だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 最近は新旧歴史時代小説やエンターテイメント、ライトノベルにも手を伸ばして節操のない状態に。趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

巨船ベラス・レトラス/筒井康隆

◆読んだ本◆
・書 名:巨船ベラス・レトラス
・著 者:筒井康隆
・出版社:文芸春秋
・定 価:1,143円
・発行日:2007/3/15

◆評価◆
・メタメタフィクション度:★★★★
・文学への懸念と憂い度:★★★
・次世代作家&読者への警鐘と憧憬度:★★★★

◆感想◆
革新的、前衛的な小説や詩を掲載し、文壇に一大旋風を巻き起こそうと創刊された雑誌「ベラス・レトラス」。これに寄稿している人気作家や詩人達の、日常と文学への思索を通して、著者および文学界の行方を模索した小説。

虚構と現実、どれが事実でどこが虚構なのか。さらに混じりあうメタフィクションや作中作品。そんなゆらぐ物語世界を巨大船のラウンジに創りあげた、いってみれば何でもアリの著者らしい小説。

現実の人気作家を思い浮かばす登場人物。どの登場人物がどの作家をモデルにしたのか考えるのも楽しいし、作中作の「山ひらき」はなにやらエロチックでもっと読んでみたくなるし、文学論や差別に関する言及に「うんうん」と頷いたり「???」となったり、同人作家や評論家に対する罵倒に笑い転げたりと、新鮮味はないものの最近の著者の考えのエッセンスを集めて分かりやすく小説にしたよう。

作中の登場人物に語らせているように、本は誰かに読まれないことにはどうしょうもないという、著者の諦観が伺えるような、平易な作風。

美しく前衛的であり続けようとする若い女性作家を、女神のようなシンボルに変えてしまうあたり、孫の元気で気概ある姿が眩しくみえるおじいさんのようで、好々爺してる。
かと思うと、著者本人が物語に登場し、自著の著作権侵害に関する経緯と憤りを滔々と語るあたり、掟やぶりもOKのスーパーぶりに拍手喝采だ。

しかし北宋社はとんでもない人を敵にまわしたものよ。

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