きく乖離した栽培方法に、そこはかとない不安を抱く人も多いはず。
本書はまるでドキュメンタリーのように、人々の抱く不安をリアルな形にした小説。

怖いですね。

何が怖いって、本当のことを知るのが怖い。
たとえば、原発の事故をきっかけに、その構造や仕組み、管理方法などがつまびらかになるほど、「これで大丈夫なの?」という疑問がいっぱい湧いてきて、どんどん不安になっていく。
知れば知るほど不安のタネが増えるばっかり。

本書を読むと、植物工場やカップ入りサラダの生産方法が、どんな風に行われているのか想像できる。
そこには外部の人間が知り得ない危うさが。
小説の主人公たちと同じように、「これじゃあダメだろう!」と思いながらも科学技術を100%拒否することもできないもどかしさ。
良質のドキュメンタリーやルポルタージュを読んだ時に感じるような危機感が横溢している。

小説だからすべてが現実のものではないけれど、近い将来起きてもおかしくない、ひょっとしたらもうすでに起きているかもしれないと思わせる説得力がある。

当分の間、コンビニのカップいりサラダは食べたくなくなること必至の小説。
(数日もすればムシャムシャ食べてるだろうけど)

ブラックボックスブラックボックス
篠田節子

朝日新聞出版 2013-01-04
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目に見えない「毒」に汚染されている食べ物もイヤだけど、泥や虫まみれの食べ物もイヤ。
危ない原発もイヤだけど、電気代が上がるのもイヤ。
近くにゴミ焼却場ができるのもイヤだけど、ゴミをきちんと分別するのもイヤ。
その「イヤ」をなんとか解決しようとする科学技術も信用できない。
一体どないせぇっちゅーねん。

◆関連記事◆
今週の本棚・本と人:『ブラックボックス』 著者・篠田節子さん/毎日jp(毎日新聞)
『ブラックボックス』 (篠田節子 著) 今週の必読/週刊文春WEB
ブラックボックス 篠田節子著 食の「安心安全」をめぐる小説/日本経済新聞
第134回:篠田節子さんその5「食の裏柄を描く『ブラックボックス』について」 - 作家の読書道/WEB本の雑誌

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はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか/篠田節子

◆読んだ本◆
・書名:はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか
・著者:篠田節子
・定価:1,476円
・出版社:文芸春秋
・発行日:2011/7/10

◆おすすめ度◆
・ちょっとヘンテコなSF短編小説度:★★★★
・シュールでブラックな近未来度:★★★★
・お笑い/ホラー/ドタバタ度:★★★★

◆感想◆
高性能の猿型ロボットにつきまとわれる女性の恐怖とドタバタをコミカルに描いた表題作をはじめ、ちょっとヘンテコなSF短編小説集。
篠田節子、たまにヘンテコなSFっぽい小説を上梓するが(「転生」とか「斎藤家の核弾頭」とか)、本書もシュールでブラックなんだけどちょっと笑ってしまうようなヘンテコSF。
表題作の他には
レアメタルが体内に濃縮されたウナギの目が、赤く光って気持ち悪い「深海のEEL」。
マンションを建設しようとしたら人骨がわんさか出てきて困ったこまったな「豚と人骨」。
63年がかりでトンネルを掘削する男の悲喜こもごもな「エデン」。

どれも独特のテイストがあっていい感じ。
先の読めないスピディーな展開も巧み。
科学文明の批判とも読めるけど、そんな深刻に考えるより「うひゃひゃ」と笑って埋めもどしたい短編集だ。

はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか

篠田 節子 文藝春秋 2011-07
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「はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか」は「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」の、「深海のEEL」は「深海のYrr」のパロディというのはすぐ分るけど、「豚と人骨」と「エデン」の原題が何なのか、寡聞にしてわからず。
ササッと分るくらいにいっぱい本を読んでると、かっこいいよなぁ。
ただ自慢げに言える、ってだけだけど。

◆関連記事◆
転生/篠田節子/サイト内
理科の匂いのする作品集~『はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか』/WEB本の雑誌

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廃院のミカエル/篠田節子

◆読んだ本◆
・書名:廃院のミカエル
・著者:篠田節子
・定価:1,600円
・出版社:集英社
・発行日:2010/11/30

◆おすすめ度◆
・サスペンスホラー小説度:★★★★★
・修道院で起きたこととは?度:★★★★
・超常的で現実的で宗教的展開度:★★★★

◆感想◆
ギリシャで見つけた蜂蜜をビジネスにつなげようとする美貴。通訳の綾子と壁画修復師士の吉園を連れ立って、ギリシャの地方都市を目指すが・・・

ゾワゾワとした恐怖感をベースに、ホラーでサスペンスでオカルトなタッチの不思議なテイストの小説。
篠田節子の「絹の変容」とか「神鳥イビス」等の初期の小説を思い出させる作風。
最後まで緊張感がゆるまず、最近では出色の出来映えだ。

怪奇な出来事を宗教的な事象として描写しながら、その一方で科学的な見方もするというのは、たまさか同時期に読んだ「ゴーストハント1 旧校舎怪談」と似ているけど、小説の持つ雰囲気は全然違う。
「廃院のミカエル」はホラータッチで、背筋が寒くなるようなシーンが連続。
宗教画に込められた謎や、綾子の奇怪な行動、廃修道院での不思議な出来事など、畳み掛けるように物語を展開させて読者を放さない。

現実的な決着をつけているけど、布団の中でゾクゾクしながら読みたいホラー小説だ。

廃院のミカエル廃院のミカエル
篠田 節子

集英社 2010-11-26
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例えば野鳥が大量に死んでいるのを発見して、「悪魔の仕業だ」と考える人もいれば「未知のウイルスが蔓延しているのではないか?」と危ぶむ人もいる。
どっちが正しいとか間違ってるということはなく、考え方や信条によって捉え方が替わるということなんだろう。

日和見な仏教徒で理系な自分は、どっちかと言えば「未知のウイルス?」と考えるほうだけど、そのわりに悪魔や悪霊の出てくるホラー小説が恐かったりする。

何でだろう?

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スターバト・マーテル/篠田節子

◆読んだ本◆
・書名:スターバト・マーテル
・著者:篠田節子
・定価:1,600円
・出版社:光文社
・発行日:2010/2/25

◆おすすめ度◆
・辛口恋愛小説度:★★
・タナトスな愛度:★★
・美人で家事も仕事もできる新妻、当面はいいなりな夫度:★★

◆感想◆
乳癌の手術を受けた彩子は、生に対してどこか醒めた感覚を抱いていた。そんな折り、30年ぶりに偶然会った中学時代の同級生光洋に、自分と似た醒めた雰囲気を感じて・・・

表題作「スターバト・マーテル」と「エメラルド アイランド」の二編をおさめた恋愛小説。
恋愛小説といても篠田節子だから、ちょっと味付けが辛口でオトナ風。

「スターバト・マーテル」は、乳癌の手術を経験した主人公の、生きることに執着しない、醒めた感覚がテーマ。
久しぶりに会った同級生の光洋にも、おなじ匂いをかいだ主人公が、しだいに彼に惹かれていき・・・といった展開。
途中国際謀略小説風なシーンもあたりして、ドンドコ変な方向に進むのかと思ったが、初心貫徹な結末に。
ちょっと物足りないような。

もう一つの「エメラルド アイランド」は、今風な若者カップルの新婚旅行が舞台。
南の美しい島で過ごす予定の二人とその母親や友人に、とんでもない事件が。
きれいでそこそこ家事もできて仕事もこなせる若奥さんと、わがまま?な妻を許しちゃう夫。新妻の厳格なママや得体の知れないサラリーマンなどの脇役をコミカル&シリアス&スリリングに描写した小説。

雰囲気の違う二編だけど、お気楽な恋愛小説ではないのは確か。
著者の「純愛小説」「秋の花火」系の恋愛小説に共感できる方向けか。
自分は「仮想儀礼」みたいなヘンテコなのが読みたいけど。


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幻日/ウィキペディア

「スターバト・マーテル」にはちょっとエッチなシーンもあったりして。
でもログハウスの相部屋で、このシーンは無理があるじゃないか?
それとも相部屋だからこのシーンなのか?

スターバト・マーテル
スターバト・マーテル篠田 節子

おすすめ平均
starsシリアス劇とドタバタ劇と
stars秀逸ですが…‥優等生の恋愛?
stars大人向け作品。
starsまあまあ面白かったです!

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◆関連記事◆
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薄暮/篠田節子

◆読んだ本◆
・書名:薄暮
・著者:篠田節子
・定価:1,800円
・出版社:日本経済新聞出版社
・発行日:2009/7/1

◆おすすめ度◆
・亡くなった地方画家の隠された姿度:★★★★
・画家と女と傑作度:★★★★
・ミステリアスでホラーチックな展開度:★★★★

◆感想◆
新潟の地方都市で絵を描き続けた画家宮島哲朗。たまたま宮島哲朗の絵を見た著名なエッセイストが雑誌に寄稿したことから、画家宮島哲朗が注目されはじめて・・・

地方都市に住み、市井の人々や風景を描き続けた不遇の画家。
彼の絵をなんとか世に認めさせたいと願う町の人々。
編集者の橘が、彼の絵を見て画集を出版させようと計画するあたりから、なにやら怪しげな状況になっていき・・・という不遇な郷土作家をテーマにした重厚な物語。
そこにミステリアスな味付けや、商売としての絵という俗っぽさも織り込んで面白く読める展開に。

仮想儀礼」の雰囲気も引きずってるけど、それもうまくアレンジしてる。
篠田節子、なかなかの手練だ。
宮島哲朗の妻等も凄みのある女性に描かれていて、読みごたえあり。
読後の印象も爽やかだ。


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おもしろ画像


「恵まれた家庭環境では傑作は描けない。孤独と向き合って荒んでいく精神と対峙するとき、画家は傑作を産み出す」みたいなくだりがある。

そうゆう芸術的傑作とか、人の思いもよらない発明とかは、脳の神経回路が普通じゃない変な回路に繋がった時に生まれるような気がする。

超感覚的な感性?
鋭敏な思惟?

自分は寝る間際にそんな感覚を覚えることがある。
「これはスゴイ! ひらめいた!!」みたいな。
でもすぐ寝ちゃうから、何をひらめいたか覚えてないんだなこれが。


薄暮
薄暮篠田 節子


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◆他サイトの感想など◆
本よみうり堂
みくうのもこもこ日記

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仮想儀礼/篠田節子

◆読んだ本◆
・書 名:仮想儀礼
・著 者:篠田節子
・出版社:新潮社
・定 価:上1,800円 下1,800円
・発行日:2008/12/20

◆評価◆
・新興宗教の栄枯盛衰度:★★★★
・壊れた人々度:★★★★
・新興宗教の造り方度:★★★★
・インチキ教祖の良心と信者の狂信度:★★★★★

◆感想◆
都庁に勤めていた鈴木正彦は、心血を注いで書き上げたゲームブックの出版化をたよりに退職してしまう。しかしゲームブックが出版されることはなく、食うのにも困るような生活に。鈴木はかつての仕事仲間と新興宗教を興し、金儲けを企むが・・・

これはなかなかヘヴィーな内容だ。
鈴木と矢口は、パソコンを使って切り貼りだらけの「聖泉真法会」という宗教団体を立ち上げる。
金儲けのためとしていながらも、真っ当すぎるくらいの鈴木と矢口。
メールでの人生相談にのったり、集会所を確保したりして説法を行い、とんでもない過去やとてつもなく壊れた人々に対しても真っ当な対応をするうち「聖泉真法会」の名が広まり、また偶然の行幸も重なって、どんどこ信者が増えてきて。

中盤までは、「信仰宗教の造り方」みたいな展開だ。
ちょっと危ないくらいに壊れた信者、本当の金儲け主義の新興宗教教祖との対立、企業経営者の入信と社内事情、信者間の軋轢。
実際にありそうな出来事が次々起きて、読者を飽きさせないし、壊れた人たちの思考や、インチキでありながら悪人になりきれない教祖の宗教観も興味深い。
どっかの新興宗教の実録のような雰囲気もあるし、現在する宗教団体の内部組織が伺えるようでもある。

このままインチキ宗教「聖泉真法会」は発展し続けるのか、それとも破綻するのか。
ま、それは読んでのお楽しみ。

しかし著者は、ちょっと変わった宗教がらみの物語がお好きのよう。
そういう自分も、けっこう好きなんだけど。



バベルの塔    サグラダ・ファミリア    東京都庁
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主人公の鈴木正彦が勤めていた都庁。
見方によっては宗教的なシンボルにもとれる。


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◆他サイトの感想◆
季節の切り抜き帳
Bright Vision



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