だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 最近は新旧歴史時代小説やエンターテイメント、ライトノベルにも手を伸ばして節操のない状態に。趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

オリンピックの身代金/奥田英朗

◆読んだ本◆
・書 名:オリンピックの身代金
・著 者:奥田英朗
・出版社:角川書店
・定 価:1,800円
・発行日:2008/11/30

◆評価◆
・「天国と地獄」のような社会派ミステリー度:★★★★★
・「ジャッカルの日」のようなスリルとサスペンス度:★★★★★
・「蟹工船」のようなプロレタリア文学度:★★★★

◆感想◆
昭和39年、オリンピックを目前に控えた慌ただしい東京で爆破事件が起きる。犯人は「草加次郎」を名乗り、東京オリンピックを妨害するという犯行声明文が警察に送りつけられた・・・

これは面白い!!
昭和39年という、日本が戦後を脱却し高度成長期にあった東京を舞台背景にして、オリンピクという大イベントを妨害しようとする犯人と、その犯人を追う刑事たちのスリルとサスペンスのミステリー小説だ。

前半は犯人の東大生島崎が、工事現場で亡くなった兄の生活を弔うように追体験するシーンがメイン。 オリンピック開催にむけて突貫で行われる土木工事。そこで過酷な労働に従事させられる出稼ぎ労働者。
東大でマルクス主義を学んでいる島崎は、そんな資本家に搾取されてる労働者の中に身を置き、しだいに資本主義の象徴としてのオリンピックを妨害しようと考えるようになる。

蟹工船のようなプロレタリア文学か?」と思わせる前半だが、それがまたけっこう興味深い。
ちょい前の中国のオリンピックを想像させたり、現在の不景気な日本を連想させたりするし、そこに爆破事件をカットバックさせることで、島崎の思考がリアリティのあるものになっている。

後半は黒澤明「天国と地獄」のような構図と展開、フォーサイス「ジャッカルの日」のようなスリルとサスペンス。
犯人の東大生島崎と、刑事の落合の視点で交互に描かれる展開は、手に汗握るぞ!

あんまり書いちゃうと興をそぐだろうから、書かないけど・・・

 犯人島崎のストイックな性格と思想。
 当時の日本社会を見事に切り取った背景描写。
 犯人と警察の駆け引き。
 大捜査網の中の刑事と公安の確執。
 そしてオリンピック開催という時限付。

もう嫌でも盛り上がる仕組みだ。

なにはともあれ、今年一番面白い小説だ!
「このミス」1位の「ゴールデンスランバー」より俄然面白いっ!



ホンダ・S600
ホンダ・S600


本書の中には「ホンダS600」「シャボン玉ホリデー」「反代々木派」などの当時の文化、サブカルチャー用語が沢山出てくる。
これがまた、物語に奥行きを持たせているし、その頃に青春をすごした世代の方には大きな魅力となるだろう。

(ひょっとするとこの小説は、著者の自己批判なのか? 島崎のストイッックさと過酷な労働の従事。デモは都会の若者の盆踊り、とあっさり切り捨てたりするし)

そんな当時の言葉の中で「C調」というフレーズだけが意味不明だった。
調べると「調子いい」という事なのね。

当時も今も、暗号めいたフレーズをいっぱい作っていたという事だ。
フムフム。





◆他サイトの感想◆
最後の本たちの国で
MOONGLOW
棒日記V -I will carry on-


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  • 2009/05/14(木) 17:44:13 |
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