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2008/08/10

誘拐/五十嵐貴久

◆読んだ本◆
・書 名:誘拐
・著 者:五十嵐貴久
・出版社:双葉社
・定 価:1,500円
・発行日:2008/7/25

◆評価◆
・スリルとサスペンスの誘拐劇度:★★★★★
・最近の誘拐操作情報度:★★★★
・社会派(格差社会への低減)度:★★★★
・どんでん返しの伏線 ちゃんと貼ってるし度:★★★★★

◆感想◆
大角観光の総務部に勤める秋月孝介は、1ヶ月前にリストラした葛原が家族と無理心中したとの知らせを受ける。いたたまれなくなった秋月は会社を飛び出すが、どこに行くという宛があるわけではなかった・・・

これは面白いぞ!

会社を乗っ取られ、あまつさえリストラをする側にされた秋月。仲間の首を切りながら、自分の精神を削るような仕事。それに追い討ちをかけるような葛原の死。
さらに秋月の仕事に対する不満・不信を募らせた娘の自殺。

リストラする側もされる側も辛いという、やりきれない世の中だ。

そんなプロローグを経て、秋月の周到で綿密な誘拐計画が実行される。
これがスリルとサスペンスの展開。
最近の誘拐操作に関する情報(電話の逆探知はデジタル化のためアッという間に分かっちゃうとか)も織り込んで、従来の誘拐モノに引けを取らない完成度だ。

さらに「日韓友好条約締結」という歴史的イベントと誘拐事件が重なり、警察力が分散するといった背景や、誘拐される少女が●▲※■だったり!

中盤までは物語の展開が面白くって、グイグイ読ませる。
しかし秋月の、誘拐を企てる動機がいまいち弱いんじゃないのか? これじゃミステリー小説の仕掛けとしては面白いが、読み物としてはいまいちかな、とか思っていたら大間違い!!
あっと驚く納得のどんでん返しだ!

誘拐モノミステリーとして面白く読めるし、社会派ミステリーとしてもイケてる。
従来の著者の小説は、面白いもののオリジナリティに欠ける部分があったが、本書はそれを吹き飛ばす会心の出来。
「リカ」を読んだ時と同じくらい興奮したぞ。

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