だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 最近は新旧歴史時代小説やエンターテイメント、ライトノベルにも手を伸ばして節操のない状態に。趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

決壊/平野啓一郎

◆読んだ本◆
・書名:決壊
・著者:平野啓一郎
・定価:上1,800円 下1,800円
・出版社:新潮社
・発行日:2008/6/25

◆おすすめ度◆
・殺人事件に潜む心の闇度:★★★★
・シリアスな展開と思索的文章度:★★★
・人間としての殺人/システムとしての殺人度:★★★★
・加害者、被害者、家族、世間の軋轢度:★★★

◆感想◆
沢野良介は、妻の佳枝と幼い息子の良太を伴って、実家に帰省する。迎えにきた母親に、違和感を感じるが・・・

おおまかなあらすじは、猟奇的殺人事件とそれに巻き込まれた一家の事件前から事件後まで、といったところだが、書前半は沢野良介の一家と、兄である崇や両親の描写を主体として展開。
東大卒のエリート公務員である崇。
その兄に幼い頃からコンプレックスを感じていた良介。
どこか不自然な両親たち。

なんだか純文学の作家は、比喩的な表現や持って回った思索的文章がメンドクサイなあ、とか思いながら読み進む。
事件もさっぽり起きないし。

物語が大きく動くのは、上巻の最後の方。
それからは、まるでノンフィクションを読んでいるようなスリリングな展開。
これを面白いと表現するのはいささか語弊があるが、いわゆる人間のダークな面を強烈に描写して、読者には強いインパクトを与えるような場面が。
さらに事件に巻き込まれた人々やマスコミ、ネットといったメディアに事件が波及していく様をシリアスに描写する。

だが著者がもっとも力を入れているテーマは「殺人」という現象そのものか。

人間社会から「殺人」が無くならない理由、人はなぜ人を殺すのかということを、猟奇的な犯人にセンセーショナルに代弁させているように見える。

だがそう簡単に答えの出るものではないし、物語としては「人間性」が破壊されてしまうような流れでごまかされているような・・・
生物としてのDNAレベルの現象、社会システムが生み出す現象としては把握できるが、人としてどう把握すれば良いのか。

突き詰めると主人公のようになっちゃうのだろうなあ。


ネコ
ねこだから



人間は脳みそが大きくなり過ぎたんじゃないかと思う。
暴走するように思考する脳。
絶えず何かを考えていないとオーバーヒートするような脳。
大きな脳のおかげで文明は発達したし生活は豊かになったし、哲学や科学や文学だって進んできた。
しかし暴走する方向を間違えると、とんでもないことをしでかしたり。
脳がオーバーヒートすると、機能が壊れたり。
(本書に登場する猟奇的殺人者も、脳が暴走して機能不全に陥っているよう)

何でか知らないけど、思考を止めることができない。
人間は、スピードを遅くすれば運転も楽なのに、アクセルを目一杯踏んで車を運転しているような感じで思考している。

日だまりで寝転ぶネコのように生きてみたいぞ。


決壊 上巻
決壊 上巻平野 啓一郎

おすすめ平均
starsコインロッカー・ベイビーズを彷彿とさせる純文学
starsドストエフスキー的興奮で、寝食忘れて読む
stars分厚さに見合うだけのものを感じることができなかった
stars成熟を待つ
starsワイドショーは、文学の素材たりえるか──。

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決壊 下巻
決壊 下巻平野 啓一郎

おすすめ平均
stars“決壊”する日本。
stars難解。
stars絶望的であるが愛を肯定している
starsこの社会に必要な才能ですが…
starsセンセーショナルですが、

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◆他サイトの感想◆
今週の本棚
Kadock's Blog
今更なんですがの本の話


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